環境/九州 「有害物質ガス等を処理するゼオライトを基材とした吸着反応ハニカムの製造・販売」

独自の吸着技術でVOCを無害化

 日本の住文化である畳にはアセトアルデヒドなど、揮発性有機化合物(VOC)を吸着する力があると言われる。この吸着反応を利用し、有害物質ガスなどの無害化装置を製造するのが大学発ベンチャーの吸着技術工業だ。

 連携体は吸着ハニカム開発の特許技術をもつ同社と、ゼオライトハニカム吸着剤を大量生産する聖栄陶器(長崎県川棚町)で構成する。

 06年の大気汚染防止法の改正にともない、VOCガスの排出規制が強化されている。両者がつくる吸着材は空気中のVOCをシリカナノ粒子を使ったハニカム構造部でオゾン(O3)と反応させる。するとVOCは二酸化炭素(CO2)や水などになって排出される。

 適用VOCはエチレンやホルムアルデヒド、酢酸エチルなど幅広い。半導体工場や印刷工場など多分野で需要を見込み、ハニカムを使ったVOC処理装置製造につなげる。長崎県産業振興財団のバックアップのもと、長崎大学工学部が吸着材の機能評価をする。

 また長崎県工業技術センターと共同で海水浄化装置の研究も進め、吸着技術でアンモニアを処理する。実証実験では「500ℓの水槽にマダイを5匹入れ、7カ月間、水を換えずに育てることができた」(泉社長)という。

 バクテリアを使った浄化方法もあるが「安定的な効果が見込めない」(同)ため、主に活魚輸送車やスーパーマーケット、料理店向け水槽の需要を見込む。

吸着技術工業(株)


会社名
役割分担
■コア企業
吸着技術工業(株)
技術開発・製造、販売
聖栄陶器(有)ゼオライト製造



吸着工業(株) 泉 順社長<br>「世の中にないものを作り出すこと、しかもそれは性能、コスト面で一番優れた製品であることが重要です」

吸着工業(株) 泉 順社長
「世の中にないものを作り出すこと、しかもそれは性能、コスト面で一番優れた製品であることが重要です」

【吸着技術の適用分野は無限大にある】

 吸着工業は自社製品の商品化を進めており印刷工場などで需要を見込み「PSA−VOC回収装置」の生産を始めた。同装置は気化したVOCを吸着した後、真空ポンプで回収して低温で液化し再利用する。

 印刷所は塗料の溶剤に大量の酢酸エチルを使う。回収率は80%以上のため環境にやさしくコスト削減につながるという。従来、排ガスを無害化するには熱源や燃焼装置が使われており、コスト高や環境面で問題があった。

 同社は06年1月に生まれたばかりの若い会社だが、泉社長の吸着技術に関する研究は長い。大学卒業後に就職したのは三菱重工業の長崎研究所。研究は大型プラントの開発が中心で「小物は手掛けていなかった」(泉社長)。

 だが、そのころから「VOCの分解装置を作ったら売れると思っていた」(同)と笑みを浮かべる。退職後も千葉県の研究機関で研究を続け、現在は九州大学の客員教授の肩書をもつ。

 今後、泉社長が拡大市場と位置づけるのは家畜のし尿などを活用したバイオマス事業だ。

 07年度から鹿児島県垂水市や新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などと共同で同市の養豚場に精製プラントを設置。吸着技術工業のアンモニアなどの吸着剤を使い、豚ふんからメタンガスを作っている。ガスは近隣地にある道の駅の温泉やレストランの燃料として使っている。

 また北海道の牧場でも精製したメタンガスを温室やトラクターの燃料に使用している。泉社長は「精製したガスは純度が高く1立方メートル約70円で販売できる」という。同社の吸着技術がエネルギーの地産地消を可能にする。

 08年3月をめどにシルバー精工と共同で遊技場向けに、たばこの煙に特化した脱臭装置「エデオ」を売り出す。発売に向け、パチンコ店で試験運用を始めた。


【大事なことは世の中にないモノを作ること】

 吸着技術工業の07年5月期の売上高は約8,500万円。08年5月期の売り上げは約4億円と飛躍的に伸びると予測する。吸着技術を応用した製品群が国内大手半導体メーカーのほか、海外企業からの引き合いが強いためだ。

 泉社長は「わが社のような中小企業はコストが低いことに加え、性能も安さも他社と比べて一番良くないとダメ」と熱っぽく語る。農作物の劣化要因になるエチレンの除去装置販売も本格化するなど研究の手は止まらない。

 研究畑の長い泉社長だが「市場にない、世の中にないモノを作るのが売れる条件」と、商売への貪欲さをにじみ出す。