加工/北海道 「フッ化ピッチを用いた超撥水性容射皮膜製品の開発・販売」

構造物への雪や氷の付着を防止

 フッ化ピッチをアルミニウムで巻いたワイヤ(線材)をガス炎で溶かしながら吹き付けて被膜を形成する溶射技術を確立し、構造物や列車などの表面処理を行う事業を展開する。形成した被膜は撥水性が極めて高く、しかも長期間その機能が保たれる特徴を持つ。

 雪や氷の影響を受けやすい北海道をはじめとする北国では、列車や車体、橋梁・鉄塔などの構造物への雪氷の付着がさまざまな障害の原因となることがあり、効果的・経済的な雪氷付着対策が求められている。現在は塗装によって雪氷付着の影響を軽減し、腐食などの悪影響を排除する処理が施されているケースが多いが、フッ化ピッチを用いた溶射処理による被膜加工は新たな市場を生み出す可能性を秘めている。

 すでに溶射に使うワイヤと溶射装置の開発、ワイヤの製造装置の開発にめどを付け、各種車両や構造物ごとに最適な施工条件を確立するためのデータ収集・分析、溶射施工方法のマニュアル作成を開始。一部ユーザーから受け入れた試験材料への加工テストなどを始めている。

(株)倉本鉄工所


会社名
役割分担
■コア企業
(株)倉本鉄工所
装置の設計/制作/ワイヤ開発/製造
北辰土建(株)各種実証試験
(株)宇佐美商会溶射施工法マニュアル化



(株)倉本鉄工所 倉本登社長<br>「超撥水性被膜加工に多数のサンプル出荷要請を受けました。雪氷付着の問題に効果的な解決方法を模索していた企業や自治体の数は予想以上でした」

(株)倉本鉄工所 倉本登社長
「超撥水性被膜加工に多数のサンプル出荷要請を受けました。雪氷付着の問題に効果的な解決方法を模索していた企業や自治体の数は予想以上でした」

【水滴が玉のようにはじけて転がる】

 北見市は北海道の東北部、オホーツクエリアの中ほどに位置し、タマネギなどの農業や観光などで地域経済の中核都市となっている。倉本鉄工所は、自ら「町のよろず鍛冶屋」と称して地域経済に貢献。それだけでなく北見市で開催されていたソーラーカーレースに積極的に参加するなど、北見地域の産業・経済活性化に多彩な役割を果たしてきた。新連携支援事業では、雪氷付着防止に役立つ技術を事業化しようと地域企業や大学などと共同作業を進めている。

 倉本鉄工所の主な事業内容は、製缶関係、機械プラント、鋼構造物の製造。タンクなど製缶事業の歴史は古く、防錆・防食技術や耐食対策のノウハウを蓄積してきた。溶射に関する知見もその一つだ。
 「水を乗せると、玉になってコロコロ転がるでしょう」−。倉本登社長は、溶射処理を施した金属試験片に水を落とし、優れた撥水(はっすい)性を目に見える形で示す。列車や橋脚、鉄塔などの構造物に付着する雪氷による防食作用に対し、これまでは塗装などで対処していた。だが、そもそも雪氷を付着させない表面処理ができれば万全だ。

 構造物や大型機械、金属部品の補修などにも用いられる金属溶射は、肉盛りの厚さなどを調整する加工ノウハウが不可欠だった。溶射に使う複数の金属をどう溶かし合わせるかも重要だ。倉本鉄工所が保有する溶射用複合ワイヤの開発・製造技術はこうしたノウハウの中から生まれた。北見工業大学が保有する超撥水性溶射被膜技術と連携したことで、今回の新事業への挑戦が始まった。


【用途は多彩、道外からも問い合わせ相次ぐ】

 同社の超撥水性被膜加工に対しては「すでに多数のサンプル出荷要請を受けた」(倉本社長)。加工対象物は、海洋構造物、船舶、航空機、ガスメーター、コンクリート製品、橋梁など多種多様。雪氷付着の問題に効果的な解決方法を模索していた企業や自治体は想像以上に多かった。道外からの問い合わせも少なくない。

 フッ化ピッチの溶射に使う金属複合ワイヤは、フッ化ピッチなどをアルミで巻き込んだ形状をしている。径は3ミリメートル程度。毎分15メートルの速度でワイヤをつくる装置も開発した。ワイヤを溶かしながら溶射加工を施すと、対象物の表面はアルミ溶射のなかにフッ化ピッチを散りばめた構造になる。撥水性能を評価する際に用いるθ(シータ)角は、「テフロン」が108度であるのに対し、アルミニウム/フッ化ピッチの場合は140度。これにより水滴が表面を転がるように弾ける。

 2005年秋までにサンプル出荷したテストピースは各地で曝露(ばくろ)試験を目的に越冬中。厳しい北の大地が雪解けを迎えるころには、正式な発注という形で北見に春を呼びこんでくることになりそうだ。