HOME > 事業を広げる > 地域資源活用チャンネル

地域資源活用チャンネル

認定事業計画の事例

国の認定を受けた「地域産業資源活用事業計画」申請事業者の活気ある声をお届けします。

滋賀県

15年かけ開発したこだわりの擬似血管

企業名 聖和デンタル 三類型 鉱工業品 地域資源名 プラスチック製品

ヒューマンエラーの減少めざす

疑似血管「アルカディア」

疑似血管「アルカディア」

 聖和デンタルは1996年3月に歯科技工士でもある岡野仁夫社長が立ち上げた。設立時から義歯などの歯科技工製品を中心に扱ってきたが「開発には約15年かけてきた」と岡野社長が力を込める新製品、ポリビニルアルコール(PVA)を使用した手術練習用の疑似血管や臓器モデルに業容拡大を託している。

 PVAは親水性で水を含みやすく、コンタクトレンズや洗濯のりなどに使われている。医療分野でのPVAは、生体適合性を生かした人体機能補助材として人工の関節軟骨や椎間板などに用いられる。ただ、医師や医学生が内視鏡手術の練習をする際、従来はゴム製チューブがほとんどだったという。

 豚やマウスを使った実証実験もヒトとの血管とは違う。しかも数多い動物を実験台にできない点がある。PVA製の疑似血管は人体の組成に近似するため、実際の手術感覚を体験できる。現物に近似した製品はヒューマンエラーを減少させる。意外にもこれまでは扱っている企業はほとんどなく、岡野社長も「実物の血管に近い感覚で、どんどん練習してほしい」と強調する。

 PVAに着目したのはPVA製のマウスガードをつくっていたからだが、手術練習用のゴム製疑似血管は実物に程遠いと感じていた。疑似血管のPVA配合比率について岡野社長は、社内でも「知っているのは自分だけ」と打ち明ける。苦労した分、11年中に疑似血管と疑似臓器モデルで計三つの特許を取得した。

課題は販路の拡大

龍谷大瀬田キャンパス(大津市)内にある本社の様子

龍谷大瀬田キャンパス(大津市)内にある本社の様子

 これからの課題は販路開拓と岡野社長は考えている。モノづくりに力を入れてきた分、専任の営業マンを置かず、歯科技工製品は納入先の歯科医師による口コミで地道に販売先を増やしてきた。PVAの材料供給支援などで国内の大手メーカー数社とも連携するが、PVA疑似血管と臓器モデルはOEM(相手先ブランド)ではなく、あくまでも独自製品として展開する考えだ。販路開拓には中小企業基盤整備機構の販路開拓コーディネート事業なども活用する。

 価格も「使い捨ての製品だけに、ある程度リーズナブルな価格帯にこだわった」と話す。疑似血管「アルカディア」は直径1ミリメートルが1本6900円で、1.5ミリ、2ミリ、2.5ミリ、3.5ミリメートルが同5700円。10本単位から販売する。疑似臓器シートは、10センチメートル四方で1万円に設定した。

 研究開発で連携する理工学部がある龍谷大学瀬田キャンパス(大津市)内に構えるオフィスには、疑似血管と臓器シートで月産各3000個を製造できるための射出成形機など、装置の体制強化にも乗り出している。

 岡野社長はこれからの10年間が勝負の時、と口元を引き締める。11年7月期売上高は6500万円だが、歯科技工関連品の割合が大半。13年7月期売上高を1億円にまで引き上げ、歯科技工分野と同じレベルにまで手術練習用の血管・臓器モデルを拡充したいと話す。その後は14年が同3億円、15年に同6億円、16年には同9億円と段階的に引き上げたい考えで、“上昇気流”に乗りたいと気合を入れている。

聖和デンタル・岡野仁夫社長

聖和デンタル・岡野仁夫社長

【コメント】聖和デンタル・岡野仁夫社長
人体に近い素材で手術練習強化

 血管の縫合手術は一人前になるまで、個人差があるが5年前後かかると言われている。ただ、動物を使った練習は動物愛護の観点からも数をこなすことは難しい。医療機器のハイテク化が進む一方、医療訴訟は増加傾向にある。人体に近い素材で手技練習を重ねることは習熟への近道につながる。疑似血管や臓器シートを使った手術練習用として、価格も安価に設定した。これからは販促に力を入れたい。中小企業の強みを生かしたニッチ製品だけに、わが社の存在感も製品の評判とともに高まってくるはずだ。

会社概要

会社名:有限会社聖和デンタル
住所:滋賀県大津市瀬田大江町横谷1-5龍谷大学エクステンションセンター201
業種:歯科技工全般、義歯の製作、手術練習用血管・臓器モデルの製作
電話:077-543-7818
URL:http://www.seiwa-dtl.co.jp/