製造/九州 「画期的な陶土による軽量強化磁器の製造・販売」

製造ノウハウの蓄積図る

 渕野陶土は、軽量強化磁器の材料となる陶土製造の基本技術を佐賀県窯業技術センターと共同で開発している。その技術は、陶土に特殊な原料を配合することで、磁器の素地内部に5マイクロメートル以下の気孔を無数に生じさせる。従来の普通磁器に比べて約20%軽くできる。

 また、圧縮応力の原理を応用することで曲げに対する強さは約1・8倍に、衝撃に対する強さは約1・7倍になるという。この軽量強化磁器はまた、熱を伝えにくいため保温性が高い。温かい料理は温かいまま、冷たい料理は冷たいまま楽しむことができる。熱いものを入れても、器が手に持てるというメリットがある。

 そして成形やうわぐすり、焼成などについて独自の技術を持つ企業で構成した製造グループと、販売ルート・ノウハウを持つ陶磁器専門商社の山忠(コア企業)が集まってグループを組織した。使用する陶土は新開発のため、成形形状やうわぐすりにより適した製造条件のノウハウが豊富ではない。同グループはさまざまな形や柄の磁器の企画・開発を行いながら製造ノウハウの蓄積を図る。

(株)山忠


会社名
役割分担
■コア企業
(株)山忠
販売/マーケティング
(有)渕野陶土製土
(有)李荘窯業所焼成
(株)和山焼成
永尾生地生地
樋渡製型石膏型
三石生地(有)生地
(有)青巧社転写紙
長崎陶料(株)釉薬
(有)江口製陶所焼成
(有)APチャイナ販売/マーケティング



(株)山忠<br>山本幸三社長

(株)山忠
山本幸三社長

【軽量強化磁器用の陶土技術を生かして製品を開発・販売】

 陶磁器の材料である陶土のメーカー、渕野陶土は2001年、佐賀県窯業技術センターと共同で、軽量強化磁器用の陶土を製造する基本技術を開発した。売り込みの段階に入り「従来のやり方では価格交渉になってしまう」(渕野和弘社長)と、単に窯元に売り込む方法を取らなかった。陶土の特徴を生かして売れる最終製品をつくり、製品とともに陶土が売れる展開を目指した。

 そこで「売り手を巻き込んだグループをつくろう」(同)と成形、うわぐすり、焼成、販売の各段階の業者を組織化した。材料開発から販売戦略まで総合的に取り組むためだ。販売を担当する陶磁器商社の山忠がコア企業となった。売り方や販売ルート、売り込み先も、製品の特徴を生かした新しいものを目指している。

 有田焼業界は一般に、製造段階ごとに業者が細分化されている。そのため比較的規模の大きい企業や業界団体の取り組みを除けば、材料から販売戦略まで総合的に取り組むことは珍しい。

 同グループは九州経済産業局に「新連携計画」として認定される前、県が認定する支援事業に申請しようとしていた。しかし、佐賀県と長崎県の業者が交じっているため、まとめて支援事業を受けるのは難しかった。そこに「新連携計画」事業の話が舞い込んだ。同グループは「われわれのためにできた制度のようだ」(山本幸三山忠社長)と喜んだ。


【ブランド名は「fuccino」(フッチーノ)】

 軽量強化磁器用の陶土製造の基本技術は確立しており、その陶土を使って商品化した製品もある。しかし、まだ製品ごとに「試行錯誤の手探り状態」(同)で、さまざまな形状やうわぐすりに合ったノウハウが蓄積されているわけではない。同グループは製品を開発しながら、陶土以外の材料との相性や焼成温度などの製造条件、量産に適したライン設計などのノウハウの蓄積を図っている。

 開発に取り組む軽量強化磁器は航空機内や給食用、介護用を見込む。基本的に「fuccino(フッチーノ)」のブランド名を使う。また、この軽量強化磁器は熱を伝えにくいため、熱いものを入れても手に持ちやすい。一般的な強化磁器はアルミナを原料に使っているため、熱が伝わりやすいという。給食用では食器を手に持って食べるという食事作法を身に付けさせることに生かせる。航空機内用では外国の航空会社へも売り込んでいく考えだ。

 販売が軌道に乗り、さらに拡大が期待できれば、各業者は設備投資をする公算が大きい。「新連携計画」に認定されたことで資金調達がしやすくなるとみている。また、認定で業者や製品の信頼性のアップも期待する。5年目には年間4億円の売り上げを目指している。