製造/関東 「機械システム異常診断機の事業化」

工具の摩耗状況をリアルタイムに把握

 以前から共同研究などで交流がある蔵前産業と数理設計研究所が連携体を構成し、機械システム異常診断機の事業化を目指す。産学官連携の経験が豊富な蔵前産業がコアを務める。

 連携体を構成するのはこれら2社のみ。他の新連携事例と比較すると小さなグループだ。しかし機械設計・製造にたけた蔵前産業とソフトウェア開発・製造を専門とする数理設計研究所が手を組むことで互いの長所を生かし、短所を補完する体制を築いている。

 前橋工科大学、群馬工業高等専門学校、公設試験場の群馬産業技術センターなどが技術面から連携体の脇を固める。さらに計測機器メーカーの小野測器が販売を後押しする。

 開発するのは切削加工機械の工具が壊れた際に警報を発する工具破損検出機能と、作業中の工具の交換時期を教えてくれる予知診断機能が付いた異常診断装置だ。

 これまでにも同様の装置は存在するが、2社は高精度かつリアルタイムの検知機能を強みに差別化を図る考えだ。

 工具の摩耗状態を常時監視することで、経験値などに頼っていた工具の適切な交換タイミングを予測することが可能になる。そのため工具破損による不良発生、機械の損傷リスクを低減することができる。

 2社は02年−03年度に産官学による国の共同研究事業で「機械システム異常診断機」の開発を試みた。同連携体の事業はこの時に開発した技術を製品化するものだ。

蔵前産業(株)


会社名
役割分担
■コア企業
蔵前産業(株)
設計・開発(装置設計・製造、事業統括、運営)
(株)数理設計研究所制御通信回路製作(ソフトウェア開発・製造、性能評価)



蔵前産業(株) 橋本勝社長<br>「群馬県やサブマネージャーからの細かなフォローのお陰で計画に対する自信を深めることができました」

蔵前産業(株) 橋本勝社長
「群馬県やサブマネージャーからの細かなフォローのお陰で計画に対する自信を深めることができました」

【低価格化で需要を開拓】

 「自分たちが使いたいモノを形にしたい」と蔵前産業の橋本勝社長は繰り返し口にする。自社が抱える課題をはじめ、多くの企業が共通して持つ製造現場の悩みを解決する装置開発が「新連携」挑戦の原点だ。

 「工作機械を使用する際に切削工具の交換タイミングを誤れば不良品を出してしまうばかりか、高価な機械を傷めてしまうこともある」と橋本社長は問題点を指摘する。

 そこで加工機に取り付けることで切削工具の摩耗状態をリアルタイムに把握する工具摩耗検出機能、また万が一破損した場合には異常を知らせてくれる工具破損検出機能を搭載した装置開発に乗り出した。

 通常の材料を加工する工作機械向けに限らず、工具の消耗が早いうえに破損の際にはより大きな損害が発生する難削材向けの加工機にも対応する装置を目指す。

 装置開発にあたり、機械販売に人手を多くかけられないという中小企業ならでは問題を解消する工夫を織り込もうとしている。それは高度な機能を持ちながらも、簡単に操作できる装置であるということだ。

 経営資源の限られた中小企業にはより効率的な営業が要求される。装置を納入した際に客先で何日にもわたり操作指導、研修をするには負担が大きい。

 「一度の研修で使い方を習得できる装置」(橋本勝社長)であれば、客先で長時間拘束されることもなく、負担を軽減できるという考えだ。

 現在の技術レベルでは本体価格は300万円程度になるという。これは当初見込んでいた価格ではあるが、大規模工場などで数百台の切削加工機すべてに装置を取り付けるには、300万円は高価過ぎると判断した。そこで新たに設定した本体価格は100万円。これを目標に開発に注力する構えだ。


【お墨付きに自信】

 新連携に認定されたのは07年2月。10月末時点で2件の特許を取得するなど順調な滑り出しを見せた。ところが新連携認定までの準備期間に約1年を費やすなど、事務手続きには忍耐を要した。

 「予想以上に時間がかかることを知っておかなければ、途中であきらめてしまうかも知れない」と橋本社長は新連携に挑む経営者に助言する。

 それでも認定にたどり着いたのは、群馬県やサブマネジャーの細かなフォローがあったからだという。むしろ1年かけて関係機関に「吟味」されたことで自分たちの計画に対する自信を深める結果となったようだ。

 「商売として成り立たなければ認定されない。認定されたということは国かお墨付きをもらったということ」(橋本社長)と笑みを浮かべる。

 研究開発は順調に進み、第3号試作機を完成させた。これを10台生産し、自社と群馬県内最大規模のメーカーで評価を行う予定だ。また現場での稼働によって同時にデータ収集を行い、精度向上に役立てようとしている。