製造/東北 「磁気を用いた「非接触式動力伝達装置」の事業化」

非接触式で多機能化を実現

 金型の設計・製作を主に手掛ける松栄工機をコア企業とした連携グループが、非接触式動力伝達装置の製造・販売事業に取り組む。同装置は磁気を持った歯車同士が互いに接触することなく動力を伝達。これにより接触式では不可能だった多くの機能を得ることができる。

 騒音や塵(ちり)の発生を防ぎ、耐久性も向上するほか、メンテナンスフリーのため給油などの手間やコストが不要。さらに高速回転機への搭載も可能で、トルク(回転力)リミッターの機能なども併せ持つ。またこれまでは、低トルクであることも歯車装置の大きな課題の一つだったが、歯車のかみ合わせ方を工夫したことにより、伝達力を大幅に改善。従来の非接触式と比べて3倍の伝達トルクを得ることに成功した。

 こうした多機能性により、装置の用途は「我々もまだ把握しきれていない」(小林敬社長)というほど広い。埃(ほこり)を嫌うクリーンルーム内のホイルコンベヤー駆動部や、静音で低振動が求められる複写機のメーン駆動部などはもちろんのこと、応用分野への可能性ははかりしれない。現在は食品メーカーなど数社と実用化へ向けた共同研究を進めている。

 また2006年からは伝導運搬機器などの製造・販売を手掛ける椿本興業が総代理店となって、一部装置の販売も開始した。

(株)松栄工機


会社名
役割分担
■コア企業
(株)松栄工機
磁気動力伝達装置の設計・製作
(株)ニューテック着磁器の設計・製作
宮城県産業技術センター磁場解析技術
椿本興業(株)販路開拓
大浜商事(株)磁性材料供給



(株)松栄工機 小林敬社長<br>「我々の考えている以上に用途がある。それが少しずつつかみ取れてきた感じです」

(株)松栄工機 小林敬社長
「我々の考えている以上に用途がある。それが少しずつつかみ取れてきた感じです」

【動力伝達効率90%以上を実現】

 歯車やベルト、チェーンなど従来の機械的な動力伝達機構には、騒音や発塵、耐久性低下などの問題がつきもの。どれも動力伝達部と被伝達部とが触れてしまうことが原因だ。松栄工機などは磁気による非接触式歯車装置を03年に開発し、こうした動力伝達装置の課題を解消することに成功。装置の事業化を目指し、06年2月には新連携事業として認定を受けた。

 同装置は、ニューテックの着磁技術を用いて歯車に磁気を持たせることで、磁力の引き合い・反発作用による磁気的なかみ合いで動力を伝達する。歯車同士はお互いに接触しない構造になっているため、壁などの障害物を挟んだ隔壁伝達が可能だ。

 伝達機構でポイントとなるのは、いかに効率よくエネルギーを伝達するかだ。これまでも磁力を用いた非接触式方法は存在していたが、円筒型の歯車同士をかみ合わせるため、磁力が作用するかみ合わせ領域が小さくなってしまい、エネルギーの伝達効率が低かった。その分得られる機能も少なく、用途も限られていた。
 そこで松栄工機は円筒型に加えて円盤形状の歯車を採用することで、かみ合わせ領域を拡大。さらに、磁場解析を通じて最適な磁石形状を探った。

 こうしてエネルギーが均一に伝わるよう歯車にカーブ形状の刻みを入れた低振動の伝達機構が完成。これにより動力伝達効率90%以上を実現し、かつ、従来の非接触方式と比べて機能性が向上し、伝達トルクも3倍高い伝達機構を実現した。


【共同研究で進む用途開発】
 
 「我々の考えている以上に用途がある」−。小林社長は同装置の多機能性から、食品や半導体関連などさまざまな分野への応用を期待している。
 そこで同社はメーカー数社と共同で、装置の実用化に向けた研究開発を加速している。開発当初は2人だった同社の研究開発担当者も、今では7人まで増員。ここにきてようやく「用途を少しずつつかみ取れてきた」(同)と、手応えを感じている。

 また06年からは連携体の椿本興業を通じて一部装置の販売を開始した。まだ試作品レベルの販売だが、07年3月期は3000万円の売り上げを見込んでいる。なかには「量産のめどが付いている商品もある」(同)と、本格販売が間近に迫っているようだ。

 同事業の確立は地場産業の発展という点でも大きな意味を持つ。「コア技術を持った企業がこの地域にない。このままでは地場の産業がすべてだめになってしまう」(同)と、地場産業の衰退を危惧する。その状況を打破するためにも、それぞれの企業技術を持ち寄る新連携事業を成功に結びつけることで、地場産業活性化への一つの起爆剤となることが期待される。