製造/関東 「コンパクトな過熱蒸気発生ユニットおよび食品加工装置の開発と事業化」

ヒーターに独自の技術で付加価値を

 新熱工業は82年創業の工業用ヒーターの専門メーカー。「ヒーターは昔からどこでも作っていて競争が激しい。独自の技術がないといけない」と大谷洋史社長は話す。3年ほど前から高機能の部品を開発し、液晶や半導体製造装置向けに納入してきた。その代表例が気体加熱器「クリーンホット」だ。

 「クリーンホット」は熱効率が良く、ヒーター内部では300℃〜500℃の無酸素状態で加熱できる一方で、ヒーターの表面温度は50℃までしか上がらない。また内部が特殊構造になっているため断熱材を使用していない。

 同社のもう一つの主力商品が「スーパーフラットヒーター」。これは揚げ物など調理機器を主な用途とする平形のヒーター。平形は加熱対象への接地面積が大きく、熱伝導率が丸形に比べて飛躍的に向上するため、1台で丸形3台分の効果があるという。

 地元企業との連携も進んでいる。ひたちなか市内で干し芋を販売する幸田商店と連携し、昔からの食べ方である干し芋を焼いた味を再現するために同社のヒーターが使用され、新商品「焼きほしいも」の発売につながった。

 この取り組みは経済産業省と農林水産省が発表した今年度の「農商工連携88選」にも選ばれた。大谷社長は「自社の装置を通じて地元企業に付加価値を与えたい。幸田商店さんも全国ブランドになってほしい」と地域への貢献の思いを話す。

新熱工業(株)


会社名
役割分担
■コア企業
新熱工業(株)
過熱蒸気発生器の設計・製造、過熱蒸気調理・殺菌方法の開発、過熱蒸気発生ユニットおよび過熱蒸気食品加工装置の販売
(株)シスコムエンジニアリング過熱蒸気発生ユニットおよび過熱蒸気食品加工装置の設計・製造
タニコー量産設備での販売支援
(独)農業・食品産業技術総合研究機構過熱蒸気の食品加工技術支援
福島県ハイテクプラザ過熱蒸気を使った殺菌の技術支援



新熱工業(株) 大谷洋史代表取締役社長<br>「今回の連携を通じて新しい市場が見えてきました。これからは中小企業が成長するためには連携なしではやっていけないと感じました」

新熱工業(株) 大谷洋史代表取締役社長
「今回の連携を通じて新しい市場が見えてきました。これからは中小企業が成長するためには連携なしではやっていけないと感じました」

【IH方式に代わる電気ヒーター方式の過熱蒸気発生器を開発】

 同社が過熱蒸気発生器を開発することになった背景には、「クリーンホット」など高効率ガス加熱器や食品工業向けの「スーパーフラットフライヤー」の存在がある。「クリーンホット」の熱効率の高さや「スーパーフラットフライヤー」で展開してきた食品工業のノウハウを過熱蒸気発生器に応用できると考えたのだ。

 過熱蒸気発生器にはガス方式、灯油方式、電気方式がある。ガス方式と灯油方式は制御が難しく、制御しやすい電気方式を採用することになった。だが電気方式の主流であるIHは高価であったため、電気ヒーターでの開発を目指した。

 電気ヒーターはIHと同じ性能を出すための体積が50分の1で済み、電気容量は約半分、価格は約5分の1、熱効率は2倍と多くの優位性があった。
 
 過熱蒸気発生器の特徴は調理の際に低酸素であり、油が酸化しないことだ。また100℃〜600℃まで自在に温度をコントロールでき、短時間で大量の熱を与えられるため調理時間も短く、乾燥も早い。数秒で殺菌できるという特徴もある。

 はじめは食品の加工や調理に使われると予想したが、低酸素で処理できるという利点から工業関係でも多く使われる可能性が出てきた。

 だが部品メーカーである同社は装置を開発することができず、殺菌機や調理器などを作る会社と連携する必要があった。そこで過熱蒸気殺菌を研究していたシスコムエンジニアリングに過熱蒸気発生ユニットや過熱蒸気食品加工装置の設計、製造を依頼した。

 また、量産販売のために調理機器メーカーのタニコーとも連携した。ほかにも農業・食品産業技術総合研究機構から過熱蒸気の食品加工、福島県ハイテクプラザから過熱蒸気を使った殺菌の技術支援を受けた。


【連携で新たなチャレンジを】
 
 「過熱蒸気で加熱しようという技術は初めてに近く、開発に時間がかかるかもしれない。しかし非常に有望な技術で今後伸びていくだろう」と大谷社長は話す。「工業用分野では想像もしていなかった分野で開発が進んでいる」と未開拓の分野への展開も視野に入れている。

 過熱蒸気発生器の開発に着手したのは認定を受ける1年前。開発の過程で蒸気が爆発するように出て行ってしまう欠点を改善し、安全に使用できるようにした。認定の成果を大谷社長は「新しい市場が見えた。新しい連携の組み方を教えてもらった」と振り返る。

 今後も新たな分野の企業との連携を模索していくが、難しい場面もあると予想する。「自社の商品を理解してもらうことが大切。チャレンジする気持ちがあり、技術や市場を読み、リスクを承知で理解し合える企業と出会えるかどうかだ」(同)と連携企業との相互理解が何よりも重要だと考えている。