製造/九州 「卓越した技術で消費者ニーズを充足するプロのノウハウを陶磁器伝統技術で商品化」

新機能を付加した陶磁器の製造

 日本有数の陶磁器の産地である佐賀県有田町。福泉窯は、この地で陶磁器を製造する有田焼の窯元だ。製造した陶磁器は、陶磁器商社の川本治兵衛商店が販売する。その顧客の中に、日本料理の第一人者・野風m光氏が料理長を務める「分とく山」がある。川本治兵衛商店と野侮≠ノは長年にわたる私的交流があり、そのことが驤新連携驩への道を開いた。

 きっかけは野侮≠ノよる「家庭で簡単にだしがとれるポットを作れないか」という発想だった。川本治兵衛商店は福泉窯に製造を要請し、「だしポット」の開発が動きだした。福泉窯の持つ独自の温度保持機能等を有する製陶技術(温度を保持する器の形や厚み調整などの製造技術)によって「だしポット」は完成した。02年秋から本格的に販売を始め、これまでに売り上げた数は7万個を超えた。

 「だしポット」の実現で新たな製品の開発にも着手。「伝統もそのままだと残らない。時代に合わせて進化させなければ」(下村麗子福泉窯専務)と、この新機能を付加した陶磁器の製造を推進。製品の特徴に合わせ、陶磁器の原料となる特殊陶土は、田島商店が供給する。「だしポット」などの調理用用具や調理器の販売により、新連携事業の売り上げは5年後に約4億円を見込んでいる。

(有)福泉窯


会社名
役割分担
■コア企業
(有)福泉窯
陶磁器製造技術
(有)川本治兵衛商店販路開拓・デザイン
(株)田島商店原料供給
専門家集団消費者ニーズ把握・商品企画



(有)福泉窯 下村麗子専務<br>「伝統もそのままだと残らない。時代に合わせて進化させた商品開発が必要です」

(有)福泉窯 下村麗子専務
「伝統もそのままだと残らない。時代に合わせて進化させた商品開発が必要です」

【消費者のニーズにこたえる製品作り】

 「だしポット」は直径が100ミリ、幅が190ミリ×高さ140ミリメートル。重量が470グラムで容量は500ミリリットル。ステンレス製の内網(ストレーナー)に昆布やかつお節などのだし材を入れ、沸騰したお湯を注いでふたを閉める。すると熱湯が、だしを採るのに最適な約85−90度Cへ低下するため、1−2分間待っていれば簡単にだしができあがる。価格は8400円。白や桜色、墨色など6色をそろえ、染め付けたものも販売する。

 これまでの有田焼は「窯元は作るだけ、商社は販売するだけ」(同)という分業文化があり、必ずしも窯元と商社の間に密接な協力関係があった訳ではない。「だしポット」にしても、内網の製造業者に販売を任せていた状況だった。しかし今回の新連携では「商品には市場性がある。主体性を含めて販路を拡大する」(同)考えだ。従来の有田焼は、陶磁器愛好家向けだが、新機能を付加した有田焼は一般の消費者向け。どうつくってどう売るかが重要となる。
 

【連携を進め、有田焼全体を元気に】

 消費者が食に求める本物志向や健康志向を満たし、なおかつ使い勝手が良い手軽な新商品を開発する。福泉窯をコア企業とする新連携事業では、この難題に挑む。野風m光氏によるプロの料理人としての発想を川本治兵衛商店がデザインし、田島商店から調達した特殊陶土に、福泉窯が独自の陶磁器製造技術で新機能をふきこむ。この連携こそが、機能付きの陶磁器を生み出す原動力となった。すでに新製品が誕生し、新作発表会も行った。

 「磁器の蒸し器」は本体の鍋部分が丈夫な陶器のため、電磁加熱調理器(IH)にも対応できる。上蓋は有田焼で、染め付けの制作もできる。「鮨千代口(すしちょこ)」は、すしや刺し身を食べる際にしょうゆの切れが良くなるように工夫されており、「オリーブオイル千代口」も同様の機能を持つ。また、持ちやすさや混ぜやすさを考えた「納豆鉢」もある。「だしポット」を利用した離乳食の提案なども手掛けていく計画だ。

 世界に名だたる有田焼も、近年では不況にあえぎ、苦戦を強いられている。下村専務は「一つの成功事例として、有田の元気を取り戻したい」と新連携への意気込みを語る。目標はあくまで、地場産業である有田焼全体を回復させることだ。

 「中小企業同士が一つの企業体として連携する」(同)ことで、これまでにない製品を生み出し、地域の活性化も促す。伝統的産業である陶磁器に、新たな可能性を与える福泉窯を中核とする連携事業は、モデルケースとしての役割も十分にある。伝統と機能の融合により、新連携は一段と進化していきそうだ。