環境/九州 「消石灰と硫黄を原料とした重金属不溶化溶剤及び処理システムの事業化」

有害な重金属を再資源化

 サガシキ印刷をコア企業とする連携体の事業は、鉛や六価クロムなどの有害な重金属を安定化し、再資源化することで循環型社会に貢献することだ。

 重金属などの有害物質は、豊かな社会を築くために推し進めた技術開発の副産物といえる。その副産物の処理は、現代社会が解決しなければならない重要課題になっており、同事業にかかる期待は大きい。

 事業の中心になるのは多硫化カルシウムなどの多硫化物が主成分の重金属安定剤「ND(検出限界値未満)ロック液」。これらND製品やプラントの技術開発は、環境アネトスが担当する。製造はサガシキ印刷の全額出資子会社であるサガシキ環境開発が手掛ける。

 このNDロック液と、富士建が持つ地盤改良技術を組み合わせて、有害な重金属を安定化する高効率施工技術を確立することが目的。そのなかでサガシキ印刷は、紙器・段ボールメーカーとしての販売網や有害物質処理ノウハウを提供し、全体のマネジメントを担っている。

 資源化の対象になるのは、自治体や民間の焼却場で発生する特別管理廃棄物である飛灰や、電気炉で発生するダスト、メッキ工場のメッキ廃液、汚染土壌など。06年7月に事業計画が新連携事業に認定され、5年後までに6億円の売り上げを見込んでいる。

サガシキ印刷(株)


会社名
役割分担
■コア企業
サガシキ印刷(株)
販売チャネル、有害物質処理ノウハウ、マネジメント
(株)環境アネトスND製品開発、利用プラント技術、多目的利用技術開発
(株)サガシキ環境開発産業廃棄物事業ノウハウ、製造・品質管理
(株)富士建土壌施工ノウハウ、ND技術付加コンクリート施工技術開発
佐賀県中小企業団体中央会経営ノウハウ



サガシキ印刷(株) 枝吉宣輝社長<br>「多硫化物など自然界に存在する物質が主成分の「NDロック液」を使って、これまでにない汚染土壌の処理システムを開発・提供していきたいと思います」

サガシキ印刷(株) 枝吉宣輝社長
「多硫化物など自然界に存在する物質が主成分の「NDロック液」を使って、これまでにない汚染土壌の処理システムを開発・提供していきたいと思います」

【焼却場と汚染土壌で実地試験】

 連携のきっかけは、産業廃棄物事業をしているサガシキ環境開発が、環境アネトスから動植物性残さの中間処理について技術指導を受けていたことに始まる。環境アネトスがNDロック液を完成したと知り、佐賀県中小企業団体中央会に事業化について相談したところ、新連携への取り組みの支援を受けた。

 NDロック液は消石灰と硫黄が原料。鉛などの重金属を不溶化することで安定化させるため、処理物の再資源化が図れるという特徴がある。例えば焼却場で発生する焼却灰は、安定化した後に建材の材料として再資源化することなどが想定できる。もちろん資源化してリサイクルするための厳しい環境基準値を、同事業の取り組みは満たしている。

 コア企業のサガシキ印刷は新連携の認定にあたり、連携事業を担当する環境事業部を設立した。「(連携事業の)技術が確立してきている。現在は実績づくりに努めているところ」(サガシキ印刷・嘉村善孝管理本部長)。

 実際に、自治体の協力を得て焼却場での試験も行っており「数値も良いため、この実績を使って営業していく」(嘉村氏)と意気込んでいる。また焼却場のほかに、特定有害物質を使っていた工場跡地などの汚染土壌についても、実地試験を進めていく。


【アスベスト対策にも効果】

 連携事業の取り組みは有害な重金属を安定化し、資源として活用する技術の構築だが、NDロック液の機能はそれだけにとどまらない。健康被害で社会問題になったアスベスト(石綿)の場合、組織全体を安定化して繊維の飛散を防止する効果を発揮する。

 さらにNDロック液を使うことで、アスベストを無害化改質することにも成功している。07年3月にNDロック液は、建築基準法に基づく指定建築材料として国土交通大臣の認定を取得した。アスベストの飛散を防ぐ溶剤としては全国で7番目、九州では初の認定だった。

 「アスベストは負の遺産。まだまだ隠れているのではないか」(嘉村氏)とアスベスト処理の必要性を訴えるとともに、その市場性は大きいとみている。中堅建設会社からの引き合いもきているほか、欧州では国際特許を出願している。技術の確立が進み、これから営業活動に力を注ぐ段階に移ってきたところだ。

 重金属やアスベストを無害化し、資源として活用することは、環境課題を解決するという社会の要請に応えるものだ。“21世紀は環境の世紀”とも言われている。「あちこちに重金属やアスベストを無害化できる装置が広がればよい」(同)と連携事業の推進で、環境課題解決への貢献と市場の拡大を図る。