製造/中部・北陸 「改良型エアバッグ起動装置を使った安全用具の製造・販売事業」

斬新な発想で人々の命を守る

 オートバイの事故から一人でも多くの人の命を守りたい−。この思いから生まれたのが無限電光のエアバッグ内蔵ジャケット「ヒットエアー」だ。事故の瞬間、ジャケットそのものが膨らむ斬新な製品。事故でバイクの車体から投げ出され、身一つの状態になってしまう乗り手を守る。

 乗り手はジャケットを着用し、ジャケットと車体についた伸縮ワイヤをつなぐ。事故の衝撃で乗り手が車体から飛ばされ、50kg以上の負荷がかかると起動装置が作動。ジャケット内蔵のボンベから二酸化炭素が送り込まれ、0.5秒でエアバッグ全体が膨張する仕組みだ。バイク事故でけがの多い首、背中、胸、脇、腰を守る。

 同製品の要ともいえる起動装置の改良と、多くの人に使ってもらうために3社が手を組んだ。連携前からヒットエアーの樹脂部品を手掛けていたYKKファスニングプロダクツ販売(東京都台東区)が、起動装置の小型化に成功。大きさで一回り、重さで約半分を実現した。これにより女性や子供でも着用できるほか、乗馬用への応用も可能になった。

 さらに首都圏のバイク用品店への販路を持つIDENTITY(横浜市)と提携。起動装置の小型化で可能性が広がったヒットエアーの市場調査を行うとともに、販路拡大に力を入れている。

無限電光(株)


会社名
役割分担
■コア企業
無限電光(株)
エアバッグ起動装置およびそれを使用した商品の企画・製造、技術・ノウハウ、アウターケア
YKKファスニングプロダクツ販売(株)樹脂部品の設計・生産およびそれに伴う金型の設計・管理
IDENTITY(株)商品販売、市場調査および販売戦略立案



無限電光(株)竹内健詞代表取締役社長<br>「各種プロテクターやヘルメットでも十分ではなかった首を保護するとともに、体の前後・側面までエアバックでガードします。実際に事故にあった人から届く、お礼の手紙がなによりもうれしいです」

無限電光(株)竹内健詞代表取締役社長
「各種プロテクターやヘルメットでも十分ではなかった首を保護するとともに、体の前後・側面までエアバックでガードします。実際に事故にあった人から届く、お礼の手紙がなによりもうれしいです」

【安全性の高い製品をより多くの人へ】

 きっかけは2年前。ジャケットと車体をつなぐワイヤのバックル開発だった。従来製品は事故の衝撃でエアバッグが膨らむ前にバックルが外れてしまう可能性があった。そのため無限電光は、高い技術力を持つYKKファスニングプロダクツ販売に開発を依頼。その結果、耐荷重150kgと従来の約3倍の強度を持つ安全性の高いバックルができあがった。

 さらに製品の質を高めて多くの人に使ってもらうために着手したのが製品の要ともいえる起動装置の小型化だった。これまでの起動装置は大型で重量もあったため、ジャケットを着用できる人が限られていた。そこで起動装置の小型化と販路拡大を目指し、07年10月に3社で新連携の認定を取得した。

 YKKファスニングプロダクツ販売のプラスチック成形技術と金型技術を用いてできた起動装置は、厚さ約3cm、重さ105gといずれも従来品の約半分。大きさそのものも一回り小さくなった。部品点数も従来の18点から6点へと3分の1に減ったことで、製造コストの大幅低減も実現した。


【世界に向けて販売攻勢、そして新たな可能性も模索】

 起動装置の小型化で可能性は大きく広がった。これまでは起動装置の大きさがネックとなり、成人男性向けのジャケットに用途が限定されていた。しかし小型化により女性、子供でもジャケットの着用が可能になった。今ではバイク用以外に、乗馬用のジャケットも製品化されている。

 販売も軌道に乗りつつある。「ヒットエアー」は現在、一般消費者向けに販売されているほか、13都道府県の警察で採用され、白バイ隊が着用している。国内だけでなく海外での実績も増加。現在は30カ国以上で販売しており、スペイン、中国、ギリシャなど5カ国の警察でも採用されている。

 9月からはオートバイ人口や乗馬人口が多い米国での販売も決まった。現地の商社と手を組み、まずはアトランタ州のバイク用品店で販売をスタートする。竹内健詞社長は「3年後には10億円の売り上げを目指す」と販売攻勢をかける考えだ。

 「新連携は得意分野を持つ専門企業が集まって仕事を請け負うことで、より良い製品ができることが利点」と竹内社長。「2社ともこれまで協力してきてもらった流れがあり、お互い信頼関係を築いていたからこそ成功した」と強調する。連携企業と共通の目的を持ち、ステップアップのために新連携を活用することが鍵だという。

 現在、同社は小型化した起動装置を応用し、交通用三角表示器や緊急用担架などの商品化を模索している。いずれもキーワードは「安全」だ。「自社の製品で人々の安全を守りたい」と語る同社の挑戦はまだまだ続く。