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地域資源活用チャンネル

認定事業計画の事例

国の認定を受けた「地域産業資源活用事業計画」申請事業者の活気ある声をお届けします。

山梨県

老舗の問屋がフルーツで地域を結び、全国へ発信

企業名 渡辺商店 三類型 農林水産物 地域資源名 甲斐八珍果
渡辺商店・渡辺昇代表取締役社長

渡辺商店・渡辺昇代表取締役社長(左)

100周年を機に見直した「問屋の使命」と「地域資源」

 株式会社渡辺商店の本社がある中央市は、甲斐盆地のほぼ中央。美しい富士山を臨む裾野にぶどう・桃・さくらんぼなどの畑が広がっている。同社はこの地に砂糖・小麦粉問屋として1913(大正2)年に創業した老舗。100周年を迎えるにあたり、代表取締役社長の渡辺昇氏は、社員と一丸となって将来のビジョンを構築した。「新ビジョンは“みんなのおいしい/ 美味しい笑顔が見たい”。会社の発展は山梨の土地、山梨の方々にお世話になったおかげ。地元へのお返しを自分たちのスタンスにしたい」同時に渡辺氏は、卸売業からの変貌を図る必要を感じていた。県内に複数あった砂糖問屋も今や同社のみ。「右から左の仕入れ業務だけでは間違いなく残れない。どうしても“自前のもの”を開発していく必要がある」ビジョン再構築の中 で渡辺氏が意識したのは“山梨の地の利を活かすこと”。丁寧に山梨の魅力を探るなかで見つかったのが、県産フルーツだった。「たまたま社員のお母さんが素晴らしく大きなぶどうを作っていて」新鮮なフルーツを農家から仕入れ、販売するビジネスに乗り出すことに。

商品の香りや食感を引き出した独自の製法を開発。桃以外にもさまざまなフルーツで試作中

商品の香りや食感を引き出した独自の製法を開発。桃以外にもさまざまなフルーツで試作中

意外な事実。県産ドライフルーツはなかった

 専門商社だけに販売ルートは豊富にあり、営業にも慣れている。果物の販売にあたり、フルーツ事業部の古屋 浩氏は女性誌のスイーツ特集の上から順にパティシエにアタック。「すばらしいものを持っている」と絶賛を受けた。市場に出回るフルーツは完熟しないうちに収穫し流通に回されるが、同社が扱ったのは樹上でぎりぎりまで完熟させた、市場にとっての“ 跳ね出し”品。パティシエたちは普段口にできないその甘さ、おいしさに驚いたのだ。

 しかし各フルーツの収穫期は年1回。扱いを通年化すべく、ジャムやシロップ漬け、洋酒漬けなどを試したが「ことごとく失敗しました」。そんな時、菓子メーカーと桃を使った菓子の開発を行なう中で、ドライフルーツを求める声が上がった。

 調べてみて、同社は驚きの事実に気づく。山梨県産のドライフルーツは、山梨県になかったのである。「近くに東京、関東という大きな消費地があったのでフルーツは当然、生で出荷。加工のことは一切頭になかったというのが現実だと思います」山梨の土産物店ではドライフルーツも見かけるが「よく見ると外国産。これはおかしいだろう」と一念発起。山梨県の産学官連携組織『IIEN.Y』(いいえん どっと わい)で同社が主催していた「県産フルーツを考える会」での後県産果物を使ったドライ&セミドライフルーツ老舗の問屋がフルーツで地域を結び、全国へ発信果物の名産地にある老舗問屋が、顧客の声をきっかけに意外な事実を発見。創業100 年という大きな節目に地域をじっくり見つめたことが、経営の一大転機に。押しもあり、同社がドライフルーツの開発に乗り出すこととなった。

「地産地消」プラス「他消」で山梨を元気に

 他県と同様、山梨県でも高齢化が進み、畑を手放す人が多い。しかし同社が地元農家とのつながりを深めていく中、これから農業を変えて行こうという世代がいることもわかってきた。地産地消への貢献を同社が目指していることも、そういった農家との関係づくりに大きく影響している。「地元の埋もれた商品を集め、問屋の力を活かしてスーパーなどで売るビジネスもしています。大手スーパーでは、交渉しても断られた商品をなぜそんなに集められるの?と驚かれたことも」山梨の地で100年以上築いてきたネットワークは、同社の財産だ。

 問屋の本領は、価値ある商品と市場のニーズをつなぐこと。 “山梨県産フルーツ”への高いニーズは、同社が新たに開拓した市場だ。「いいものを持って行けば、相手はさぁさぁって話を聞いてくれる。砂糖や小麦粉については門前払いだった東京のケーキ店でも“山梨からフルーツ売りに来ました” って言うと、なに?って」古屋氏は新しく出会ったパティシエたちとも強いパイプを実感している。逆に彼らは同社のドライフルーツ開発にとって、力強い情報提供先ともなっているのだ。

品質の高いフルーツづくりを目指す地元の若い農家たちとの交流も深まっている。(左から3番目が古屋氏)

品質の高いフルーツづくりを目指す地元の若い農家たちとの交流も深まっている。(左から3番目が古屋氏)

驚くべき品質のドライ&セミドライフルーツで市場へ

 ドライ技術の開発も順調で「自分たちでも驚くべきものができている」菓子メーカーの開発や小売業に身を置いていた人物の加入など、古屋氏を中心として強力な体勢が整いつつある。もちろん提携先の農家も品質の点で強者ぞろい。「フルーツの収穫は年一回。今できることは全てやるつもりで準備しています」試作品を出品した展示会では商談者が引きを切らない人気。ニーズの高さはお墨付きだ。

 この事業が形になったのは、中小機構 関東地域支援事務局の池田 章プロジェクトマネージャー(PM) の力が大きかったと渡辺氏。「申請が通る計画の作成を支援して頂き、優秀な生産者やパティシエとの交流の場も作ってもらった。池田PMや県の担当の方の人脈は今、非常に活きています」

 「1年1チャンスを、どういう風にものにするか。今はあらゆる可能性の中で準備中。ここ1年が大勝負です」と古屋氏。山梨県産のドライフルーツが全国を、そして世界を唸らせる日が近づいている。

'08年の展示会にて様々な種類のドライ&セミドライフルーツを初披露

'08年の展示会にて様々な種類のドライ&セミドライフルーツを初披露

【コメント】渡辺商店・渡辺昇代表取締役社長
経験を糧に、地域を丁寧に見直すことで成功へ

 以前から当社は、お客様の声に応じてさまざまな商品開発に挑戦していましたが、今回はそれらを経験として活かす機会。安心・安全が騒がれる今「きちんと顔が見えるものを製造したい」という思いで見直してみると、農業に取り組む若い人のグループとの出会いもあり、身近にフルーツがありながら知らなかったことが多かったと実感しています。スタートに向けては、やはり量産化を検討する必要があります。しかし、問屋の経験と知識を駆使すれば、意外と近くにプランが見つかるのではないかと考えています。

認定事業者インタビュー(動画)

渡辺商店(営業副本部長 古屋 浩 氏)

会社概要

会社名:株式会社渡辺商店
住所:山梨県中央市山之神流通団地1-1-1
業種:食品専門商社
電話:055-273-5511
URL:http://www.watanabeshoten.net/