製造/中部・北陸 「弾力性樹脂を使用したノーパンク自転車の製造販売事業」

従来のノーパンクタイヤの課題を解消する弾力性樹脂

 自動車用樹脂部品成形を手掛ける型善がコア企業となって取り組むのは、ノーパンク自転車の製造販売事業。タイヤのチューブ内に空気の代わりに特殊な樹脂を注入することによりパンクしない自転車の開発だ。事業化に当たっては自転車製造販売のハチスカ、化学品商社の小池産業名古屋支店と連携する。

 注入するのは弾力性のある樹脂に油を混合した物質で、専用注入機内で150−160℃に加熱して液状化させ、タイヤの空気孔から注入する。液状化した樹脂は常温冷却することによりタイヤチューブ内で固まり、パンクしないタイヤに生まれ変わる。

 ノーパンク自転車自体は以前から発売されている。発泡ウレタンをタイヤにはめ込む方式が主流だが、タイヤが固いため乗り心地が悪かったり、コスト高となり自転車そのものが高価という課題があった。当該連携事業はこうした課題を解決、事業化に乗り出す。

 連携体では型善が弾力性樹脂と専用注入機の製造を担当。ハチスカは型善の樹脂、注入機を使用して自社の中国工場でノーパンク自転車を製造、さらにホームセンターなど自転車量販店への販売を行う。小池産業は型善に樹脂原料の情報提供を行うとともに、ハチスカの中国工場へ樹脂と注入機の輸出業務を担当する。

(株)型善


会社名
役割分担
■コア企業
(株)型善
弾力性樹脂の製造、専用注入機の製造
(株)ハチスカノーパンク自転車の製造・販売、
小池産業株(株)名古屋支店樹脂原料の情報提供、輸出業務



(株)型善 近藤 駆米雄社長<br>「新連携で製造・販売のシステムが確立できたので次の目標は軽量化です。欧州への進出も図っていきたいです」

(株)型善 近藤 駆米雄社長
「新連携で製造・販売のシステムが確立できたので次の目標は軽量化です。欧州への進出も図っていきたいです」

【注入材料と方法で試行錯誤】

 型善は金型メーカーに勤めていた近藤駆米雄社長が独立、82年4月に設立した。自動車のサンルーフなど樹脂製品の成形が主力だが、金型製作も自社で行い、金型設計から製品成形まで自社で一貫して行えるのが強みだ。

 自転車部品などの事業は手掛けてなかった同社だが、あるきっけからノーパンク自転車の製造は始まった。同社がある展示会に出展した折、近藤社長は知人の経営者から「フォークリフト用の安価なノーパンクタイヤがないか探してほしい」と頼まれた。

 展示会では目当てのタイヤを見つけることはできなかったが、これをきっかけに「従来にないノーパンクタイヤを作ってみよう」(近藤駆米雄社長)と開発がスタートした。

 開発にあたっては、サンプルとして身近で安価に手に入る自転車を選んだ。これは既存の自転車をそのままノーパンクタイヤにできることを目指したためだ。しかし空気の代わりに何を入れればいいのか苦心したという。自動車用プラスチック部品を扱っている関係で、材料商社やメーカーからさまざまな材料サンプルを仕入れて研究を重ねた。

 その結果、熱可塑性の弾力性樹脂に油を配合するという方法に行き着いた。この樹脂は特殊吸収性と形状保持性を兼ね備え持ち、温めると液体化し、冷めると空気圧程度の硬さになる。また弾力性により、走行時は空気タイヤより軽く感じるという特徴を持っている。

 材料は揃ったが、次の課題はどうやってタイヤチューブに注入するかだった。手法としては樹脂に熱を加えて液体状にしてからタイヤに注入、冷却後に固体化するのを待つというものだ。しかし固まってない樹脂が空気孔から逆流して溢れ出てしまうという難題があった。

 「その解決法が思いつかなかった。試行錯誤の末、注入器の先端に樹脂の留め具を仕込み、注入後、それを押し込んで空気孔をふさぐ方法をとった」(同)。


【軽量化の徹底と本場・欧州への進出を目指す】

 こうして原型はでき上がり、自転車メーカーなどに採用を働きかけたが、なかなか普及しなかった。そんな時、知人の経営者からハチスカを紹介され、もともとノーパンク自転車に興味を持っていたハチスカでの採用が決まった。

 ハチスカではノーパンク自転車を中国で生産するため、弾力性樹脂や樹脂注入機の中国輸出が必要となった。そこで以前から型善が取引していた小池産業に輸出業務を依頼する形で連携への参加を要請した。

 新連携の認定は06年。そのメリットは「特許取得や展示会出展などの費用の3分の2に対して補助金が出るほか、金融機関からの評価が上がり、融資が受けやすくなった」(同)ことという。

 この事業も3年目に入り、型善のノーパンク自転車関連の年間売り上げは約3,000万円に達した。今後の課題は軽量化。空気の代わりに樹脂を入れるため、通常の自転車に比べて約2.5kg重い。さらなる普及のために軽量化が次の課題であり、それを解決すべく連携体が一丸となって取り組んでいく予定だ。

 とくに自転車先進国である欧州などでは軽さが自転車購入の重要なポイント。近藤社長は「構造などを見直して軽量化を徹底する。国内での拡販はもちろん、本場・欧州でも販売したい」と夢を膨らませる。