生活/沖縄 「琉球ガラス漆器の開発・販売」

2つの伝統工芸が手を組み 新しい文化を−

 漆工は従業員10名と小規模ながら、琉球漆塗りの新分野開拓を強みとする。それを可能にするのが堆錦(ついきん)、沈金(ちんきん)、螺鈿(らでん)といった琉球王朝時代から伝わる漆塗りの伝統技法である。

 前身は先代の故上原辰次さんらが終戦直後に設立した漆工芸会社「紅房(べんぼう)」。沖縄に駐留する米国の軍人・軍属を相手に漆製品を製造・販売した。漆工は現社長の上原昭男さんが紅房の事業や技術を引き継ぎ、1995年(平成7年)に設立した。

 新連携事業は沖縄だけに伝わる堆錦を琉球ガラスに応用したところが新しい。堆錦は漆を塗り重ねる中国の堆朱がルーツとされ、1715年に琉球王府の比嘉乗昌が中国で学び、加飾法を発明したのが事始め。顔料と漆を練り合わせ餅状にしたものを板の上で薄く伸ばし、模様に切り抜き、器物に張り付ける。そのうえで細線を彫ったり着色したりして仕上げる。独特の重厚感が持ち味だ。

 筋金入りの漆職人だった先代とは対照的に、上原昭男さんは大学卒業後、米民生府での勤務を経て、漆工芸の世界に入った。「職人ではないため、職人が考えそうもないことをやろうと思った」(上原さん)。その言葉どおり、漆塗りを手がけた製品はボールペン、万年筆、海外ブランドとの提携によるペンダントヘッドなど多岐にわたる。

 「職人から見れば邪道」(上原さん)とされる分野にあえて挑戦する。その延長線上で琉球ガラスとのコラボレーションも実現した。

(資)漆工


会社名
役割分担
■コア企業
(資)漆工
漆職人の育成、漆塗りの新分野開拓、複合技術の実用新案、ブランドの商標登録
(資)奥原硝子製造所現代の名工による琉球ガラスの製作、新技術開発
(株)プラザハウスデザイン支援、商品企画・プロモーション支援、海外ブランドとのコーディネート
玉川漆器(株)マーケット情報の提供、販路開拓支援



(資)漆工 上原昭男社長<br>「職人ではないため、職人が考えないことをやろうと思いました。ボールペンや万年筆など、その延長で琉球ガラスとのコラボレーションも実現しました」

(資)漆工 上原昭男社長
「職人ではないため、職人が考えないことをやろうと思いました。ボールペンや万年筆など、その延長で琉球ガラスとのコラボレーションも実現しました」

【漆工芸の将来に対する不安が連携へ動かす】

 7月初旬、都内の百貨店で「琉球ガラス・漆器展」が催された。展示品は食器や花瓶、一輪挿し、グラス、小物入れなど約50点。廃瓶リサイクルにより生まれた琉球ガラスの器物に、朱色や銀色の琉球漆で花柄や幾何学模様を施してある。来場者は中高年の女性や夫婦が多く、食器や花瓶が関心を集めた。

 琉球ガラスの親しみやすさと、琉球漆が放つ重厚感の奇妙な取り合わせ。琉球漆を纏った琉球ガラスは、どこか西欧風の趣を漂わす。社長の上原昭男さんは「100%沖縄県産品で手作りというところが、評価をいただけたのでしょう。売れ筋商品を絞り込むことができる」と予想以上の手応えを感じている。

 新連携事業は漆工芸の将来に対する不安から始まった。「世の中、洋風化や和洋折衷化がどんどん進んでいるのに、漆製品は和風ばかり」(上原さん)。祝い事や人事異動が少ない夏場は漆器の需要が減少するため、年間を通して売れる商品づくりも課題。沖縄にしかない堆錦の技法を何かと組み合わせられないか。

 上原さんがたどり着いた結論は、琉球ガラスとのコラボレーションだった。

 上原さんが加盟する那覇市伝統工芸事業協同組合連合会には、気心の知れた仲間がいる。奥原硝子製造所社長の桃原正男さんもそのひとりだ。琉球ガラスの伝統を受け継ぐ現代の名工である。沖縄の地域ブランドを強烈に打ち出すには、両者の組み合わせしかない、と上原さんは考えた。

 そこで取り組んだのが工業用ボンドに負けない漆の接着力を利用したガラスとの接着強度の維持研究。ガラスの表面を顕微鏡で100倍に拡大してみると、微細な孔がたくさんあいている。その孔に天然漆の樹液をしみ込ませ、完全に乾燥させれば、強度を維持できるのではないか。こうしてワインカップなどの試作品づくりにかかり、接着から5年が経過しても、はがれないことが実証された。


【チームワークと納期をどう維持するか】

 那覇商工会議所に相談したところ、新連携事業を紹介され、構想は具体化の方向へ動きだす。中小企業新事業活動促進法に基づき、平成17年度新連携事業の認定を受け、平成18年2月に実用新案を取得する。

 上原さんが連携事業を成功に導くうえで重視するのは納期。「当たり前のようだが、パートナーは決められた納期を厳守すること。得意先から飛び込みの仕事が入ったときがピンチ。そっちを優先すると、他のパートナーの収益計画に狂いが生じ、チームワークはたちまち崩れてしまう」(上原さん)。

 事業終了後に補助金を支給する新連携制度にも課題は残っている。零細企業では、事業開始後1年間は厳しい資金繰りを余儀なくされる。「事業の途中で補助金が出れば、資金力に余裕ができ、チームワークを維持しやすくなる」。上原さんの実体験からにじみ出た言葉だ。