製造/関東 「非接触3次元レーザーセンサーによるロボット位置制御システムの開発および事業化」

ロボットに目と頭脳を

 産業用ロボットに目と頭脳を与える−。これは非接触3次元(3D)レーザービジョンセンサーによるロボット位置制御システムの開発により、これまで困難だった高精度の位置検出が可能にする取り組み。

 このシステムをアーク溶接に利用すれば、常に安定した正規位置と最適な溶接の長さを確保でき、従来のような安全性を加味した長めの溶接が不要となる。また溶接時間の短縮にもつながる。

 同センサーは3Dスキャナーでワーク形状を読み取り、それを演算装置に取り込む。パソコン上で簡単にロボットのティーチングデータを作成でき、初期設定を除けば熟練作業者でなくても扱えるため、省人化にも貢献する。

 また5台までのロボットを同時に制御する協調システムも搭載できる。溶接用ロボットの位置決めのほか、溶接ビードの検査、バリ取り、研磨など幅広い用途に応用可能で、読み取った3Dの点群データを基にしてワークのトレーサビリティー(追跡可能性)にも役立つ。

 コア企業のトーキン(浜松市西区)が溶接ノウハウやロボット制御を担当。3Dスキャナーはパルステック工業から供給を受ける。ソフトウェア開発は3次元ノウハウに強みを持つアメリオ(浜松市東区)で、複数スキャナーによるデータ取得も可能とした。

 システム保守は上島電興社。ほかに愛知産業や安川電機、サンワテクノス、三明が販売支援として参画する。同システムで2010年に売り上げ1億円、5年後に10億円を目指す。

(株)トーキン


会社名
役割分担
■コア企業
(株)トーキン
溶接ノウハウ、ロボット制御、販売ルート確保
(株)アメリオソフトウェア開発、3Dノウハウ
(株)上島電興社アフターサービス、メンテナンス



(株)トーキン 金森武夫社長<br>「今後も連携体それぞれの無形技術を持ち寄り、互いの不得手な部分を補い合いながら商品展開を進めていきたいと考えています」

(株)トーキン 金森武夫社長
「今後も連携体それぞれの無形技術を持ち寄り、互いの不得手な部分を補い合いながら商品展開を進めていきたいと考えています」

【得意技術を持ち寄り、不得手な部分を補完】

 トーキンは溶接トーチや溶接ロボット機器で業界屈指の存在で、自動車や建設機械、造船、電子機器など広範な産業分野を支える。アメリオとは05年のロボット位置制御システムの開発当初から、3Dデータの扱いのノウハウを蓄積してきた。

 さらに専用機械の制御装置で納入実績が豊富な上島電興社が加わり、07年6月に「新連携」の認定を受けた。「互いの得意とする無形技術を持ち寄り、不得手な部分を補い合える」と金森武夫トーキン社長はその狙いを語る。

 3Dレーザービジョンセンサーは、ロボットの手首先端の溶接用トーチ横に取り付けたスキャナーにより、ワーク形状を3Dの点群データとして読み取る。データから溶接線を検出し、溶接線がずれても自動でロボットの座標を制御、正確に追従することができる。

 ロボット位置の制御精度は、実測値で±0.2mm以内。3Dセンサーとロボットを組み合わせたシステムは世界初という。

 従来はワーク位置がずれた場合、作業者がロボットを移動させて座標を手作業で登録し直さなければならなかっただけに溶接分野を中心に商品化し、事業化を目指す戦略だ。


【自動車の軽量化に貢献】

 例えば、自動車用ボディーでは現在、スポット溶接が多用されている。スポット溶接がこの技術によりアーク溶接に置き換われば、溶接するためのフランジ部を減らすことができ、自動車の軽量化や居住空間の向上につながる。ロボット設備自体もアーク溶接の方が小さく、低コスト化が可能となる。

 さらに自動車のカウルトップなど、これまでアーク溶接でしか対応できなかった部分も溶接品質の向上につながる。また溶接記録がデータとして残るため、トレーサビリティーによる不良の低減や原因の究明にも役立つ。

 新規だけでなく、既存ロボットへの搭載も可能なため市場性は大きい。すでに技術的めどをつけ、商品名「3DFS」として実用化した。自動車メーカーなどで採用が進むほか、「研磨や検査など溶接以外の幅広い分野から11社も引き合いがある」(勝又直路技術部課長)と注目を集めている。

 課題は、ユーザーの設備案件ごとにシステム構築が必要となるため、カスタマイズ費用が高くなることだ。ロボットをモデルチェンジしたり、演算装置の演算ソフトが更新されたりするたびに、解析アプリケーションの改良が必要となる。

 このため販路拡大に応じたアフターサービス体制の強化が不可欠となるが、今後、「中国など海外で売るためのサポート体制も強化していく」(金森社長)と意気込んでいる。