製造/中部・北陸 「環境に優しい新コンセプト包丁の製造販売で新たな循環型市場を構築する事業」

使い捨てされる包丁からヒント

 かつて包丁は切れが悪くなれば、顧客自らが砥石(といし)を使って研いでいた。だが次第にこうした習慣が薄れ、切れが悪くなった包丁は簡単に捨てられてしまうようになった。そんな包丁が現在、国内で年間700万−800万本も不燃ゴミとして処分されている。

 研ぎ直しすれば、また包丁を使えることは顧客も分かっている。しかし手間がかかり、うまく研ぐのは難しい。また研ぎ機もあるが、人手によって研いだ場合に比べ仕上がりが十分でないこともあるという。

 清水刃物工業所は、こうした状況にビジネスチャンスを見いだした。清水彰社長は「包丁製造に長年、携わってきた経験から当然、研ぐ技術もある」とし、これを生かそうと考えた。

 このため同社は05年に大阪クラッド(大阪市東淀川区)、アイチテクノメタルフカウミ(新潟県燕市)と連携し、新製品「トギノン」を開発した。

 この連携事業では柄から刃を簡単に取り外せる構造や、研ぎ直しのため刃を同社へ郵便で送る専用封筒の開発、研ぎ直し中に使う替え刃など工夫を凝らすことで、切れが悪くなった包丁のリサイクル事業を実現した。

 新連携により「トギノンの認知度を高めよう」(清水社長)と考え、07年6月に認定を受けた。同製品がヒットすれば、会社の発展とともに、環境保全にも役立つとの狙いだ。

(株)清水刃物工業所


会社名
役割分担
■コア企業
(株)清水刃物工業所
新コンセプト包丁の研究開発・製造、販売、メンテナンス。メンテナンス事業による循環型リサイクル事業
大阪クラッド(株)新コンセプト包丁の特殊鋼材の研究開発、コア企業への供給。回収した廃棄鋼材の再生利用
アイチテクノメタルフカウミ(株)新コンセプト包丁に用いる特殊鋼材の製造



(株)清水刃物工業所 清水彰社長<br>「コイン一枚で簡単に交換でき、替刃の交換時や奥の汚れを掃除するときにもサッと開けられ清潔です。トギノンリサイクルシステムで切れなくなったら捨てることがない一生使ってもらいたい包丁です」

(株)清水刃物工業所 清水彰社長
「コイン一枚で簡単に交換でき、替刃の交換時や奥の汚れを掃除するときにもサッと開けられ清潔です。トギノンリサイクルシステムで切れなくなったら捨てることがない一生使ってもらいたい包丁です」

【顧客の利便性を追求して工夫】

 コア企業の清水刃物工業所は、刃物のまちとして知られる岐阜県関市で、約50年間にわたり家庭用や業務用の包丁を製造してきた。

 このため清水彰社長は包丁の動向に敏感で「使い捨てされている包丁の現状はもったいないし、環境にも悪い」と感じていた。

 こうした思いから開発した「トギノン」は従来の包丁と異なり、刃と柄を安全かつ簡単に脱着できるのが最大の特徴だ。

 従来は刃と柄が金具などでかしめられており、脱着に手間がかかる。これに対しトギノンは500円玉などでネジを回すだけで簡単に外せる。この特徴がリサイクル事業を展開する上で欠かせない。

 同事業のシステムでは、製品の切れが悪くなれば、顧客は刃の部分だけを外して同社に送る。同社がその刃を研ぎ直して送り返す。こんな簡単な仕組みだが、顧客の利便性を徹底して考え抜いた。

 それは、まず刃を郵便で手軽に送れるということだ。購入時に専用の封筒と刃の包装紙が添付されており、これを使って刃を同社へ郵送できる。発送すれば、約2週間で研ぎ直しされた刃が返送されてくる。

 必要な費用は刃サイズなどによりシリーズ化しているため、研ぎ直し料金が735−1,050円。そして郵便料金が140−200円。

 研ぎ直し期間中の約2週間は手元に包丁がなくなる。その間はどうするのか。この点についても「トギノンを替え刃付きで販売することでクリアした」(清水社長)。

 そして一方の刃が研ぎ直し中であれば、もう一方の刃を柄に取り付けて使えばいいわけだ。


【新連携認定で知名度向上】

 トギノンのユーザーは、シリーズ全体で全国に約2,000人を数える。研ぎ直しのため定期的に刃を送ってくる顧客も多数おり、同事業は好評だ。

 同社にとっても「ユーザーとの直接のやり取りでニーズをつかみやすく、的確な対応ができるなど利点が多い」(同)という。

 しかし現在、トギノンシリーズの販売状況は同社の売り上げ全体の約5%を占める程度。「ヒットしているとはいえず、実績を伸ばしたい」(同)。そこで、新連携を活用して認知度アップを狙った。

 トギノンは現在、インターネット販売がメーン。今後、認知度の向上とともに、販売チャンネルをいかに増やしていくかが課題だ。

 店舗販売という手もあるが「掃除用品販売など、主婦を相手にする家庭訪問型ビジネスを展開している企業と提携するのが有効だと考えている」(同)。このため現在は提携先を探しているところだ。

 トギノンの新シリーズ開発についても、新連携の連携体メンバーの大阪クラッド、アイチテクノメタルフカウミとともに、積極的に取り組んでいく考えだ。