製造/関東 「光ファイバー用光パルス検査装置の事業展開」

光技術で未来を開く

 サイエンテックスは産業用、研究室向けに光センシング技術のサポート、ソリューションを提案する研究開発型企業だ。極微弱な光子(フォトン)の測定や、超短時間のレーザー制御、超高速の時間計測を可能にする高度な光技術は、国内の大学や研究機関から高い信頼を得ている。

 こうした独自技術をもとに、新連携事業を活用して光ファイバー用光パルス検査装置の事業化に取り組んだ。その背景には、ホームネット社会の到来とともに、通信回線の大容量化ニーズの高まりがあった。その社会的ニーズとともに急浮上したのが、光の通過を妨げる光ファイバーの外傷や欠陥、曲げ損失の改善だった。

 同装置は光ファイバーなどの位置に欠陥があるかどうかを正確に分析するもので、通信品質を飛躍的に向上させる武器として期待されている。連携先の企業には専門部品調達や海外動向調査、レーザー制御回路設計を任せ、静岡大学工学部などに技術支援を依頼した。07年春までに実用化するのが目標だ。

 これまで高度な顧客ニーズに対応した・1点モノ・の製品を手掛けることが多かったが、新連携による同装置の開発を機に、「今後は量産品も視野に入れ、収益性も追求していく」(井上賀津也社長)考えだ。

(株)サイエンテックス


会社名
役割分担
■コア企業
(株)サイエンテックス
開発、事業統括
(株)テクソル専門部品調達、海外動向調査
珠電子(有)レーザー制御回路設計
静岡大学工学部技術支援
浜松工業技術センター技術支援



(株)サイエンテックス 井上 賀津也社長<br>「今後は量産品も視野に入れながら、収益性を追求していく考えです」

(株)サイエンテックス 井上 賀津也社長
「今後は量産品も視野に入れながら、収益性を追求していく考えです」

【光ファイバーの故障点を高精度に測定】

 サイエンテックスの創業は1993年。井上賀津也社長は地元の光関連技術の先端企業である浜松ホトニクスの技術者から転身した。晝馬輝夫・浜松ホトニクス会長兼社長は、日ごろから「飛び出して自分で会社をつくるくらいの元気がほしい」とゲキを飛ばしており、それを実践した格好だ。
 光ファイバー用光パルス検査装置の開発もこうした前向きな企業姿勢が生み出したものだ。同社はコア企業として、光計測技術、高位置分解技術を生かした装置のシステム化、製品化を進め、プロジェクト総括を担った。

 連携先のテクソル(浜松市)は、理化学機器などの部品の輸入業務と総合マーケティングを担当。珠電子(同)は超高速レーザー駆動技術やレーザー制御技術を応用したレーザー制御回路の設計を受け持つ。
 静岡大学工学部も参画して基礎理論の検討などで支援。地元公設研究機関の浜松工業技術センターは評価を行った。またユーザーとなる通信事業者は使い手側の情報に加え、専門知識を有する工事に関するノウハウを提供した。

 こうした産学官それぞれの強みを持ち寄り、高性能で実用的な光パルス検査装置の開発を目指している。支援金融機関には浜松信用金庫が名乗りを上げた。


【ピコ単位の時間を計測】

 光は1秒間に約30万キロメートル進む。ただし光ファイバーの中では光がジグザグに進むため、実際には毎秒20万キロメートル、つまり1ナノ秒当たり20センチメートル進む計算となる。新連携によりサイエンテックスが開発を目指す光ファイバー用光パルス検査装置は、光がファイバー内の傷や曲がった部分に当たると反射し、戻るまでの時間を計測することで、欠陥個所の位置を正確に解析することができる。

 同社は、これまで約100ピコ秒の超短パルス幅の光を発生させる「ピコ秒レーザーパルス光源」や、10ピコ秒の分解能を持つ「超高速時間計測モジュール」などを開発した。光パルス検査装置も、すでに10キロメートル先の地点でも50センチメートルのコネクター接続の状態が分かる「シングルモードファイバー用OTDR」を実用化済みだ。

 しかしホームネットなどは日々、進展しており、情報量の拡大や光ファイバー網の複雑化が大きな課題となっている。このため光パルス検査装置の開発品はこれらのノウハウを結集し、さらに高い次元の精度を追求しようとしている。
 そこで06夏には本社機能を中小企業整備基盤機構が運営するテクノフロンティア事務所(浜松市)に移転。新研究開発拠点を中小機構のインキュベーション施設であるHi−Cube(ハイ・キューブ、浜松市)に開設するなど、新連携による事業化をにらみ開発体制を強化する。