製造/関東 「24時間焼きたてパンが提供できる『ベーカリーシステム』の開発・販売 〜『専用ホイロオーブンと専用冷凍生地』の開発および販売〜」

職人の味を人工知能を備えたオーブンと専用生地で再現

 創業30年を誇るパン屋の二代目が設立したエキスパートウェーブがコア企業となり、誰でも簡単においしいパンが作れるベーカリーシステムの開発・販売に取り組んでいる。

 東京都内で7店舗のベーカーリーショップを手掛ける牧リヨングループ。その二代目が伝統的な職人技術と最先端のIT技術を融合したフードビジネスの新たなる時代を担う企業として平成15年11月に設立したのがエキスパートウェーブ。

 フード業界の業務用インターネット厨房システム(AIネットワークシステム)の開発・販売、ベーカリー店舗プロデュースなどを手掛ける同社は06年2月に新連携制度の認定を受け、人工知能(AI)制御で自動管理するオーブン「Express AI Oven」を開発。専用冷凍生地を開発したエーケーエム、専用小麦粉の開発と製造を行う日本製粉との3社で連携する。

 焼きたてのおいしいパンを常時提供するには、大規模な製造設備が必要。これに対し「誰でも簡単にパンを作れる」をコンセプトにAI機能を備えるオーブンと専用の冷凍生地を開発することで、低コスト、省スペース、短時間においしいパンを提供できる「ベーカリーシステム」を構築した。

 パン生地の詳細なデータやその日の温度や湿度、そして調理方法の過程をデジタル化することで解凍、発酵、焼成の工程を自動管理でき、いつでも同じ味のパンを作り出すことができる。

 パン製造の専門的な知識やノウハウがないスーパーマーケットやレストランチェーンでも、このシステムを使えば自前で本格的なパンを提供することが可能となる。オーブン本体の価格は160万8,000円。本格的に販売を始めて1年ほどが経過したが、これまでに20台ほどを売り上げた。

エキスパートウェーブ(株)


会社名
役割分担
■コア企業
エキスパートウェーブ(株)
システム制御技術、製造プロセスのデータ化、パンの新しいレシピの開発
エーケーエム(株)専用冷凍パン生地の開発、量産製造ライン
日本製粉(株)専用小麦粉の開発・製造
(株)サンライズフーズ店舗向けマニュアル化、試験販売・評価検証などのマーケティング(日本製粉の子会社であったが08年2月25日解散)



エキスパートウェーブ(株) 牧田雄治社長<br>「ベーカリーシステムによって経験や勘に頼らず、いつでもおいしい職人と同じ味のパンを提供できるようになります」

エキスパートウェーブ(株) 牧田雄治社長
「ベーカリーシステムによって経験や勘に頼らず、いつでもおいしい職人と同じ味のパンを提供できるようになります」

【おいしいパンを科学的に作る】

 エキスパートウェーブは03年11月にパン屋の二代目である牧田雄治氏によって設立された。牧田社長は以前から、同じパンでも店舗、職人ごとに味が違うという状態に対し、「どうすれば味を一定に保つことができるのか考えていた」と振り返る。

 幸いにも社内にシステム設計に詳しい社員がいたため、「ITを活用することでいつでもどこでも同じ味を再現する生地とオーブンを作れないか」と起業に至った。

 職人技とITの融合による「ベーカリーシステム」の開発に活路を見いだした理由は「たった5秒間、発酵の時間を変えるだけで味が驚くほどはっきりと変わってしまう」(牧田社長)というパンの繊細さを熟知していたからだ。

 通常、パンは粉や水、イーストなどをミキサーでこね、こね上がった生地を発酵させる。その後、実際の形に成形し、再び発酵、焼き上げる。ただその際、水などの分量が少しでも違うと同じ味のパンが焼き上がらない。

 同社が供給する冷凍パン生地は一次発酵から成形までを行ったもの。そのため、あとはマニュアルに従ってオーブンで解凍、二次発酵、焼成を行うだけでいい。牧田社長は「パンの製造過程、もしくは材料の分量の一つひとつに科学的な理由づけがあるということ」とシステムの意義を話す。


【10年以内に都心に50店舗の出店を目指す】

 今回、新連携制度を活用したことで牧田社長は「さまざまなメリットがあった」という。企業間の連携により人脈が広がるだけでなく、「銀行の融資枠ができた」とも話す。

 ベンチャー企業である以上、それほど金銭的な余裕がないのが実情。「今までは融資枠がゼロだったので大変助かる」と効果を実感している。ただ認定時にマーケティングを担当したサンライズフーズは、08年2月25日に会社を解散してしまった。

 「中小企業はちょっとのつまずきが命取りになる。互いに中小であるため、どこがその費用を持つかといったことで思うようにいかないこともあった」と連携の難しさも打ち明ける。

 同社は都内ホテルのレストランや展示会場にベーカリーシステムを納入するなど着実に実績を上げてきた。最終的にはコンビニエンスストアへ本格導入することを目標に据えている。加えて、今後10年以内に直営店とフランチャイズ(FC)店を都心に50カ所開設することも考えている。

 また、このシステムは遠隔地でも力を発揮する。インターネットで焼き上げのスケジュールの設定から冷凍生地の在庫の確認まで幅広く管理できるため海外、特に韓国、ベトナムなどにも進出していく考えだ。すでに韓国企業とは1年前から準備が進められ、秋口の本格導入を見込んでいる。