製造/関東 「自動車内装材用超音波カッターの事業化」

従来型カッターの課題を克服

 超音波で刃物を振動させて自動車の内装材として使われる繊維強化プラスチック(FRP)などを切断する「超音波カッター」を開発し、部品メーカーへの拡販を目指す。

 現在、自動車内装材の切断加工にはウオータートリムを用いることが多い。しかし、この方法では水を送り出すポンプを用いるために、動力や騒音が大きい。また排水や切りくずが発生するなどの問題点が存在している。

 新連携で開発を進めるのは、(1)低コスト、(2)省スペースに加え、(3)シャープな切断面と切りくずを発生させない超音波トリム装置だ。高性能超音波カッターを多関節ロボットに搭載し、動力を従来型の10分の1程度に抑えることなどでランニングコストを大幅に低減するほか、切断に水を使わないために排水が一切出ないなど、ウオータートリムの課題を多く克服する。またCO2排出量も少なく、環境面にも配慮した設計だ。

 日本省力機械がコア企業として、多関節ロボットの開発・製造、刃物の高寿命化と切断性能の総合評価を担当。連携中小企業のソノテックがカッター用超音波発信機の製造など行い、牧野オートメーション研究所がロボット動作ソフトの開発などを受け持つ。また千葉工業大学、群馬県産業支援機構、北関東産官学研究会などが、ソフト開発や販路、事業化などでの支援を行う。

 自動車内装部品用カッターの市場規模は、約900台、約530億円程度。そのうち10%の需要を見込んでいる。すでに大手自動車部品メーカーと取引を始めている。

日本省力機械(株)


会社名
役割分担
■コア企業
日本省力機械(株)
多関節ロボット製作(超音波トリムシステム)
(株)ソノテック超音波発信機の製造
牧野オートメーション研究所ロボット動作ソフトウェア開発



日本省力機械(株) 田中章夫社長<br>「厚手の各種素材を対象とする超音波トリム加工機は、従来工法に比べ圧倒的に市場性が高いものです。将来は自動車産業以外への進出も図りたいですね」

日本省力機械(株) 田中章夫社長
「厚手の各種素材を対象とする超音波トリム加工機は、従来工法に比べ圧倒的に市場性が高いものです。将来は自動車産業以外への進出も図りたいですね」

【厚手軟質素材への超音波カッターの応用】

 日本省力機械(群馬県伊勢崎市)の田中章夫社長が新連携に応募した動機は、高付加価値な自社製品開発に挑戦することだった。そこで、それまでバリ取り機に用いていた超音波トリムシステムを自動車内装材の切断加工に応用したいと考えた。

 従来から、紙、布などの薄い材料を超音波で切断する装置は存在したが、FRPやカーペットなどの厚手の材料や複雑な三次元曲面を持つ特殊な繊維を含んだような軟質な素材を対象とする超音波カッターは見あたらなかったためだ。

 中小機構関東新連携支援地域戦略会議事務局の風間善樹プロジェクトマネージャー(PM)と小松原健夫サブマネージャー(SM)が支援を担当した。
 風間PMは超音波カッターを検証し、「厚手な各種内装材を、複雑な形状に実にうまく切断できる」のを確かめ、「日本国内だけでなく世界の自動車内装材加工の現場で大いに役に立ち、新連携にふさわしい事業」と判断した。

 連携体は日本省力機械をコア企業に、これまでにも親交のあった、ソノテック、牧野オートメーション研究所の3社で構成した。さらに小松原SMの働きかけで、千葉工業大学の金澤教授(切断理論)から協力を得た。販売、事業化に関しては、群馬県内にある地域の支援機関が協力している。


【最高の技術で2年目までに売上高約2億円を達成】

 計画を推進するにあたり、政府系、民間金融機関の融資制度を利用している。これまでにも同社は政府系金融機関の低利融資制度を適用された実績があるが、新連携支援制度では企業の返済能力に新連携プロジェクトの評価を加味した優遇金利融資で、約1000万円の融資を受けた。

 また事業化・市場化を支援する補助金制度を利用した。これは関東経済産業局が窓口となり、製品開発にかかわる実験、試作、連携体内の規定作成などの経費を補助するものだ。

 製品開発の一方で、すでに複数の大手自動車部品メーカーに装置を販売している。初年度(05年9月−06年3月)から徐々に売り上げを伸ばし、2年度目(06年4月−07年3月)は1億円を超える売上となり、次年度も好調に受注が確定、幸先の良い滑り出しを果たしている。「(超音波カッターで)将来的には自動車産業以外にも進出したい」(田中社長)と意気込む。

 日本省力機械は新連携に参画した結果、営業施策から財務までの幅広い分野で見直しを行う必要性が生じ、そのことで「企業としてのレベルが引き上がったように思う」と田中社長はいう。そして「多くの中小企業にとって、オリジナルブランドを持つメーカーになることは大きな夢。新連携をきっかけに、そうした夢の実現に歩みを進めることができた」(同社長)と考えている。