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地域資源活用チャンネル

認定事業計画の事例

国の認定を受けた「地域産業資源活用事業計画」申請事業者の活気ある声をお届けします。

富山

デザインを入り口に、産地伝統の技術を盛り上げる

企業名 能作 三類型 鉱工業品・技術 地域資源名 高岡銅器
能作・能作克治社長

能作・能作克治社長

「うちにもできる」が新分野への一大転機に

 富山県高岡市は、400年間続く銅合金鋳物の産地。鋳造産業は一般的に、問屋を間にして生産を請け負い、納品するのが流れ。1916(大正5) 年創業の株式会社 能作も、茶器や仏具、花器などの受託鋳造を行ってきた。

 しかし現在、デザインに敏感な人の間で話題を呼んでいる同社の商品は“風鈴”。真鍮にメッキを施しただけの材質感、心を震わす新鮮な音色。発売4 年を経過し、人気は上る一方だ。

 始まりは2001年に開かれた市主催の勉強会。「イタリアの有名デザイナーのキッチンウェアを、東京ではこんなのがいいよって紹介されて。お茶の建水と変わらないな、と感じました」社長の能作克治氏がさっそく茶道具を見せたところ、原宿での展覧会出展をもちかけられた。今まで顧客の顔を見る機会がなく、生の声が聞いてみたいという思いもあって出展。展覧会用に作った卓上ベルが有名セレクトショップで扱われることに。しかしそのベルは当初は売れず「店員の方から“これ風鈴にしたら”とアドバイスを頂いて、変更したら一気に」。今まで累計で2万3,000個余りを販売。現在はデザイナーとのコラボによって30ほどのデザインを揃えるが、売れ筋は最初のもの。デザイナーは能作氏本人だ。

生活に近いアイテムで、技術力を活かしたい

首都圏のデザイナー小野里奈氏による、形も用途も自在に変わる「メッシュトレイ」。今年の「和のある暮らしのカタチ展」では審査員特別賞を受賞。

首都圏のデザイナー小野里奈氏による、形も用途も自在に変わる「メッシュトレイ」。今年の[和のある暮らしのカタチ展]では審査員特別賞を受賞。

 風鈴のブレイクが、今回の錫100% 製の商品開発へとつながった。「同じく店員さんが“金属で身近なものが欲しい、例えば食器”。しかし保健所に問い合わせると、食器は真鍮では作れないということで」許可される金属のひとつ、錫に着目。「錫は安定性がなく、手で力をかけると曲がります。今までそれは金属としてのデメリットだった」これを逆手に取り、柔らかいまま形成する“シリコーンゴム鋳造”の技術を開発。現在はデザイナーの発想力とのコラボで、多彩な用途のアイテムを続々と製作中。「金属なのに変形自在、というのは誰も体験したことがない」自由に形を変えられるエンドユーザー参加型の特異な商品だ。


 介護用カトラリー(食卓用ナイフ、スプーン、フォークなどのこと)の開発も同時進行中。錫は抗菌性が高く、金属アレルギーにならない物質。「スプーンをお箸みたいに持つ高齢の方もいるので」“ 形状自由”の可能性は十分に生かせそうだ。

メーカーの販路開拓は、情報の発信が最も重要

商品特徴であるシンプルで美しいフォルムを伝えるパンフレット。写真は報道カメラマンの経験がある能作氏が撮影することも。

商品特徴であるシンプルで美しいフォルムを伝えるパンフレット。写真は報道カメラマンの経験がある能作氏が撮影することも。

 中小機構 北陸地域支援事務局の川上プロジェクトマネージャー(PM)は、同社の営業スタイルを「新しいビジネスモデル」と評価する。能作氏にとって新商品の開発・販売は、現在まで続いてきた商売の形態を保つことが大前提だった。「問屋さんを飛び越えることは御法度。でも自社開発した商品なら自社で直接販売してもいいだろうと。しかし間にもし問屋さんが入っていたら、取引はしない。条件を最初に決めて守っているから、大きな障壁なく進んでいるのかもしれません」営業や売り込みはこれまで行ったことはない。「営業がいないので、来る人に対応する。つまり、主導権をうちが握っている」今までと同様、メーカーとしてのあり方が、ブランド価値向上をもたらす営業スタイルにつながっているのだ。

 原則的に断るのは嫌だという氏だが、規模と生産力の兼ね合いもあり、品質の高いものを作ることでニーズに答えたいと考えている。「弊社の販路開拓の中心は、情報発信。素材や技術を正直に見せることが、メーカーには最も大事」と強調する。

「今までがあっての新技術」で高岡の復興を目指す

 介護用カトラリーは、デザイナー安次富(あしとみ)隆氏と組み、大学や介護施設での評価を受けながら進行中。キッチンウェアの開発にはフードコーディネイターが加わった。今後は中小機構との連携もさらに深め、ネットワークを構築したいと言う。県外の出身で、この地に来て鋳造を一から学んだ能作氏。「高岡は“旅の人(地域外からの人)”に暖かい」という。

 現在は高岡全体で、ピーク時の4 割まで売上が低下。同社の商品は売上拡大中だが、狙いは売ることではなく「技術を見てもらい、異業種の人から“こういうのを作って”という依頼を引き出すこと。弊社の技術は、高岡の技術があるからこそ。これが産地技術として認められて仕事がたくさん入れば、新しい産地産業になる可能性もある」。必要な整備が終わったら技術を公開し、産地全体で生産連携をとっていきたいという能作氏。高岡の未来に対する思いが、同社の優れたものづくりを支える原動力と言えそうだ。

【コメント】能作・能作克治社長
メーカーとしての責任を貫くことが、販路開拓につながる

 弊社は展示会などに出展した時も、あえてこちらから売り込むことはありません。メーカーは作るのが仕事で、売ることは仕事ではないという意識があります。その代わり、自分たちの商品には自信がある。値段を安くしてまで買ってくれとは言いづらいけれど、いいものを作る技術が必要な人には活用してもらいたいのです。そのためには、素材や技術についてどんどんPRすることが重要だと思います。地元の小学生の見学も受け入れていますが、それは衰退傾向にある高岡銅器のイメージを変えてもらいたいから。10年間続ければ約5〜6万人が来るから、高岡が変わるかも知れません。

 

会社概要

会社名:株式会社能作
住所:富山県高岡市戸出栄町46-1
業種:製造業(銅・錫製品)
電話:0766-63-5080
URL:http://www.nousaku.co.jp/