製造/関東 「液体クロマトグラフ法による分離精製装置の開発・販売(セミプロセス液クロの開発・販売)」

試料注入量を増加させ、研究開発のスピードアップと効率化

 日本分析工業は設立以来38年にわたり、クロマトグラフ法による分析装置の性能向上に取り組んできた。近年は、溶媒内に含まれた試料を分子量の違いなどにより分離し、定性・定量分析をする液体クロマトグラフ法(HPLC)の応用により、試料を化学物質ごとに分離精製する装置の開発に力を注ぐ。

 HPLCは化学物質ごとの分離性能が高い一方で、蒸留装置に比べ試料を少量にとどめなければ性能が低下してしまうといった欠点があった。

 同社は試料を化学物質ごとに振り分ける分離管(カラム)の後ろにポンプを取り付け、試料を再びカラムに通し分離性能を高める「リサイクル分取法」を開発。これにより大量の試料注入が可能になり、これまでの通常の1,000倍にあたる1グラムまで注入できる分離精製装置をラインアップしてきた。

 試料注入量を増やすことで、1回の作業で分離・収集できる物質量は増加する。得られた物質が増えればその分、より多くの試験に利用できるようになるため、新素材分野の研究開発のスピードアップと効率化が実現する。

 作業性の向上により、有機エレクトロルミネッセンス(EL)の原材料内の不純物を取り除くといった新たな分野での用途も生まれた。新市場でHPLCを普及させるには注入量をさらに高め、多くの化学物質を一度に精製することが必要になる。そこで相馬光学と原電子工業を交え、新連携事業による支援を受けながら、新型の分離精製装置の開発に着手した。

日本分析工業(株)


会社名
役割分担
■コア企業
日本分析工業(株)
コア技術の提供、総合設計・販売
(株)相馬光学検出器ユニット製造技術の提供
原電子工業(株)システムコントローラ製造技術



日本分析工業(株) 大栗 直毅代表取締役<br>「リサイクル分析法では、溶解性の良い溶媒や単離分取後の溶媒除去が容易な溶媒を使用することで短時間で効率よく、試料に変化を与えずに分離精製することができます」

日本分析工業(株) 大栗 直毅代表取締役
「リサイクル分析法では、溶解性の良い溶媒や単離分取後の溶媒除去が容易な溶媒を使用することで短時間で効率よく、試料に変化を与えずに分離精製することができます」

【技術資源をミックスし装置開発に弾みをつける】

 「分析装置の範疇(はんちゅう)ではなくなった」(大栗直毅日本分析工業社長)。新装置が目標にした1回の試料注入量は10〜100グラム。日本分析工業が単独で開発した装置の1,000〜1万倍に及ぶ。

 しかし大流量化することで、試料内の化学物質の検出ユニットや、ポンプに接続するバルブの制御技術などの開発が不可欠となる。これまでの技術的バックグラウンドでは対応しきれない課題が浮かび上がったことが、新連携事業支援を活用する契機となった。

 大栗社長と相馬光学の浦信夫社長は、東京都昭島市に本社を置く大手分析機器メーカーの日本電子出身。原電子工業は以前から部品加工などで取引があり、07年1月に両社の協力を得ながら開発に乗り出した。

 日本分析工業のリサイクル分取法は、分離管の中を何度も試料が通過するため、溶媒を1回で廃棄することがなく低コスト化につながる。そのうえで分離能力を維持しながら大流量の試料中から化合物を特定する検出器の開発では、相馬光学の技術ノウハウを活用した。

 当初は紫外線を利用した検出器を使用する構想を立てていたが、検出できる化合物が限られることが問題となり、別の検出方法を模索。着目したのが示差屈折器と呼ばれる検出器だ。使い勝手が良い一方で、大流量では測定ノイズが大きくなる難点があったが、試行錯誤を繰り返し課題をクリアした。

 バルブの制御には原電子工業の技術支援を受けた。「1年という短期間で開発にめどがつけられたのが、新連携での一番のメリット」(同)と、自社以外の技術資源を組み合わせることで装置開発に弾みをつけた。


【先端分野に活路を見いだす】

 分取量の増加により、新たな市場を見いだすことにもなった。サッカーボール状の構造を持つ炭素原子の集合体「フラーレン」に、アミノ酸など有機物を化学結合させた誘導体を高精度で分離精製するといった最先端の研究分野でニーズがあることが分かった。

 フラーレン専用のカラムを装置に取り付け、誘導体にしたフラーレンを種別ごとに抽出。結合パターンによりどのような特性を生み出すのかを研究することで、新材料の開発が加速する。今後、需要が高まる分野で「大量注入により、生産を意識した場面で活用できるはず」(同)と期待を寄せる。

 将来的には無人運転による分離作業の簡便化も狙うが「トルエンなど引火性の溶媒が利用されることが多く、しっかりとした安全機能を付加する必要がある」(同)と、早急に設計などで対策を講じていく。

 拡販にあたっては「多くて1年に5台程度売れればいい装置」(同)と控えめながらも、自社の営業部隊を活用し、来年度中にも国内外で市場調査に乗り出す考えだ。