製造/中部・北陸 「中小工務店向け制震システムの全国展開事業」

もしもの地震に、すぐできる「制震」補強

 電気設備工事や制御板開発を手がける東海EC。同社が建物の制振補強事業に参入したのは02年。産学の連携を強化する狙いで、豊田工業高等専門学校の既存木造住宅向け制振補強工法を実用化したのが始まり。そして08年。新築住宅へも幅を広げるため、笠井和彦東京工業大学教授らと共同で制振補強工法「K・ブレースシブ」を開発、受注を始めた。

 同工法は2本の柱の間を、鉄骨の筋交いで補強するもの。特徴的なのは筋交いを柱に固定する鉄骨の支持部品だ。中央がくぼんだ「ヒョウタン型」にすることで支持部品がたわみ、地震の揺れを吸収する。

 09年1月には国土交通省の大臣認定を取得し、地震などへの耐力が強い壁として構造計算に取り入れることが可能になった。装置自体がシンプルな構造で、施工も容易なため3.3平方メートルあたり2万円で施工できるという特徴がある。

 同工法の拡販を目指し、参入時から制震装置の製造を手がけるオオクラエンジニアリング(愛知県豊明市)と、構造計算、制震装置の販売を手がけるフォワード(大阪府枚方市)の3社で、連携して取り組むことにした。

 現在、この工法を採用して施工する工務店を募集中。東海ECは工務店に向けて研修会や構造見学会、制震体験会などを実施、販路開拓や施工技術の支援を行っていく考え。年間3,000棟の受注を目指している。

東海イーシー(株)


会社名
役割分担
■コア企業
東海イーシー(株)
制震装置の企画・販売、実験データの提供、販路開拓支援、中小工務店向け講習会(基礎知識研修会、構造見学会等)の実施
オオクラエンジニアリング(株)制震装置の製造・技術、改良に関する知見
(株)フォワード構造等の計算サービス、制震装置の販売



東海イーシー(株) 石井 正己 代表取締役社長<br>「制震装置はコンパクトかつ低価格であり、住宅への装着が容易なため施工時間が短く、1棟(35坪)約30万円で施工可能です。また平成19年11月より最新の建築基準法に適合した新しい構造計算ソフトウェアを導入、構造計算および住宅性能表示の取得の支援ができる体制を整えています」

東海イーシー(株) 石井 正己 代表取締役社長
「制震装置はコンパクトかつ低価格であり、住宅への装着が容易なため施工時間が短く、1棟(35坪)約30万円で施工可能です。また平成19年11月より最新の建築基準法に適合した新しい構造計算ソフトウェアを導入、構造計算および住宅性能表示の取得の支援ができる体制を整えています」

【強く、手軽な工法を地方の中小工務店へ】

 近年、過去の震災の教訓から、地震への取り組みを強化する企業が増え、多くの工法が開発された。東海ECが手がける制震補強工法は、建物が揺れるときの振動エネルギーを熱エネルギーに変換、吸収することで建物への損傷を防ぐ。人命を守ることはもちろん、家の損傷を防いで、資産価値を下げないことも目的としている。

 同社が制振補強事業に参入したきっかけは「新築住宅は本当に地震に強いのか」という疑問からだ。現在、施工されている耐震基準の法令は、震度6強で建物が倒壊しないことが最低基準。しかし過去の震災では震度6強以上の揺れも観測されている。

 同工法は「法令の基準以上の耐震強度を目指した」(石井正己社長)といい、震度7でも倒壊しない耐震性を実証。同工法を使用した壁は、通常の壁の3.9倍の強度があることも国土交通省から認定された。独自開発した筋交いの調節機能で、柱間は90cm〜100cm、高さ246cm〜305cmと幅広く対応でき、半日から1日で施工できる手軽さも魅力だ。

 新築住宅業界では大手ハウスメーカーの勢力拡大により、中小工務店を取り巻く環境は厳しさを増している。同工法の開発は、大学での研究を市場に落とし込み、大手ハウスメーカーに対抗できる制振技術とノウハウを中小工務店へ提供することも狙いだ。「地方の中小工務店が活性化することは、派生的にその地域経済の貢献にもつながる」と石井社長は展望を語る。

 3社が手を組むことにより、きめの細かいサービスを提供できることも魅力。事前にソフトウェアで邸ごとの耐震性を分析、装置装着前後の耐震診断書と配置計画書を工務店と施主に渡すサービスもその一つ。これは建物の構造計算に強いフォワードが手がけている。


【新連携活用で事業に弾み】

 新連携の活用は、同じ目的に向かって、各社の強みを結びつけられることが一番の利点。認定を受けることは制振補強事業後発組の東海ECにとって、顧客の信頼感を得ることにもつながった。現在、受注も好調に推移しており「新連携の活用が、制振補強事業の成長に弾みをつけた」と石井社長は笑顔を見せる。

 一見、同社がこれまで手がけてきた電気設備工事事業と制震補強事業は、接点がないようにも思える。しかし「制震補強事業は将来への布石の一つ。今後はこれらの点と点を結びつけ、面として事業を展開していきたい」(石井社長)と意気込む。

 「新連携の効果的な活用には認定前からの密接なコミュニケーションを取ることが不可欠」(同)というように、同事業の取り組みは3社間にとっても同社にとっても、ステップアップを得られるまたとない機会になったといえる。