建設/九州 「新しい地下空間構築のための、ボックス推進工法の事業化」

四角い掘進機で地下空間をつくる

 「地上よりも地下の方が混雑しとる」。大型掘進機を使った地下工事を主力にするアルファシビルエンジニアリングの酒井栄治社長は苦笑いする。

 地下には下水道管があれば、地下鉄も走るなど復層化が進んでいる。同社は断面にカッターがついた円形や四角形の掘進機を操り、地下にトンネルを掘る専門会社だ。工法の開発や施工だけでなくコンサルティング業務も手がけている。「できるだけ分業しないで、工事の責任を明確にしていく」のが酒井社長の方針だ。

 近年は「ボックスカルバート推進工法」に力を入れている。03年4月に特許を取得し、雨水路の施工などをしてきた。従来、トンネル工事や都市インフラ整備には円形の掘進機が利用されてきた。一方、同工法は独自に開発した四角形の掘進機を使って地下工事をする。

 「コストは3割減り、工期は半分に短縮できる」。さらに「ボックス工法はバリアフリー化に最適な工法だ」と酒井社長は用途開発に視線を向ける。

(株)アルファシビルエンジニアリング


会社名
役割分担
■コア企業
(株)アルファシビルエンジニアリング
ボックス掘進機の知的財産権者、掘進機の開発・設計、推進工法の施工技術
九州中川ヒューム管工業(株)ボックスカルバートの製作、コンクリート函体の製作技術、継手部の止水性・耐震性技術
(有)藤田油機サービス掘進機の製作、整備、保管、油圧機器装置の設計・製造技術・改造・整備ノウハウ



(株)アルファシビルエンジニアリング 酒井栄治代表取締役社長<br>「ボックスカルバート推進工法は限られた地下空間を有効利用するための新非開削技術です。カッター部を自転・公転方式とし、3軸の自転偏芯ビットとそれらを受け持つ公転ギヤにより矩形断面全体を一度に掘削する機構を可能にしました」

(株)アルファシビルエンジニアリング 酒井栄治代表取締役社長
「ボックスカルバート推進工法は限られた地下空間を有効利用するための新非開削技術です。カッター部を自転・公転方式とし、3軸の自転偏芯ビットとそれらを受け持つ公転ギヤにより矩形断面全体を一度に掘削する機構を可能にしました」

【ボックス工法で新たな需要を"掘り起こす"】

 「何段もの階段を上らなくてはいけない歩道橋は高齢化社会を想定していなかった」と苦言を呈する酒井社長。事実、「横断歩道のない場所を横切って高齢者の方が事故にあうことは多い」という。

 ボックス工法は掘進機で前方の土砂を削り、工場で製造したコンクリート製の角体を後方から空間にはめ込んでいく。自転と公転を組み合わせた3組のカッターによって施工時間を短縮し、掘った空間は四角形のため地下道としての整備が容易だ。

 「スロープを付けて地下に入っていけるようにすればバリアフリーの社会が構築できる」と酒井社長は構想を語る。


【顧客に対する信頼が得られた】

 新連携の認定を受けた酒井社長は「国のお墨付きを頂いたことは大きな効果がある」と期待する。ボックス工法はスロープ付きの地下歩道はもちろん、開かずの踏切対策や雨水対策など多くの用途が考えられる。技術を国が認めてくれたことは顧客に対する信頼につながる。

 さらに支援メニューには中小企業金融公庫からの低利融資も入っている。研究開発費にかかる設備投資費用をどうやって工面するかは経営者の悩みの種だ。酒井社長は「事業の目的と計画の具体性が認められれば資金調達が可能だ。資金繰りが厳しい中小企業にとってはありがたい」と話す。
確かな技術は徐々に広がりを見せる。08年4月にはボックス工法が千葉県柏市で戸田建設の浸水対策工事に採用された。国道直下約2〜3mを横断する工事だった。低土被りの施工では地盤沈下が起きやすい。だが工事後、国道の変位はわずか2mmだった。

 また台湾でもアルファシビルエンジニアリングの技術が生きている。台湾当局の認可を受けてインフラ整備にかかわっている。台北市下水道局からの受注や台湾電力から地下電線の管路整備を受託している。

 台湾は10年ほど前から知人のつながりで当局に技術アドバイスをしてきた。だが、実際に下水道菅整備の仕事が始まったのは3年ほど前から。「国をあげて下水道整備や高圧電線の地中化を進めようとの動きが自然発生的に起きなくては自社だけでは動きようがない」(酒井社長)。そのため新興国などへの海外展開は現段階では厳しいという。

 同社の08年3月期売上高は約21億円。今期は台湾の受注が増えており、前年度比5%の売り上げ増を見込む。一方、国内では「これから下水道管の更新需要が見込める」(同)という。

 それでも公共工事の減少など土木工事業を取り巻く環境は厳しく、「戦々恐々としている」と酒井社長は漏らす。それだけにボックス工法で地下歩道構築など新たな需要を"掘り起こす"構えだ。