製造/関東 「繊維市場ニーズに適応する多品種少量型整経機の事業化」

製造プロセスを変化させずに飛躍的な生産性の向上

整経機を手がけるスズキワーパー(群馬県桐生市)、ネクタイ製造販売のアルファテックス(同)、糸の自動切り替え装置を開発している松崎マトリクステクノ(東京都板橋区)が連携、共同で開発しているのは、多品種少量生産向けに自動で糸をつなぎ換えする整経機。

整経とは、糸から織物を作る際の準備工程の一つで、織物に必要な糸を長さを合わせて順序良く取り揃える作業のこと。この揃えた糸群を織り機にかけ、織る作業を行う。

現在、アパレル業界では店舗側が在庫リスクを減らすため、店舗の販売時点情報管理(POS)と工場の生産量を連動させるなどして、売れ行きに応じて少量を追加発注する体制をとっている。

一方、こうした販売側の取り組みによって生産側にとっては多品種少量生産品を短納期で仕上げることが要求される。そこで糸のつなぎ換え作業を自動化できれば、作業時間の大幅な短縮が実現する。多品種少量生産であればなおさらだ。

しかしつなぎ換えを自動化するためには、ミシンに下糸を通すような精度の高い動作が必要。また太さや堅さが違うさまざまな種類の糸のどれに対しても、あばれることなく安定して制御する必要がある。そのため実用化のハードルが高い技術と考えられていた。

(有)スズキワーパー


会社名
役割分担
■コア企業
(有)スズキワーパー
事業の統括・運営、装置の設計・製造・販売、性能総合評価
(株)アルファテックス製織性、試作品の評価、アパレル生産のノウハウ提供
(株)松崎マトリクステクノ 小型高速つなぎ換え装置の開発・供給織物用糸への対応



(有)スズキワーパー 田中義弘 代表取締役社長<br>「糸の交換まで自動化できると、1つの衣料品の製造途中でも簡単に柄などを変えることができ、複雑なデザインへの対応のみならず短納期も可能になります」

(有)スズキワーパー 田中義弘 代表取締役社長
「糸の交換まで自動化できると、1つの衣料品の製造途中でも簡単に柄などを変えることができ、複雑なデザインへの対応のみならず短納期も可能になります」

【新連携制度を活用して事業化へ】

連携事業のきっかけは、06年度に始めた「地域新生コンソーシアム研究開発事業」。スズキワーパーなど3社は、桐生市にある群馬大学大学院工学研究科と共同で自動つなぎ換え装置開発に着手した。動作中の糸のあばれ具合を解析し、それを基に装置の構造を設計するなどして、つなぎ換え動作の高速化を進めた。

今回の新連携事業では、製品化に向けて最後の仕上げを行っている。現在、つなぎ換え装置の最終性能評価を行っているほか、整経機の外観や操作部分などの詳細を詰めている。スズキワーパーの田中義弘社長は「4月には出荷を始める予定だ」と意気込む。

スズキワーパーは1947年の設立以来、衣料の試作品向けの整経機を手がけてきた。国内シェア100%、海外シェアでも約50%を誇る同社は、さまざまな類の糸を安定的に制御するノウハウを持っている。連携事業を統括する立場にある同社は、自動つなぎ換え装置を組み込む整経機の設計を手がけ、事業後は同整経機の製造・販売を担当する。

ネクタイを製造販売しているアルファテックスは、整経機の試作品を使って性能評価を行う。ネクタイは多品種少量生産品の典型。他の衣料品よりも一つの製品あたりに使用する糸の量が少ないが、ネクタイの素地や絵柄は多種多様だ。同社はこのようなユーザー側の視点を生かして製品性能を評価する。

松崎マトリクステクノは靴下や手袋向け用の自動糸つなぎ換え装置のメーカー。国内外に販売実績がある。靴下や手袋と比較して、衣服では糸の種類に違いがあるものの、自動つなぎ換え装置で蓄積したノウハウを活用する。


【参加企業すべてがメリットを享受する】

「連携事業の成否のカギを握るのは、「参加者全員にとってメリットがあること」だ」(田中社長)と強調する。スズキワーパーは自動糸つなぎ換え装置を搭載した整経機を製造販売するため、連携のメリットがあるのは明白だ。

これに対してネクタイ製造販売のアルファテックスは、開発した装置を導入し、自社製品の生産性の向上に生かすことができる。そして松崎マトリクステクノにとっては、自動つなぎ換え装置は従来の手袋や靴下と比較するとはるかに多くの種類の糸を扱うことになる。ここで得たノウハウは、今後、他の衣料分野への進出する際の足掛かりになる。

中国など人件費の安い新興国での生産が主流の繊維業界。自動つなぎ換え装置のような技術がもたらす生産の合理化は、日本に残る繊維産業の存続にとって重要な要素だ。また同装置は短納期につながるため、多品種少量製品に関しては国内調達のメリットがより増すと期待される。