製造/近畿 「歯の表面の着色を容易に除去できるブラシの開発と事業化」

歯の汚れをきれいに落とす
 
 広栄社(大阪府河内長野市)は三角爪楊枝、歯間ブラシ、舌クリーナーなどオーラル・ケア用品を製造する企業。販促ツールの製造を手掛ける大文字(東京都文京区)と連携し、歯の表面の着色を容易に除去できる美白ブラシ「ピーリング・スポンジ」を開発・発売する。

 ピーリング・スポンジは広島大学の特許を商品化したもので、ブラシ部分にメラミン樹脂を用いた美白スポンジ。

 一般的に歯の表面には1μm(1μmは100万分の1)の穴が空いているが、市販の歯磨き粉では粒子が大きすぎて、穴に入ったタバコのヤニや茶渋を落としきれなかった。

 同製品の先端部は0.2μm−0.5μmのため、水を付けてこするだけで細かい汚れがきれいに落ちる。ブラシ部分に落ちた汚れが付くため、汚れの落ち具合も視認できる。また従来の美白歯磨き粉は歯のエナメル質まで削ってしまうことがあったが、同製品は研磨剤を使用していないため、安全性が高い。

 定価は3個入りで504円。07年11月に歯科向けに先行販売、1月から薬局やスーパーマーケットなどで販売しており、すでに累計8万セットを売り上げるヒット商品になっている。小売店の棚卸しが始まる3月から本格的な販売を開始する予定で、09年度は30万セットの販売を目指す。

(株)広栄社


会社名
役割分担
■コア企業
(株)広栄社
ホルダー開発・製造、セット加工、包装、販売
(株)大文字圧縮メラミンの加工



(株)広栄社 稲葉修社長<br>「日本のモノづくりの伝統を守り抜くために努力しています。良い製品を作るには相応のコストがかかるが、その価値を分かって購入していただければ嬉しいです」

(株)広栄社 稲葉修社長
「日本のモノづくりの伝統を守り抜くために努力しています。良い製品を作るには相応のコストがかかるが、その価値を分かって購入していただければ嬉しいです」

【安全性の確保が必須の課題】

 ピーリング・スポンジを開発するきっかけは広島大学からの依頼。広島大学はメラミン樹脂を用いることで歯磨き剤なしで歯の表面を掃除できるブラシを発案、特許を取得していたが、商品化のメドがついていなかった。

 同社の稲葉修社長はこの話を聞いたとき「安全性に疑問を持った」という。メラミン樹脂はホルマリンと重合させて発泡させるため、人体に有害なホルムアルデヒドを含むためだ。すでに食器用スポンジなどが商品化されていたが、口に入れ粘膜に直接触れるブラシを製品化するには、安全性確保が必須課題だった。

 転機が訪れたのは05年春のギフトショー。同社はギフト用品としてメラミン樹脂の食器用スポンジなどを製造・販売する大文字(東京都文京区)と出会った。大文字が持つメラミン樹脂圧縮技術を用いることで、樹脂中のホルムアルデヒドを自然界のレベルまで下げることに成功。両社は美白ブラシの共同開発を決定した。


【形状、樹脂の圧縮度・・・試行錯誤の連続】

 次の課題となったのが製品の形状。広島大学が歯ブラシ型の製品を想定していたため、当初は歯ブラシ型での商品化を進めていたが、どうしても最適な使用感が得られなかった。

 そこで「消しゴムの形状をヒントにメラミン樹脂をクリップではさんで使ってみたところ、これが使いやすかった」(稲葉修社長)。専門家のテストでも高評価が得られたため、消しゴム型の形状が決定した。

 樹脂の圧縮度にもこだわった。2分の1−8分の1までさまざまな圧縮度の製品をテストし、4分の1圧縮での製品化を決定。「保水力もちょうど良く、汚れがきれいに落ちた」(同)。

 同事業は07年6月に中小企業基盤整備機構の新連携事業の認定を受けた。「(新連携事業の認定案件は)企業向け商品が多いが、一般消費者向けの商品で認定を受けられたのは本当にありがたい」(同)と振り返る。

 広栄社は大阪府河内長野市の爪楊枝メーカー。同地域は江戸時代から爪楊枝の産地として知られるが、他の企業が工場を海外に移転するなか、国内生産にこだわっている。「安い中国製品と戦いながら、日本のモノづくりの伝統を守り抜くため」(同)だという。

 こうして今も安心して使える良い製品づくりを基本に、爪楊枝のみならず歯間ブラシ、舌ブラシ、歯茎ブラシなどのオーラル・ケア商品を開発、販売している。

 また製品を作る機械装置まで自社製作する念の入れよう。他社製品に比べ価格は割高だが、稲葉社長は「国際標準である(丸形でなく)三角形の爪楊枝を作っている。良い製品を作るには相応のコストがかかるが、価値を分かっていただけるお客さまに買ってもらえればいい」と語る。