製造/関東 「ハイビジョン立体視装置を用いた高機能次世代手術顕微鏡の事業化」

最新技術との融合

 医療用顕微鏡は脳外科・眼科などの外科手術に欠かせない医療機器となっている。人命を扱う機器だけに、メーカー側も機能改善に積極的に取り組んできた。

 従来の顕微鏡は手術者が立体映像を見ながら施術できるのに対し、助手は距離感がつかみにくい2次元の映像しか見られない。そのため手術者と情報を共有できず、指示通りに適切な処置ができないケースもあるという。

 このような現場の声に応えるため、三鷹光器は新連携によるハイビジョン映像を使った手術用顕微鏡の開発計画を立ち上げた。連携事業は医療用顕微鏡の開発・販売で30年の実績を持つ三鷹光器をコア企業に、NHKエンジニアリングサービスが開発した高精細「ハイビジョン立体視ビデオ顕微鏡システム」の技術を採用する。

 連携先のエルグベンチャーズ(東京都目黒区)は、同システムのカラー回路設計技術を利用して、血液の色を忠実に再現するモニターの開発に成功。ハイビジョン技術との融合で患者の情報を手術者の顕微鏡に明示したり、医療情報の双方向通信による遠隔治療への発展も期待できる。

 顕微鏡とハイビジョンを組み合わせた世界でも例のない製品開発で、医療技術向上の一助を担うことが連携事業の最大の目的だ。

三鷹光器(株)


会社名
役割分担
■コア企業
三鷹光器(株)
顕微鏡ノウハウ・製造・統括管理
(株)エルグベンチャーズハイビジョン小型液晶モニター回路・筐体の製作



三鷹光器(株) 中村勝重社長<br>「医療技術向上の一助を担うことが連携事業の最大の目的です。インフォームド・コンセントの観点からも、社会的意義のある製品に仕上がりました」

三鷹光器(株) 中村勝重社長
「医療技術向上の一助を担うことが連携事業の最大の目的です。インフォームド・コンセントの観点からも、社会的意義のある製品に仕上がりました」

【社会的意義のある製品開発】 

 従来の手術者用のメーンの顕微鏡は、2本のズームレンズで双眼の接眼鏡を通して立体映像が見られる仕組みになっている。ところが右側面に付いている手術助手用の顕微鏡では、立体視ができないという欠点があった。また脳神経外科手術では顕微鏡を大きく動かすケースが多く、「手術者鏡と助手鏡が一体化している構造は扱いにくい」と医師からの改善要求が出ていた。

 中村勝重社長は「これらの問題を解決する顕微鏡を作ることが長年の夢だった」と開発の原点を披露する。

 そしてこれこそが世界に先がけて完成させた画期的な製品、つまり単カメラハイビジョン立体視システム(世界特許)を使った三鷹光器の顕微鏡技術とエルグベンチャーズのハイビジョン映像技術の組み合わせによる高機能次世代手術顕微鏡だ。


 連携事業で開発した顕微鏡は、横にいる助手の接眼鏡にも手術者のものと同じように2本のズームレンズを取り付けた。その左右の映像を1台のハイビジョンカメラで撮影し、観察は6インチの小型液晶モニターに立体視ビューアを接続して行う。

 そして液晶モニターは顕微鏡本体と独立してスタンドに取り付けるので、助手は顕微鏡の動きに関係なく楽な姿勢を保ちながら、立体視で手術の補助が可能な構造にした。


 これにより正確で短時間の手術が可能になり、患者の負担を軽減できる。また患者の家族は手術の経過をハイビジョン立体映像で確認でき、「インフォームド・コンセント(医師の説明と患者の同意)の観点からも、社会的意義のある製品に仕上がった」(中村社長)と自信を深める。


【新連携活性化のため】

 当初の計画通りに製品が完成した一方で、課題も顕在化してきた。新連携事業は一度認定されると、2回目以降の申請は却下されるケースが多いという。開発段階で新たなアイデアが浮かんでも、申請書に記載された以外の項目は行えない。

 新連携事業の認知度を高め活発化するためには、一つでも多くの成功事例を創出させることが求められる。そのためにも「申請回数にかかわらず、事業内容を重視して認定を出してほしい」(同)と提言する。

 販売面での課題も大きい。連携により製品が完成すれば、量産体制の整備は避けられないが、中小企業にとって資金面からも容易ではない。販売という次のステップに進むための支援メニュー構築が必要になる。海外で研究成果を発表すれば、投資ファンドなどから資金調達は容易にできる。海外に生産工場を建設しても「日本経済の底上げにはつながらないのでは」(同)という。

 異業種連携が実現したことで、市場の幅が広がることに期待する。エルグベンチャーズが持つ放送関連の市場に向けてのハイビジョンモニターの販売も、2社が連携して行うことを確認した。医療機器と映像機器−。全く異なる分野をうまく結合させ、完成度の高い製品に仕上げた。こうした「未知なる連携」も新連携の魅力といえる。