製造/東北 「パソコンによる電子ジャカード織機制御システムの開発・事業化」

織物産地のデジタル化を推進

 「織機が動かなくなって、製品ができなくなる。このままでは産地が消えてしまう」―。こんな危機感が潜在的にジャカード織物の業界にある。

 現在、国内で稼働する電子ジャカード織機の約80%以上のシェアを占めている大手機器メーカーが繊維機器事業から撤退。その余波として驤頭脳驩部分となるコントローラの供給に支障を抱えることになった。

 稼働中のコントローラはフロッピーディスクを記憶媒体とした「MS-DOS」仕様で、設計を含めて10年以上が経過。「ここ数年で使えなくなる」という声もある。補修用部品なども入手困難で、デジタル化が大きな課題となっていた。

 新連携事業の核となる技術はコア企業の織元山口(山形県米沢市)が自社内で使ってきたパソコンによる電子ジャカードのコントローラ。これをより汎用性の高いものに改良し、全国の電子ジャカード織物産地に供給するのが今回のプロジェクトだ。

 米沢は伝統的な織物産地の一つ。連携体は米沢地域を本拠地とする3社が手を組んだ。システム開発は織元山口が担当。全国の産地にネットワークを持つ繊維機械販売の三河屋機料が営業を受け持ち、メコンが機器開発を手掛ける。

 織元山口の山口英夫社長は「非常にニッチな市場。それゆえ競合先が少ない」と見る。6月以降に販売に乗り出す計画だ。

(株)織元山口


会社名
役割分担
■コア企業
(株)織元山口
システム開発、インターネットマーケティング、プロモーション
メコン(株)機器開発、組み立て
三河屋機料(株)営業、販売、メンテナンス
山形県中小企業団体中央会事業化支援



(株)織元山口 山口英夫社長<br>「ネットワーク対応などライアンアップ化を進めると同時に、新コントローラで織物の新たな可能性が広がるということを今後も全国の産地に浸透させていきたいと思っています」

(株)織元山口 山口英夫社長
「ネットワーク対応などライアンアップ化を進めると同時に、新コントローラで織物の新たな可能性が広がるということを今後も全国の産地に浸透させていきたいと思っています」

【織物の新たな可能性に向けて順調な滑り出し】

 「ほぼ計画通りに進んでいる」(山口社長)。新連携の認定は07年7月に受け、プロジェクトは間もなく2年目に入る。

 そもそもジャカード織機は紋紙と呼ばれる穴を開けた紙を使って、文様を制御する機械。コンピュータ制御の従来の電子ジャカード織機は紋紙をフロッピーディスクで記憶する。これを「一般的なパソコンを使って制御するのがポイント」と山口社長は説明する。

 織元山口は織機をプリンタにイメージ的に置き換え、デジタル画像をそのまま織物として織る特許技術「PHOTOTEX(フォトテックス)」を保有。十数年前から織物のデジタル化を実践してきた。そのなかでKYB(旧カヤバ工業)製の電子ジャカード織機に対応する新コントローラを自前で開発し、ノウハウを蓄積していた。

 その技術に着目したのが地元の三河屋機料。そして汎用製品開発に向けてソフト・ハード両面の技術を持つメコンが連携体に加わった。米沢織の産地でチームを組んだのが特徴だ。

 現在、KYB製電子ジャカード織機は全国で数万台が稼働していると見ている。すでにKYBは繊維機器事業から撤退しており今後、織機本体は大丈夫でもフロッピーディスクを記憶媒体としたコントローラが動かなくなることが懸念されている。

 このため連携体はパソコンによる汎用の制御装置の需要があると判断した。ただ織物業界全体の高齢化が進んでおり、後継者がいない場合は機械が壊れたら廃業を選択することも考えられる。だから、新たな投資意欲をどう引き出すかがカギとなる。

 山口社長は「新コントローラを使えば、織物の新たな可能性が広がる。それを産地に浸透させていくことが重要」としている。


【織物メーカーの視点で開発】

 新コントローラの販売価格は30万円程度を見込んでいる。数十年先まで使えるシステムデザインとし、市販のパソコンをベースに開発した。一般のパソコンのように初期設定は必要とせず、コネクタを差し替えるだけで済み、操作性も従来のコントローラとの互換性を重視した。

 これまでの紋データも継承でき、「餅は餅屋」(山口社長)と織物メーカーの視点がポイントになっていることを強調する。すでに山口社長は山梨県など織物産地で、講演などを通じシステムの説明を始めた。

 プロジェクトの2年目は商品のラインアップ化を進める計画。ネットワーク化に対応するなどパソコンの利点を活用していく方針だ。織物業界の問題解決に向けて、今後も連携による挑戦は続く。