製造/関東 「新しい冷間鍛造品の製造方法を利用した鍛造品の製造および販売」

切削加工なしのネットシェイプ

 クリアテックは自動車の自動変速機(AT)などに使われるヘリカルギア(遊星歯車)を、切削加工なしで製造する新しい冷間鍛造技術を開発した。内径や歯面を一切、切削しない完全なネットシェイプは世界唯一という。このコア技術を事業化するために、自動車部品メーカーのエー・アイ・ケー、熱処理技術を持つ浜松熱処理工業と連携。07年度中の量産化を目指して取り組んでいる。

 金型の弾性変形を利用した独自の「EDF法」により、鍛造では不可能とされた歯面の膨らみ(クラウニング形状)を実現した。金型自体が小型、低コストなうえ、一般のプレス機が利用できるため、初期投資を抑制できるのも利点だ。EDF法によって製造したヘリカルギアは、歯面を切削しないため、表面が滑らかで低騒音のうえ、耐久性に優れる。材料歩留まりも大幅に向上する。

 すでに国内カーメーカーのほか、欧米カーメーカー、大手部品メーカーが同技術に注目。クリアテックは量産に向け、静岡理工科大学や浜松工業技術センター、さらに海外の開発会社の協力も得て、強度や精度など数値的裏付けを急いでいる。ヘリカルギアを製品として供給するほか、ダイセット金型販売や技術供与など、各種のビジネスモデルも検討している。また自動車以外に、航空機など幅広い産業分野への応用が期待される。

(株)クリアテック


会社名
役割分担
■コア企業
(株)クリアテック
金型、鍛造品製造、設計
(株)エー・アイ・ケー切削加工技術
浜松熱処理工業(株)熱処理技術



(株)クリアテック 石田 均社長<br>「EDF法の技術の応用範囲は無尽蔵にあると思います」

(株)クリアテック 石田 均社長
「EDF法の技術の応用範囲は無尽蔵にあると思います」

【国内外の自動車関連メーカーが注目するヘリカルギア】

 「エレガント!」。ある米カーメーカー幹部は、クリアテックが開発したネットシェイプのヘリカルギアを手に取り、思わず驚嘆した。それほどEDF法で加工したヘリカルギアは精度が高く、表面が滑らかだったのだ。

 冷間鍛造によるギア製造ではニアネットシェイプが、すでに一部メーカーで実用化されている。しかし鍛造でまず完成品に近い形状とし、最終的には歯面を機械加工して精度を出すため、どうしても表面に削ったスジが入ってしまう。このスジが摩擦の原因となり、耐久性などに影響を及ぼすと考えられる。またネットシェイプと比べ歩留まりも劣る。

 鍛造時に加圧された金型は0・2−0・3%収縮し、抜く時に広がって元に戻ろうとする力が働く。これを弾性変形という。一般的には弾性変形を受動的に受けるために精度悪化の原因となる。同社はこの弾性変形を利用することで、完全なネットシェイプを実現した。この点がまさに画期的な技術といえる。
 

【弾性変形を利用し高精度、高強度化を実現】

 EDF法はワークをテーパー状の金型に入れ、さらに大きな金型に押し込む。ワークを上下と側面から加圧。出す時は内部の金型も一緒に上がり、弾性で金型が元に戻ってからワークを取り出す。弾性変形の特性を利用し、材料の内圧を一定に保つのがミソで、石田均社長はこれを「数マイクロメートルの精度を決める理論」と言い切る。同法は国内外で十数件の特許を取得、または申請している。

 ヘリカルギアの製造工程は主に穴開け工程、歯をつくる押し出し成形工程、内径と歯の精度を高めるサイジング工程、端面を削る仕上げ工程の4工程からなる。ニアネットシェイプでは、さらに5番目に機械加工工程が必要となる。EDF法では2工程目の歯の成形が中核技術となるが、そこで精度を出すには1工程目の穴開け工程がポンイトになる。そこで同社は、冷間鍛造でワークの内径と外径の同軸度を100分の2ミリメートルの精度で仕上げる技術も確立した。

 連携企業のエー・アイ・ケーは、もともとクリアテックの金型のユーザーであり、自動車用鍛造部品や切削加工部品が主力。新連携ではギアの端面の切削技術を担当する。浜松熱処理工業は熱処理の専門企業。3社は互いの得意技術を融合し、EDF法の量産化に取り組んでいる。

 自動車業界では快適性や環境性能を求めるニーズが高まっており、それを実現するために高強度で高精度な自動車部品が必要とされている。例えば、欧州で主流のディーゼル車は環境対応とともにパワーアップの傾向にあり、AT用ギアにかかる負荷が増大し、より耐久性が求められている。
 EDF法は、これらに加えて将来、AT以外の自動車部品のほか、航空機部品など、さまざまな分野への応用が期待される。石田社長も「技術の応用範囲は無尽蔵」と自信を深めている。