製造/四国 「廃棄煮汁濃縮処理装置および同装置を活用したペットフードの開発・製造販売」

煮汁からペットフードを生産

 高知県のブランド「宗田カツオ商品」は、これまで生産時の煮汁を廃棄処分していた。これを環境整備機器メーカーの兼松エンジニアリングと、「宗田カツオ」を手掛ける土佐食が連携して、濃縮煮汁素材を活用した猫や犬向けのペットフードという有価物に変えた。煮汁を低温、減圧下でかき混ぜることなく濃縮して栄養豊富なペットフードを製造できるのが特徴だ。

 コア企業の兼松エンジニアリングは、マイクロ波を利用した真空乾燥型の濃縮装置の開発・製造・販売を担当。装置は電子レンジの原理を応用し、濃縮する煮汁の原液をタンクに入れ、マイクロ波で直接加熱することで原液から水分を蒸発させ濃縮する仕組みだ。これにより酸化を防ぎ「宗田カツオ」のうまみを凝縮した液体状のペットフード素材ができあがる。

 兼松エンジニアリングは土佐食での利用を機に従来の環境整備機器分野以外の新規分野にも展開したい考え。当初は地元の高知県内の水産加工業者や食品加工業者向けに実績を重ねながら徐々に全国販売したいという。主に動植物の肥料や飼料用が中心になるが、評価試験を続け、将来は一般食品向けも視野に入れている。

 一方、土佐食は煮汁を廃棄処分するコストの低減を兼ねた煮汁の有効利用を図るため、濃縮液を製品化し、他社にないオリジナル商品を投入してペットフードの拡販を図っていく。

 高知県は他県と同様に景気回復の伸びが緩やかで、地域格差の影響を受けているのが実情。そこで地場産業と製造業の連携強化や異業種交流によって活路を見いだしていこうとしている。このようなケースの新連携を成功へと導くことが、県産業浮揚発展につながると期待されている。

兼松エンジニアリング(株)


会社名
役割分担
■コア企業
兼松エンジニアリング(株)
マイクロ波濃縮装置の開発・製造・販売
土佐食(株)ペットフード等の開発・製造・販売



兼松エンジニアリング(株)<br>山口 隆士社長<br>「今回の取り組みを契機に、地域や環境に貢献する新規分野への進出、開拓を加速していきたいです」

兼松エンジニアリング(株)
山口 隆士社長
「今回の取り組みを契機に、地域や環境に貢献する新規分野への進出、開拓を加速していきたいです」

【地域資源の活用と新事業への要求が一致】

 兼松エンジニアリングと土佐食の橋渡し役をしたのが高知県工業技術センター。兼松エンジニアリングはセンターの生産技術部と環境整備機器の汚泥乾燥処理装置などを研究、一方、土佐食はセンターの食品開発部の協力を得て宗田カツオを加工した「姫かつお」を開発し、製造・販売していた。

 両社を結びつけたのは、土佐食が廃棄処分する宗田カツオ煮汁を再利用したいというニーズと、兼松エンジニアリングが研究中の装置の用途がマッチングしたこと。

 兼松エンジニアリングは環境整備機器の中でもとくに汚泥処理に注力。粉粒体や液体など産業廃棄物の回収運搬や道路の側溝清掃、建設現場の汚泥吸引車などの製造・販売を手掛けている。これまで同社はこうした汚泥処理分野に特化してきたが「食品分野の応用は思いもよらなかった」(山中義也兼松エンジニアリング技術研究室課長)と、これを契機に新分野開拓にも意欲を見せている。

 一方、土佐食は89年に土佐清水市商工会議所を中心とした地域の特産品づくり事業(地域活性化推進協議会)に参加し、メジカ(宗田カツオ)の有効利用の協議を開始、その後同事業化を進めるために93年に第3セクターとして設立した。

 同社は四国最南端の土佐清水市で宗田カツオの加工食品を製造、素材を利用したペットフード事業にも参入し、近年は全売り上げの約60%を同事業が占めている。オリジナル商品の市場投入による事業拡大にも意欲的だ。


【高まる廃液処理ニーズに活路】

 連携の特徴は「新しいペットフード商品と真空乾燥型濃縮装置の開発という2つの出口(市場性)を持つ」(西利文・兼松エンジニアリング取締役開発本部長)ことにある。農林水産省の資料によると04年度のペットフード市場規模は流通量が約80万トンで今後も増加が見込まれている。

 開発した商品は土佐食が製造し、ペットフード食品会社を通じて全国の量販店やペットショップなどで販売する予定。「宗田カツオの濃縮煮汁にはペットの食欲向上効果や有用成分であるタウリンやアルギニン、メチオニンなどが多く含まれ、猫や犬の栄養補給食品として期待できる」(平林靖宏・土佐食社長)とみている。

 宗田カツオはうどんやそばのだしに使用され、土佐清水市は全国生産量の約8割を占める。これに伴い煮汁は年間約8,000トンが廃棄処分されている。宗田カツオの煮汁以外にも、和歌山県の梅干し工場の梅酢製造過程では年間約1万6,000トンの廃液が出る。鳥取県の業者でも、ズワイガニの煮汁を濃縮濾過しただし汁を廃棄するなど全国で大量の食品廃液が処理されている。

 真空乾燥型濃縮装置はこれら廃液の有効利用にもつながると考えられ、装置に対するニーズは高まるばかりだ。