製造/関東 「簡単施工を可能にし、変換機レスで駆動する無機EL新発光体技術の事業化」

一般消費者をターゲットにした無機EL

 日本イルミネーションシステム(横浜市中区)は、無機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)を利用した自社製品の開発を進めている。

 無機ELの90%以上は、携帯電話やモジュールのバックライトとして使われる。現在、そのサイズは5×5cm程度以下の小型のものが主流。大型のELは、インバーター(周波数変換機)の問題や価格競争に直面するなど、市場は伸び悩んでいるという。

 同社もポスターや看板向けに無機ELシートを供給してきた。だが、特定企業のニーズに応えるだけに留まり、市場の拡大は困難となっていた。一時的に発光ダイオード(LED)の価格が高騰しELバックライトが主流となった時期もあったが、近年ではLEDの価格も落ち着いている。

 このため液晶バックライトとしての市場からも撤退を余儀なくされ、無機EL需要は低迷しているのが現状だ。新連携で開発を目指すELは「常用輝度」を合言葉に産業向けからの脱却を図るのが狙い。生活に必要な光度基準に狙いを定め、一般消費者向けの市場拡大を目指す。

日本イルミネーションシステム(株)


会社名
役割分担
■コア企業
日本イルミネーションシステム(株)
ELシート企画・開発・設計
(株)ブライトニングEL材料(電極材、誘電材、発光体)・調達、次世代EL材料開発
(株)ジェイムELシート防水仕上げ、販売・施工技術



日本イルミネーションシステム(株) 原田 実 代表取締役<br>「技術の粋を連携体で熟成し、付帯物性もリサイクルできる設計にしています。発光体(コア部分も紫外線反応製品へ)部分もリサイクル可能にし、ゼロエミッションを目指します」

日本イルミネーションシステム(株) 原田 実 代表取締役
「技術の粋を連携体で熟成し、付帯物性もリサイクルできる設計にしています。発光体(コア部分も紫外線反応製品へ)部分もリサイクル可能にし、ゼロエミッションを目指します」

【無機EL製品の新たな市場開拓】

 新連携では開発した無機ELの新発光体技術「D-EL」の事業化を目指す。同製品は、インバーターの介在なしに常用電源だけでダイレクトに発光できるのが特徴。高周波を発生するインバーターが不要になったため、高周波公害による電気製品への障害が防げるという。

 厚さ0.2mmのシート形状を持ち、従来のELシートと比べ2倍の曲げ強度を持つ。電力消費量は、テープ状の製品で100mあたり年間約30円程度。寿命も10万時間を達成しており、蛍光灯など通常の発光体と比べて導入コストを低減できる。

 一般家庭をはじめ、映画館や美術館などでの誘導灯としての用途を想定し、使い方も「特別な配線作業は必要なく、両面テープで直線や湾曲した場所にも貼り付ける」(原田実社長)だけという。家庭用コンセントがあれば、どこでも使用できる。


【量産体制の構築】

 D-ELの量産体制が構築できたのも「連携パートナーの担う役割が大きい」(同)。EL材料の供給や開発を担当するブライトニング(神奈川県三浦市)は、香港に本社を置く電子部品や化学薬品の商社「ロンコ」の日本支社を兼ねる。

 現在、無機ELの材料確保は厳しさを増すばかり。主原料となるELホスパーと呼ばれる蛍光体は、米国の化学薬品商社であるオスラム・シルバニア社の独占状態。このため供給量は慢性的に不足している。また透明導電膜の材料として使われるITOには枯渇問題が直面する。ITOは希少金属(レアメタル)の「インジウム」にスズを添加した化合物で、代替品が模索されている。

 そこでITOに代わる電極として、優れた透明性・耐熱性を持った導電性ポリマーの一種であるポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)に着目、結果としてITOが不要になった。

 ブライトニングの存在はこうしたEL製造の課題を解決し、安定した材料供給を可能とした。同社が日本支社を兼ねるロンコのEL材料取扱量は、実にアジア圏内で80%にも上る。


【用途の拡大につなげる】

 新連携を利用したもう一つの理由として「用途の幅を拡大する」(同)狙いがある。屋外で設置するため、防水工事の施工や設計を主力とするジェイム(横浜市南区)の協力を得た。
 
 ジェイムは、アクリル系の高分子エマルジョンに複合材料を加えた水性塗膜防水剤を開発。防水性能に加え、無臭・無害・接着性・弾性など、従来の防水材にはない特性を持つ。新幹線の絶縁施工や船舶の鉄さび防止剤として採用された実績を持つ。

 連携体制をうまく保つ秘訣(ひけつ)として原田社長は「お互いが何でも言える仲でなければ、ビジネスも円滑に進まない」と話す。そのために家族間での交流など、プライベートを共にすることも多いという。

 また開発段階で問題が発生しても「相談できるパートナーの存在は非常に大きい。1社で(問題を)抱え込んでも解決には至らない」(同)と連携のメリットを分析する。

 最先端の技術を生かして生活必需品を作りたい−。社会に貢献できるユニバーサルデザインを目指して、日本イルミネーションの挑戦は続く。