製造/中部・北陸 「サイクルタイムを短縮する『飛躍した冷却(熱交換)性能』を持つ金型の製造販売事業」

金属接合技術がポンイトに

 アルミダイカスト金型や樹脂金型には、高品質な成形品を作り出すために冷却回路が必要だ。従来はドリルで加工していたため、直線的な冷却回路しか作れず、冷却性能に限界があった。このため金型メーカーの松岡鐵工所がコア企業となり、金属接合技術を持つ中部高周波工業をパートナーに、優れた冷却性能を持つ金型の製造技術の開発にこぎ着けた。

 開発技術により金型の冷却性能を従来より2−7割アップすることに成功し、これにより効率的な冷却回路の製作が可能になり、アルミ、樹脂部品の製造サイクルタイムの短縮を実現する。また熱による劣化も低減し、金型寿命も延びる。
 技術のポイントは金属同士を接合するダイレクトボンディング加工。これは中部高周波工業が保有していた技術であり、真空中で接合する金属に電流を流し、接合面が分からないほど一体化し、強度も確保できるもの。また従来加工では数日かかったが、同加工なら数時間で済む特徴がある。

 同加工を使うことで金型部品をあらかじめ複数に分割して冷却回路の溝を掘り出し、再度、接合する。こうすることで回路設計は自由度が高まり、金型に溶湯を流し込む部品や金型本体の鋳造面に沿って高効率な回路を設けることができる。これにより冷却性能が飛躍的にアップする。
 現在、樹脂金型で量産化に成功し、今後はアルミダイカストでの実用化を目指す。

(株)松岡鐵工所


会社名
役割分担
■コア企業
(株)松岡鐵工所
金型設計・製造・販売
中部高周波工業(株)金属の特殊接合技術



(株)松岡鐵工所 松岡秀範社長<br>「分割した金型部品の接合面の研磨加工精度は、平面度でマイクロメートルオーダー。試行錯誤を繰り返しながら実現までに2年間を要しました」

(株)松岡鐵工所 松岡秀範社長
「分割した金型部品の接合面の研磨加工精度は、平面度でマイクロメートルオーダー。試行錯誤を繰り返しながら実現までに2年間を要しました」

【研磨加工で課題克服、加工設備も融資で導入】

 松岡鐵工所はアルミダイカスト用を主力としている金型メーカー。松岡鐵工所の松岡秀範社長が「以前から、効率的な冷却回路を金型にどう設けるか考えていたが、金属接合技術に良いものがなく失敗していた」という。
 一方、中部高周波工業は金属熱処理が専門で、ダイレクトボンディング加工という優れた金属接合技術を持ちながら「市場に出す道がなかった」と高橋義孝社長は振り返る。

 金属の接合加工で母材と同じ強度を保てる技術を求めていた松岡鐵工所。金属接合技術を生かしたい中部高周波工業。この両社を引き合わせたのが中小企業金融公庫だった。「中小公庫の担当者が優秀だった。2社の技術を良く理解してくれていた。それがなかったら連携はなかっただろう」(松岡社長)。
 とはいっても以前、両社は熱処理で取引があり、知らない間柄ではなかった。また連携が2社ということもあり、業務協力や利害関係の調整もスムーズにいった。「新連携は信頼関係が大事。その点は非常にうまくいった」(同)としている。

 技術的に大きなネックとなったのは接合する金属の研磨加工だった。複数に分割した金型部品の接合面にすき間があると、物理的に接合しない。その精度は平面度(面のうねり)でマイクロメートルオーダー、面粗度(面の荒さ)でコンマ・マイクロメートルオーダーが求められる。「試行錯誤を繰り返し、実現まで2年かかった」(松岡社長)というほど苦労した。現在、この研磨加工には、新連携によって認められた融資制度で導入した平面研削盤が活躍している。


【樹脂金型の次はダイカスト金型で事業化】

 06年7月に樹脂金型で量産化に成功。大手自動車部品メーカーに納入したのを皮切りに、すでに9社への納入実績がある。これらにより新連携事業で、この7カ月間に1500万円を売り上げた。
 一方、ダイカスト金型は最高700度Cに上がるアルミを冷却するため温度変化の幅が大きく、接合部の耐久性にバラつきが出るという課題がある。現時点では「80−90点の出来。慎重に技術レベルを上げ、強度などの完成度を高めたい」(高橋社長)という。

 このため、まずは樹脂金型に軸足を置いていく方針で、引き合いも着実に増えている。これを確実なものにするには、得意の自動車分野以外への拡販が必要になる。「新しい技術の事業化で大変なのは拡販すること。家電などより幅広い分野に売り込みたい」(松岡社長)としている。
 課題のダイカスト金型も早期に量産化のめどをつける計画だ。こうした技術的な進化により「プレス金型、機械部品にも応用したい」(松岡社長)と事業拡大を狙う。5年後には、新連携事業で年間売り上げ3億円を目指す。