製造/近畿 「『細菌・ウイルス瞬間加熱殺滅装置』の開発と事業化」

細菌数実質ゼロに

 北斗電子工業をコア企業とする新連携事業では、人の目には見えない空中に浮遊する病原菌などを250度−260度Cの高熱で瞬間加熱殺滅する装置の開発、事業化を目指している。細菌やウイルスによる空気感染の危険を予防し、脱臭効果などとも相まって人が安全で快適に生活できる空間を実現するのが狙い。

 電機メーカーの北斗電子工業をコア企業とし、金属加工や機械メーカーのツインテック、奥谷金網製作所、藤製作所、森合精機、販売担当でヘルスケア専門商社の明花電業が連携。神戸大学医学部保健学科、兵庫県中小企業家同友会の異業種交流グループ「アドック神戸」が技術協力する。

 2005年9月に事業認定され、06年春には試作機が完成。神戸大医学部の協力を得て機能テストまで実施した。細菌数を10のマイナス6乗分の1−10のマイナス7乗分の1に殺滅できることを実証した。ただ病原ウイルスについては検出が難しく、ウイルスによる空気感染の危険を考えると、殺滅処理後の細菌数をもう一ケタ減らし実質ゼロにする必要があると判断。高熱に加え高濃度酸素イオン(活性酸素)による殺菌を併用する形の改良機を開発している。

 07年中の発売を予定し、価格は250万−300万円程度。厳格な無菌レベルが求められるバイオ、医薬品分野、小児科医院や高齢者施設などへの販売していく。

北斗電子工業(株)


会社名
役割分担
■コア企業
北斗電子工業(株)
全体総括・システム設計
(株)藤製作所高温技術・医療用具製造
森合精機(株)量産対応・装置アセンブリー
明花電業(株)販路開拓
(株)ツインテック熱交換器製造
(株)奥谷金網製作所フィルターの製造



北斗電子工業(株) 中野浩一社長<br>「活性酸素イオンによる滅菌装置を付加して残留細菌ゼロを実現したいと考えています」

北斗電子工業(株) 中野浩一社長
「活性酸素イオンによる滅菌装置を付加して残留細菌ゼロを実現したいと考えています」

【空気感染の恐怖に挑戦】

 空中浮遊細菌・ウイルスによる空気感染の危険性が近年、多く指摘され始めた。かつては結核などを除いてほとんどが放置されてきたが、多くの抗生物質に耐性を持つメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や、新型肺炎(SARS)、鳥インフルエンザなど新型ウイルスによると見られる感染症が毎年のように出現。改めて空気感染の恐ろしさが指摘されるようになった。

 対策としては空気清浄機やHEPAフィルター(高通気性除じんフィルター)による濾過、除じんに依存しているが、決定的な防御手段はない状態だ。徹底的な細菌・ウイルス殺滅装置なども高コストにつくことなどを懸念して、本格実用化されたものはない。

 
【異業種交流活動が下地】

 これに果敢にチャレンジしたのが磁気探傷装置や電機関係測定装置などに強い北斗電子工業をコア企業とするグループ。連携企業で参加した藤製作所、森合精機、ツインテック、奥谷金網製作所、明花電業はいずれも兵庫県中小企業家同友会の異業種交流グループ「アドック神戸」(森合政輝会長)のメンバーだ。
 アドック神戸は95年の阪神・淡路大震災を機に脱下請け、自立型企業を目指して共同開発・受注活動を始めた異業種製造業者の集まり(現在のメンバー34社)。具体的な共同開発・受注に当たっては「主幹事会社制度」と呼ばれる独自の運営スタイルを採用。これまでに薬剤自動分包機、インテリアスピーカー、残留異物測定器、自動凝結試験装置などの成果が生まれている。

 この主幹事会社制度は開発・受注テーマごとに必要な資金手当てをはじめ、すべての責任を負う会社を選定。この企業をコアに協力企業を募って事業化を進める。まさに新連携事業の仕組みと同様のシステムを採用してきた。そうした下地もあって05年度から経済産業省が新連携を打ち出した後、今回の加熱殺滅装置プロジェクトと、ほかにもグループメンバーによる1件の新連携事業が認定されている。

 加熱殺滅装置に関しては、試作1号機が05年度中に完成。その仕組みは吸い込んだ室内空気を熱交換器とヒーターで250度−260度Cまで加熱、減菌した後、熱風を熱交換器で冷却、排気する。10畳程度の部屋で3時間運転すれば細菌1000万個当たり2−3個まで減菌できることも実証した。
 しかしその後、検証にかかりにくいウイルスが残留する危険を考え、残留細菌ゼロを達成するため「活性酸素イオンによる滅菌装置を付加して装置を改良。実質ゼロを実現したい」(中野浩一社長)と言う。