製造/関東 「積層樹脂フィルムのマテリアルリサイクルの事業化」

不可能といわれた食品包装リサイクル

 ファー・イースト・ネットワーク(東京都新宿区)は、プラスチックリサイクルの専門商社。リサイクル可能なプラスチック製品やフィルムを買い取り、国内外の専門再生業者に販売している。

 村井健児社長はもともと銀行マンだったが、環境問題を研究する大学教授の父と、地域の空き缶リサイクルに取り組む母の影響で「環境に直接貢献する仕事に就きたい」という志を持っていた。一念発起して銀行を退社、環境関連雑誌の編集者を経て大手廃プラスチック商社で修行し、03年に独立した。

 同社では多種多様なプラスチックを扱うが、どうしても買い取りできないプラスチックが存在した。それは食品包装などに使う積層樹脂フィルム(ラミネートフィルム)だ。

 ラミネートフィルムは強度増強のため、性質の異なる樹脂を何枚も貼り合わせ作られている。リサイクル時に溶かしても樹脂同士が均一に混ざり合わず、再生ペレット化は技術的に不可能といわれていた。そのため国内で月間数万トンが焼却・埋め立て処理されていた。

 この問題に頭を悩ませていた時、村井社長は大阪ガスのプラスチック再生用添加剤「マリコン」に出会う。このプラスチックガス管廃材のリサイクルのために開発された添加剤は、複数の樹脂に親和性を持ち、それらを化学結合させる相溶化作用という機能を備えていた。

 「これを積層樹脂フィルムのリサイクルに使えないか」(村井社長)。可能性を感じ、05年に事業化に乗り出した。

(株)ファー・イースト・ネットワーク


会社名
役割分担
■コア企業
(株)ファー・イースト・ネットワーク
リサイクル・システム構築に係る知見、原料調達ルート、再生ペレットの製造・販売網
(有)ホクト専用製造装置の開発・設計技術、リサイクル加工技術、生産システム構築技術



(株)ファー・イースト・ネットワーク 村井健児 代表取締役<br>「相溶化技術と、2005年6月に発売した高機能洗浄機・分別機を組み合わせることによって可能になる「有機性残渣付きラミネートフィルム・リサイクル」は食品工場のゼロ・エミッション達成を目指していくための有望な方法になると思います」

(株)ファー・イースト・ネットワーク 村井健児 代表取締役
「相溶化技術と、2005年6月に発売した高機能洗浄機・分別機を組み合わせることによって可能になる「有機性残渣付きラミネートフィルム・リサイクル」は食品工場のゼロ・エミッション達成を目指していくための有望な方法になると思います」

【大阪ガスの添加剤でリサイクルに成功】

 添加剤を積層樹脂フィルムに加え加熱・溶解して、樹脂同士を分子レベルで均一混合させ、物性の高い再生ペレットを作り出す。技術的に可能なことはわかっていたが、事業化に当たって課題は山積みだった。

 まず添加剤が非常に高価で添加量も多く必要なことだ。これでは価格の安い再生プラスチック原料の製造には利用できない。そこで大阪ガスと共同で添加剤のコストダウンに挑戦。薬品の配合や混練方法を工夫することで、従来1kg60円の価格を20円まで引き下げ、かつ添加量も少なくてすむ添加剤の開発に成功した。

 また、積層樹脂フィルムに特化した専用リサイクル機の開発も必要だった。ファー・イーストは再生ペレット製造のノウハウを持たないため、プラスチックスクラップの売買で付き合いのあったリサイクル装置メーカーのホクト(茨城県坂東市)と連携し装置を開発した。 

 リサイクル事業を始めるには販路の確保も重要だ。村井社長は今までの人脈を生かし、関東中心に約20の印刷工場・製袋工場からフィルムを買い取る仕組みを作った。また販売先となる樹脂成形メーカーにペレットを持ち込み、製品化のテストを重ね、顧客ごとにペレットの物性を調整して販売する体制を築いた。

 ペレットは梱包紙材や建材品など幅広い製品の素材として使用できる。しかし協力工場で積層樹脂フィルムのペレット化を開始したものの「最初のころはクレームの嵐だった」(村井社長)。化学メーカーやフィルムメーカーの助言のもと試行錯誤を繰り返し、07年に納得のいくペレットの完成にこぎつけた。


【夢は世界40カ国】

 08年2月、茨城県に念願の自社工場を開設。「食品パッケージに特化したリサイクル工場としては日本初、ひょっとしたら世界初かも」(同)と自負する。

 低価格で高品質なペレットは、原材料高騰の影響もあり順調に引き合いを伸ばしている。当初の月間70トン処理では間に合わず、昨年末には月間200トンを処理可能な装置を開発し、今年から稼働を始めた。

 装置の外販にも着手し、国内で1台の納入が決まったほか、韓国のリサイクル業者にも2台を販売した。装置1台の価格は5,000万円。3年で国内10台、海外20台の販売を目指している。

 海外からの注目も大きく、中国やタイ、イタリアで具体的な商談が進んでいる。「イタリアではチーズ、ドイツではソーセージ、中国ではザーサイ用の包装フィルムが年間数百トン単位で排出され、業者が処理に困っているという」(同)。

 潜在市場は大きく、世界規模のビジネスに育てていく考えだ。「40カ国にリサイクルの輪を広げ、月間3万トンを処理したい」(同)と夢は大きい。