IT/九州 「人工知能を活用した臨床研究・治験ナビゲーションシステムによる新市場開拓」

業務内容をナレッジベースでルール化
 
 なうデータ研究所は、九州工業大学の長澤勲教授が研究していた「知識処理技術」を産業用途に転換する目的で96年11月に設立した。医師や技術者らの高度な業務知識をルールベース化することで業務管理を軽減すると同時に、運営支援を強化した商品ともいえる。

 医療分野以外では製造業支援にも利用されている。一つの例として巨大照明機器を天井につり下げる場合、膨大な数のボルトやジョイントの中から過重や有効面積、引っ張り応力などを算出し、最も適した形状と利用個数を弾き出す。ルールベース化することで部品の選択や複数の設計プランの提示などが即座に行え、設計時間や製造コストが軽減できるというわけだ。

 社名の「なう」は、一本一本の糸(英知)を綯(なう)って、大きな縄(ソフトウエア)をつくることから考案された。資本金1000万円、従業員11人、04年9月期は売上高約1億円。

(株)なうデータ研究所


会社名
役割分担
■コア企業
(株)なうデータ研究所
基盤ソフトウェアの提供
(有)アステック情報セキュリティー
(有)中間法人九州臨床研究支援センター大学病院連携
(株)キューデンインフォコム情報インフラ整備
メビックス全体的な展開



(株)なうデータ研究所<br>椿原靖社長

(株)なうデータ研究所
椿原靖社長

【臨床・治験を独自技術で簡単・的確に】

 なうデータ研究所(福岡県飯塚市)は「新連携」により、これまで日本の医療業界では行われてこなかった臨床研究支援システムの開発、販売に取り組んでいる。

 医療現場で日々行われている臨床研究や治験は、医師が作業に長く拘束され、病院の経費負担も大きい。特に医師は診療と並行しての作業が求められるため、身体的にも精神的にも負担が大きいといわれている。なうデータ研究所はこの臨床・治験を、独自のルールベース(データベース)技術を使った情報システムにより簡単・的確に行えるようにしようというのだ。

 同社は九州の大学発ベンチャーの走り的な存在として知られている。九州工業大学の長澤勲教授が研究していた「知識処理技術」を産業用途に転換するために設立した。人間が処理できる業務知識には限界があるため、これをルールベース化することで、業務管理を軽減する商品として注目されている。医療・福祉支援として健康管理システムの運用からスタートし、知的CADや病院情報システムなどに用途が広がっている。


【知識処理技術を使って医療現場を変革する】

 知識処理技術とは、医師や技術者ら専門家のノウハウを体系化し、最終的な回答を提案・分析・警告するもの。医療現場の場合でいえば、医師の処方をシステムに入力すると、ルールベースがデータ処理し、人工知能の役割を持つ「推論エンジン」が登録された医療知識に従って情報を精査して、患者に最も適した投薬情報や診療情報を提示する。

 このため1人の患者を複数の医師が担当する大病院や、患者が転院する場合でも医師同士で患者情報が共有でき、再検査にかかる余分なコストや医療ミスなどが防げるというわけだ。

 なうデータ研究所が新連携で取り組んでいる「次世代臨床研究支援システム」は過去の診療情報を入力すると、治験候補者を自動検索して提示する。この段階で医師は、治験に最も適した患者を捜す手間が省ける。同システムはスケジュールを管理し、医師や看護師に処方や検査の実施内容・未実施事項の警告を通達する。また不適切な併用薬の使用を警告するとともにサンプル損失も防ぐ。

 受注は国立系大学病院の連携機関、九州臨床研究支援センターを通じて行う。同センターは連携病院、製薬会社と実施状況を報告しあいながら治験を進めていく。なうデータはシステムの利用費用が収益につながる仕組みだ。

 「日本ではコストが高すぎて治験が十分行えない。当社製品はここにメスを入れた。看護の段階から情報を入力できるので広範囲にデータが集まる。当社は営業力が弱いので、今後は営業力のある会社と連携して販売を強化していきたい」(椿原靖社長)と意欲的だ。