製造/九州 「従来にない空気膜による非接触搬送装置“Magic Move”の開発・販売」

生産現場の悩みを一気に解決

 テレビやパソコンモニターに利用される液晶ガラス。製造過程で同ガラス基板を搬送する際、現在はローラーを使った接触式搬送がほとんどだ。しかし、このやり方ではガラスに傷が付く、衝撃でガラスが割れるなどのトラブルが避けられない。また大画面テレビの普及に伴ってガラスサイズも大型化、トラブルはより深刻度を増している。

 第一施設工業などは製品のガラスをエアー(空気)で浮かせる非接触搬送方式を開発、実用化にこぎつけた。微量のエアーのため、気流の乱れが少なくクリーンルーム内の汚れが発生しにくい。ガラスの傷や割れといったトラブルも少なく、搬送スピードは従来品比約2・5倍の高速と、生産現場の悩みを一気に解決する製品として市場から期待されている。

 価格は6メートル×6メートルの1セットが約6000万円。ローラー式と比べると50%ほど高額だが「ガラスの破損や生産スピードなどを考慮すると、トータルコストで高いとは考えていない」(篠原統第一施設工業社長)という。

 コア企業である同社が保有する非接触搬送の特許をもとに、連携企業のセラミック部材などを組み合わせたこの新しいガラス基板搬送装置は、テレビやパソコン市場の拡大が今後も見込まれるため、5年後に約10億円の売り上げを見込んでいる。

第一施設工業(株)


会社名
役割分担
■コア企業
第一施設工業(株)
非接触搬送装置製造
三倉物産(株)セラミックス開発・製造
(株)プレシード組み立て
三菱商事(株)九州支社販売



第一施設工業(株) 篠原 統社長<br>「ローラー式と比べてガラスの傷や割れも少なく、搬送スピードは約2.5倍。トータルコストでは割高でありません」

第一施設工業(株) 篠原 統社長
「ローラー式と比べてガラスの傷や割れも少なく、搬送スピードは約2.5倍。トータルコストでは割高でありません」

【ふんわりと膜をつくる】

 コア企業の第一施設工業は搬送機器メーカー。特に半導体・液晶製造工程で利用される高速の垂直搬送機(クリフター)は国内シェア90%と他社を圧倒している。

 創業は67年。エレベーター据付工事業務からスタートし、九州松下電器(現パナソニックコミュニケーションズ)やNECなどの大手メーカーに高速リフターを納入するなどで力をつけてきた。現在、同社の搬送装置はやはりローラーを使う製品が主流。これまでもガラス基板を立てた状態のまま非接触で搬送する技術を開発するなど試行錯誤を繰り返してきたが、普及には至らなかった。

 しかしガラス基板サイズが大型化すればするほど、搬送時の破損比率は上がる。一般的な歩留まりは50−75%程度と低い。これを打開するために非接触搬送技術の開発は水面下で進められた。

 新連携で開発した「マジックムーブ」は主に第8世代(基板サイズ2・3メートル×2・8メートル)以降の大型ガラス基板製造に対応する。非接触搬送技術を持つ第一施設工業がコア企業になり、セラミックス開発を手がける三倉物産(宮崎県清武町)と機器組み立てのプレシード(熊本県宇城市)の3社で連携体を構成した。販売は三菱商事九州支社が担当する。

 マジックムーブは搬送装置から発生するエアーの力でガラス基板をラインコンベヤーから1ミリメートル程度浮かせて搬送する。エアホッケーゲームのように、風圧で浮かすだけだと風圧によりクリーンルーム内が汚染される。それと同時にガラス基板の浮揚角度も一定にならない。

 マジックムーブは、これを解消する三倉物産製の多孔質セラミックスを使用する。同セラミックスは内部に多くの穴が空いており、この穴から空気が分散、穴の数や大きさを調整することで風量を調整して浮揚角度を一定に保つ。

 同ラインには一つ60ミリメートルの穴が開けられており、ここからエアーを出す。エアーは吹き上げるのではなく、ふんわりと浮かして膜を作る感覚。ガラス基板が同ラインと平行になるようセラミックスの配置分量によって風量を調節する。


【第8世代以降のガラス基板にも対応】

 搬送速度は毎分50−60メートルと、ローラー式の3倍近い。ガラス基板の両端はゴムベルトで固定するため高速搬送によるズレや破損の心配はない。搬送が高速化することで「成膜や露光装置が止まる時間が減る」(篠原社長)という。

 現在、第8世代以降のガラス基板を利用する大手液晶メーカーはシャープや韓国・サムスン電子など日本、韓国、台湾にそれぞれ数社しかない。このため販売台数には限りがある。ただ今後は第10世代(基板サイズ3メートル×3・2メートル)の基板も検討されており、高品質な製造装置ニーズが増えることは間違いない。市場規模は「50億円はある」(同)と期待している。