製造/東北 「光触媒を高活性化させる新しい溶射技術を利用した消臭・抗菌機能を持つ製品の事業化」

独自の溶射技術で光触媒効果が向上

 コア企業である釜石電機製作所の溶射技術を用いて、光触媒機能を向上させた消臭・抗菌装置の事業化を目指す。同装置のフィルター部分に、光触媒効果が最も高いとされる二酸化チタン(TiO2)を溶射。室内の臭いや汚れた空気を吸引し、フィルターを通すことで消臭・清浄化することができる。

 従来、二酸化チタンを金属材料などの基材へ定着させる方法としては、溶剤を用いた方法が主流。しかし、その方法だと二酸化チタンの多くが溶剤の中に埋もれてしまい、光触媒効果がどうしても低減してしまう。そこで釜石電機製作所は、岩手県工業技術センターとの共同研究により、溶剤を使わずに二酸化チタンを基材へ直接溶射する方法を確立。これにより光触媒の高活性化を実現した。

 05年には、JA遠野などの協力を得て地元の畜産農家に設置し、モニター検証を開始。消臭効果の高さを実証できたことに加え、子牛の成育が早まるといった新たな効果も発見され、モニター農家も絶賛する。
 また井上ガラス店と連携して高齢者住宅やペット施設にも試験的に取り付けたほか、岩手大学と、湖沼に発生する藻を光触媒で抑制する共同実験も実施している。こうした実証実験などを通じて、07年内に消臭・抗菌作用が求められる市場へ本格販売を開始する。

(株)釜石電機製作所


会社名
役割分担
■コア企業
(株)釜石電機製作所
溶射技術の開発、製品開発
(有)井上ガラス店装置ユニットの設計、製造
エヌケー紫波(株)ダクトの設計、製作
JA遠野販売支援
岩手県工業技術センター溶射法の技術支援
岩手大学装置を用いた実験



-牛舎に設置した空気清浄化装置-<br>溶剤を使わずに二酸化チタンを直接溶射したフィルターを使用する。子牛の成長が早まるという意外な効果が発見された

-牛舎に設置した空気清浄化装置-
溶剤を使わずに二酸化チタンを直接溶射したフィルターを使用する。子牛の成長が早まるという意外な効果が発見された

【きっかけは溶射装置の用途拡大】

 釜石電機製作所の光触媒の溶射技術は、94年に高性能の溶射装置を導入したことがきっかけで生まれた。同社は主に電気設備の保守・点検事業を手掛ける。溶射事業はあくまでも補助的な部分のため、装置をもっと有効に利用しようと、岩手県工業技術センターへ相談。当時、溶射の技術指導を担当していた大森明大阪大学名誉教授から「光触媒へ応用してみては」と勧められたという。

 光触媒は、太陽光や照明器具が持つ紫外線エネルギーを当てることで、有害物質を二酸化炭素と水に分解するのを促進する物質。その作用により除菌や消臭、防汚効果を発揮する。そして、この物質の溶射技術が確立したのは04年。同センターと共同で溶射のスピードや熱、時間といった条件を探るなど、約4年の開発期間を経て07年1月に特許を取得している。

 しかし同技術の実用化には困難を伴った。開発当初は部屋の壁など内装分野への応用を考えたが、単色で武骨に見えてしまうし効果がわかりづらい。佐藤社長は「これでは競争にならないし、(他の方法と)効果が一緒だったらやめてしまおうかと思った」と、当時を振り返る。
 他の用途はないか−。そう行き詰まっていたときに考案したのが、光触媒を溶射したフィルターを通して空気を清浄化し、循環させる方法。この方法を用いて漆器のおわん用保管庫を製造し、地元小学校に納入したところ、抗菌性や消臭効果が高く評価され、自信を得た。


【環境改善で新たな効果を発見】

 このアイデアを元に開発したのが、消臭・抗菌機能を向上させた空気浄化装置。光触媒効果が向上するだけでなく、フィルターに埃(ほこり)がたまった場合は、水洗いして使える。それにより二酸化チタンがはがれてきても、再び溶射すればリサイクル可能だ。

 05年からは地元酪農業者の協力を得て、現場で装置のモニター検証を開始。すると消臭効果に加えて、子牛の成長が早まるという意外な効果を発見した。家畜の発育にも空気浄化や光触媒技術が大きな成果を与える可能性があるということだ。
 通常、子牛の体重は生後2カ月ほどで65キロ−70キログラムに達する。しかし同装置を導入したことで、消臭効果や抗菌性向上など成育環境が改善され、1カ月ほどで同じ体重になったという。「家畜は生まれたての環境が成育に一番影響する」(佐藤社長)ため、飼養農家の生産性向上にも同装置が有効であることが証明された格好だ。

 現在、連携体との協力により、装置の導入が急ピッチで進んでいる。地元の養豚、養鶏場のほか、介護が必要な高齢者施設や動物病院内の天井にも設置済み。07年度は、釜石周辺地域から「岩手県内に拡大していきたい」(同)と、販売チャンネルづくりに注力し、08年7月期3000万円の売り上げを目指す。