製造/九州 「少中量規模・カスタム生産に対応した発光ダイオード(LED)照明器具の商品化」

独自の工夫を施し他社の一歩先行く

 拡大する発光ダイオード(LED)市場。室内照明だけでなく、自動車のヘッドランプや信号機にも普及が進んでいる。コア企業のイネックスはもともと石材輸入や土木工事をしていた。5年前に長崎県の発注で植栽のライトアップを受注したのをきっかけに本格的に研究を開始した。

 「モノづくりが好き」という小田陽一社長は、回転式の垂直型駐車場などを独自に製造したこともあった。そうはいってもLEDの知識はほとんどなく、一人で勉強を重ねた。こうして完成したLED照明は「大赤字だった」と小田社長は苦笑いする。だが今後のLED市場を展望すると「やめられなくなった」(小田社長)という。

 石材業のかたわらLEDの商品開発に力を注ぎ、新商品を完成していった。07年に100W白熱灯と同等の照度をもつ9Wの照明器具「CX Down Light」を発売。価格は1灯が約2万5,000円と割高だが、寿命は従来の白熱灯に比べて「40倍になる」(同)という。

 今では一部商品を大手電機メーカーにOEM供給している。小さい企業ながらも他社の先を行く技術力で信用を勝ち得てきた。ただ、あくまで「大手と真っ向勝負するつもりはない」(同)と差別化を図る。

 同社は顧客の要望に細かく応えるため、カスタム生産に対応できる県内企業と連携。今後、「LEDの未知の分野」(同)と位置づける遠距離照明の生産を始める。
 

(株)イネックス


会社名
役割分担
■コア企業
(株)イネックス
LED照明器具企画・設計・製造・販売、部品調達
(株)サンチュウ基盤設計、製造・組立、回路解析、少中量・カスタム対応設計、製造
長崎総合科学大学回路設計支援、実験
長崎県工業技術センター光学系設計、支援・評価
長崎県窯業技術センター放熱基板開発



(株)イネックス 小田陽一社長<br>「自社の新事業(エコ事業)として、ハイパワー、高輝度、遠距離照射、カスタム生産など独自性を活かしながら屋外照明分野などのニッチ市場を中心に開拓・供給していきたいと考えています」

(株)イネックス 小田陽一社長
「自社の新事業(エコ事業)として、ハイパワー、高輝度、遠距離照射、カスタム生産など独自性を活かしながら屋外照明分野などのニッチ市場を中心に開拓・供給していきたいと考えています」

【遠距離用投光器の開発に中小企業金融公庫からの融資を活用】
 
 連携体として製造を担うのはサンチュウ(長崎県島原市)。通信機器の基板製造などを手掛けており、生産設備が充実しているほか、情報管理も徹底されている。

 新連携の認定を受けたのは07年11月。中央行政からのバックアップで「営業がしやすくなった」(小田社長)。また工業技術センターなど研究機関の実験設備を借りるなどして研究は加速した。

 一方、課題もあった。新連携は単年度計画が終わるごとに補助金を交付する。同社のような開発型の企業にとって初期にかかる開発費用の工面は頭が痛い。そこで同社は長崎県内の企業としては初めて、中小企業金融公庫から開発資金として2,000万円の融資を受けた。

 小田社長は「小さい企業が生き残るには、大手よりも先に研究を進めなくてはいけない。開発費を準備できたのは大きかった」と語る。

 08年2月には07年度の目標であった、70mの遠距離を70ルクスという高輝度で照らす遠距離投光器を完成。すでに長崎県平戸市にある平戸大橋(全長約880m)で試験照射を始めている。

 平戸大橋では投光器で橋もライトアップしているが消費電力は1.2kwで寿命は9,000−1万2,000時間という。それに対し同社が製造した「スカイハイビーム」は25Wで消費電力は従来の約10分の1。4万−6万時間の照射が可能で、省エネ効果は大きい。


【実績を重ねる度に共同開発の声がかかるようになった】

 LEDの遠距離照明といっても「これまでは、せいぜい5−10mが限度だった」(小田社長)。遠くの対象物を照らすために独自レンズ(特許出願済)を1年かけて開発。照明が出す熱を極力抑えたほか、放熱を促すために回路を改良。また光を効率的に集めて照射できるよう反射板も工夫した。

 4月から本格販売をスタートし、年間500−600基の販売を見込んでいる。主に橋やビルのライトアップ用として需要が見込まれるため、販路拡大の手も打った。東京都内に事業所を開設。08年中には代理店を現在の4店舗から首都圏を中心に10店舗まで増やす考えだ。

 LED事業は08年8月期売上高で前年度比5倍の1億円を見込んでいる。さらに09年8月期には2億円の売り上げを見込む。その自信の裏付けとなっているものは確かな技術力だ。

 県内外で実績を重ねるたびに異業種から「LED商品を開発しよう」との声がかかるという。そのため社員も含めて休み返上で仕事に打ち込んでいる。そして春からは長崎大学と共同でLED集魚灯の研究を始めている。

 「手塩にかけて育てたLED。どうせやるなら普及させたい。成功したら社員みんなでうまいメシを食べる」と小田社長の研究の手はまだまだ止まらない。