加工/近畿 「次世代型航空機部品供給ネットワーク事業」

航空機分野に参入

 新分野進出に意欲的な中小企業5社が共同で、次世代型航空機市場への参入に取り組む。高い技術水準が求められる航空機業界で通用する部品の開発を通じて、社会貢献を目指す。同時に物流面でも工夫し、新しい仕組みを取り入れる。

 事業は田中が持つチタン合金部品の加工技術をベースにする。三陽鉄工の超精密加工技術、中川鉄工のNC加工技術を利用して部品を製造。エスディーシーの持つプラズマ浸炭技術による加工を行う。さらに由良産商の物流ネットワークを活用し、部品を供給する。

 同時に次世代型航空機部品供給ネットワークとして会員を募集。シンクタンク的な役割を果たして、連携した5社以外の中小企業が取り組もうとしている航空機関連事業を支援する。すでに会員数は17社に達しており、大学や航空機メーカーなどの賛助会員も増加中。

 同ネットワークでは航空機産業研究会、物流研究会、セキュリティー研究会の三つの研究会を立ち上げ、それぞれについて調査研究活動を行っている。こうした研究会の成果を共有し、航空機部品の開発や供給の仕組みをつくり上げる。

(株)田中


会社名
役割分担
■コア企業
(株)田中
プロジェクト統括
三陽鉄工(株)加工
中川鉄工(株)加工/製造
由良産商(株)物流ネットワーク
(株)エスディーシー加工



(株)田中<br>田中弘一会長

(株)田中
田中弘一会長

【チタン合金ではばたく】

 次世代型航空機部品供給ネットワーク事業は、田中が長年かけて培ってきた米ボーイングとの関係からスタートした。同社はネジを設計し、製造を外注しており、チタン合金のボルトとプラズマ浸炭装置を武器にボーイングに売り込んできた。

 プラズマ浸炭装置は金属チタンの表面に炭素を入れ込み、硬度を高める装置で、同社の子会社であるエスディーシーが独自に開発した。プラズマ発生装置や真空容器など世界のトップクラスの製品を組み合わせて仕上げた。

 浸炭処理し、表面の硬度が上がったボルトはナットの緩みがなくなる。一般に定められた力でナットを締め付けても、実際にはその数値に達していないことが多い。ところが表面が硬いと定めた力通りの締め付けが行える。

 航空機は飛行中、常に振動にさらされる。ボルトとナットは振動によって緩むことがある。このため航空会社は常に緩みを検査しなくてはならない。プラズマ浸炭処理したチタンボルトなら、検査の回数を減らすことができる。
この特性をアピールし、ボーイングと交渉を続けた結果、採用まであと一歩のところまできた。このため以前から付き合いがあり、製造面で高い技術力を持つ三陽鉄工や中川鉄工と連携。さらに田中の子会社でプラズマ浸炭装置を製造しているエスディーシーと、ネジの商社である由良産商が加わった。

 5社には連携にあたって約束ごとがある。それは開発の内容や仕様などの情報を外部に漏らさないこと。航空機メーカーは情報の管理を強く求める傾向があり、これに対応するためだ。


【航空機部品の工場団地も】

同グループは航空機産業への参入を目指す中小企業に呼びかけて「次世代型航空機部品供給ネットワーク」を結成した。この中にセキュリティー研究会を設置し、情報のやりとりの安全性を高める研究に着手した。セキュリティーのほかにも、航空機産業と物流の二つの研究会を設置。元航空機メーカーの幹部をオブザーバーに招くなど、高いレベルの調査に取り組んでいる。

 同グループのリーダーである田中の田中弘一会長は「新連携」に認定されたことで「信頼度が高まり、資金調達などが楽になる」という。当面、大きな投資計画はないが、将来は専用の工場を建て、そこに中小企業が共同で入居するという構想がある。

 1カ所で製品をつくれば、運送コストが削減できるほか、図面の漏洩(ろうえい)防止などセキュリティー面でも安全性が高まる。すでに「自治体などに構想を説明しており、近い将来、航空機部品の工場団地が誕生するかもしれない」(田中会長)と期待を膨らませる。