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地域資源活用チャンネル

認定事業計画の事例

国の認定を受けた「地域産業資源活用事業計画」申請事業者の活気ある声をお届けします。

広島県

自分で作り自分で売ることで生きのこり

企業名 チューリップ 三類型 鉱工業製品・技術 地域資源名 広島針

減少する企業数

 広島県は全国有数の針の産地として知られ、国内の90%以上のシェアをもつといわれる。国内の針の産地は少なく、手芸用の針に限ると広島だけという。その歴史は古く江戸時代にさかのぼる。中国山地で産出する砂鉄をもとに「たたら製鉄」法で鉄を得、それを針に加工してきた。輸出を中心に栄えた産地だが、円高の影響や安価な輸入品に圧され、今では広島県針工業協同組合に加入する企業だけで11社にまで減ってしまった。

 チューリップも広島市内で創業した針専業メーカーの1社。1948年創業なので、後発の部類に属する。当初は釣り針からスタートしたが、手縫い針や手芸用レース針、あみ針など事業の間口を広げていった。2代目である原田耕太郎社長が入社した80年にはプリント基板検査用の精密針の事業を開始、電子分野にも参入している。

一貫生産とブランド確立で

 取りまく環境が厳しさを増す中で生き残れたのは、「自社での一貫生産にこだわったことと、早くから自社ブランドを持っていたこと」(原田社長)と分析する。一口に針といっても、原料の鋼線が完成品になるまで実に30もの工程がある。鋼線を切断し焼き入れ、焼き戻し工程を経て頭部を形成し研磨、めっき処理を施し完成する。焼き入れだけでなく焼き戻しを行うのがポイントで、硬くて折れない高品質の針が出来上がる。

 同社は一連の工程はもちろん、金型も社内で手がける。モノづくりのノウハウを持つことが、電子分野など新分野への進出を可能にした。その一方、ブランド展開も早かった。55年にはチューリップの商標権を取得。今では40数カ国にチューリップブランドの針が輸出されている。

 社名も70年に原田製針所からチューリップに変更。ブランドとの一本化を図った。「商社の"下請け"的な業態のところは早くから行き詰まっていた」(同)と言うように、自社ブランドを持つことが同社の大きな強みだ。輸出については商社を起用するケースもあるが「日本貿易振興機構(JETRO)の力をお借りし、可能な限り自社で市場を開拓してきた」こともブランドの浸透に寄与した。海外の展示会に初出展したのが81年。それ以降、国内外で開かれる展示会の常連出展者になっている。

レース針の世界シェアは50%

チューリップのショールーム。アイテムは1000品種以上にのぼる

チューリップのショールーム。アイテムは1000品種以上にのぼる

 輸出比率は約50%だが過去は70%以上あった。国内市場をたんねんに開拓してきた成果が輸出比率の低下につながった。同社の製品群は手芸用のレース針、かぎ針、キルト針など、アイテムは1000品種以上にのぼる。中でもレース針は看板商品で、「世界シェアは50%以上あるのでは」と見る。原田社長は「自分で作って自分で売ってきたからこそ今がある」と胸を張る。事実、デザイナーを自社で抱え、製品のパッケージまで自社で開発している。

 地域資源に認定され取り組んでいるのは、一連の精密加工技術を生かした高級手芸針、糸を通すオートスレーダー、そして電子部品用精密針の開発。持ち手部分にエラストマー素材を採用し、疲れにくいフェルト針などを開発した。また電子部品用精密針の強化にも取り組んでいる。同社が主に手がけているのはプリント基板検査用の精密針。すでに同社の売り上げの25%から30%に達しており、大きな柱になっている。

 電子部品の精密化に伴い、検査用の針も一層細くなっており、同社では直径が30マイクロメートルという超細物の開発にもめどをつけた。もちろん単に細いだけではない。テーパー状に精密研磨したり、表面処理を施すなど加工度は極めて高い。今後もさらに狭ピッチ検査が進むと見られ、同社も「針の限界に達するまで開発を続ける」方針だ。

 同社のキャッチフレーズは「針は愛情」。一般顧客、それも世界の女性に使ってもらう製品だけになおさらだ。安全・安心についても細心の注意を払っている。そのことは、同社の家庭科用教材が、30年も使い続けられていることからもうかがえる。展示会などで直接顧客の声を聞きそれを開発に反映させ、自前で生産し販売する。この仕組みが同社にとっての最大の財産だ。

【コメント】チューリップ株式会社・原田耕太郎社長
簡単な製品では生きていけない

 広島の針といえば、300年もの歴史があり、私が入社した80年前後でもかなりの企業があったが、その後の円高不況などでみるみる数が減っていった。第二次世界大戦前は中国が輸出の大市場だったが、今では安価な中国製品に押されているのが現状だ。しかし残った企業はそれぞれ特徴を持っている。当社のように工業分野に進出しているところもある。いずれにしても簡単な製品では生きていけないということだ。
 それでは市場がないのか、というとそうではない。世界的に手芸用品の展示会は数あり、日本でも「国際キルトフェスティバル」などの集客力はすごい。市場はまだまだある。広島針をブランド化することで、生き残りを図っていきたい。

会社概要

会社名:チューリップ株式会社
住所:広島市西区楠木町4-19-8
業種:レース針、手縫針、編針、電子部品用精密針などの製造・販売
電話:082-238-1144
URL:http://www.tulip-japan.co.jp/