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地域資源活用チャンネル

認定事業計画の事例

国の認定を受けた「地域産業資源活用事業計画」申請事業者の活気ある声をお届けします。

岡山

人と自然が培った里山文化に癒され、学ぶ研修プログラム

企業名 美咲ファイネスト 三類型 観光資源 地域資源名 大垪和の棚田
美咲ファイネスト・貝阿彌敏美社長

美咲ファイネスト・貝阿彌敏美社長

ふるさとと都市の接点探しに、本腰を上げる

 岡山県久米郡美咲町の“ 大垪和(おおはが) の棚田”。すり鉢状に広がる棚田は『日本の棚田百選』にも選ばれた絶景だ。大きな谷をぐるりと囲む縞模様。青々とした稲、びっしり実った稲の穂儀(ほぎ)(※)、幻想的な雪景色。人と自然が生み出す大パノラマに、見る人は畏敬の念に包まれる。

日本の棚田百選に選定された“大垪和の棚田”。近年は過疎化・高齢化の影響を受け、耕作放棄地も増加。

日本の棚田百選に選定された“大垪和の棚田”。近年は過疎化・高齢化の影響を受け、耕作放棄地も増加。

 美咲ファイネスト株式会社の社長、貝阿彌(かいあみ)敏美氏は美咲町の出身。東京のマーケティング調査会社に勤務していた頃「たまたま“ 都市と地方の交流による新事業の創出”がテーマの調査業務に、美咲町を対象に取り組んだのです」調査が深まるほど、今後の美咲町や日本の農村はどうなるのだろうか、と考えるようになった貝阿彌氏。このまま調査だけで終わらせてはいけない。そう考え「2005(平成17)年4月に会社登記をして、すぐに調査事業の次となる、美咲町の基盤整備事業の委託先公募に申請しました」。


 昨今の農村ツーリズムにはあまり可能性を感じていなかった貝阿彌氏。差別化のポイントを探してさらに調査を進めるうちに、都会の人が農村体験に求めている本音が見えてきた。

里山の人と時間に癒される「農村セラピー」

収穫体験では、昔ながらの棚田の稲刈りと穂儀体験の後、新米をいただく。手ほどきは今年84歳になる棚田の達人をはじめとする地元の農家。

収穫体験では、昔ながらの棚田の稲刈りと穂儀体験の後、新米をいただく。手ほどきは今年84歳になる棚田の達人をはじめとする地元の農家。

 都会の人に聞いたイメージ調査では、田舎に対するマイナスイメージはほとんどなく“ああいうところで暮らしたい”という要望が高かった。「求められる農村のイメージを最大限引き出すには、農村に来ていただくのが最適」そこで“農村セラピスト”を置いた観光プランを構想。県外から移り住んだ陶芸家、84歳の棚田米農家、昼間は農協に勤める “星の案内人”まで。プログラムではセラピストを通してさまざまな体験を提供する。「炭焼きのおじいさんなんか、生まれてこのかた町の外に出たことがないって自慢しています。話を聞くだけで心が安らぐ人」セラピストの基準は“ 時間を共有できる人”。同社のホームページに掲載された彼らのメッセージからは、自身の好きなこと、守ってきたことへの語り尽くせない思いが伝わってくる。観光とは無縁の生活を送ってきた彼らだが、依頼した時は「二つ返事でOK。大抵は喜んでくれました」。

 森林セラピーなど、自然に癒しを求める観光は他にもあるが「私たちの構想は自然ではなくて“人”。里山文化というのは人が作ったものだから」。サービス名の『美咲町農村ルネッサンス倶楽部』も、人間と自然の調和を見直す、という意味からの命名だ。

共同作業で多くを学べる、棚田での研修

 棚田は「現代に求められる深い精神性が詰まった文化」と貝阿彌氏。「川の水を引かず、わき水を貯める土手造りから始める。収穫後は穂儀をして太陽をたっぷり当てる。残ったワラでわらじを編んだり、正月の飾りを編んだり」美しい暮らしぶりが息づく里山文化の中でなら「食事でも “ 頂いている”という気持ちが自然とわきます。この精神性に触れることが、癒しにつながるのだと思います」。

 こうしたセラピー効果に“企業研修”を組み合わせようと考えたのは「農作業が共同作業であることに思い当たったから」。モニターツアーで棚田体験を実施した際に、貝阿彌氏は面白い現象を発見した。「自然と自分の得意な仕事につき、しかもお互いカバーし合う。男性は力仕事を、女性はお茶を入れたり。オフィスならそんなことをしない人でも、共同作業で男女の役割分担を自然に意識するようです」根気のある人、まわりを見る人、手抜きをする人。個々の性格もかなり出る。「新入社員研修にもいいと思います。同じ釜の飯を食べて共同作業をして、というのが堅苦しくなくできる」農村体験プログラムを企業研修にシフトすることで、その独自性はさらに際立つ。

日本の農村風景を守るため、進化を続けなければ

安らぎの風景の癒しに加え、乗馬を使ったホースセラピーも準備。日本でも珍しい「乗馬療法」を受けられる。

安らぎの風景の癒しに加え、乗馬を使ったホースセラピーも準備。日本でも珍しい「乗馬療法」を受けられる。

 プログラム第一弾に向けて進めている調査では、企業を500社に絞り、4つの方向のニーズを探るアンケートを実施した。小規模な人材研修が予想される企業、生活習慣病・メンタルヘルスケアなどに関心の高い企業、社員自らが安心・安全について学ぶ必要がある食品関係企業、顧客向けのインセンティブとして棚田付きの別荘などを用意するという企業の4タイプだ。商品開発の後は「要望に対応するために、オーダーメイドでやっていく必要がありそう」と貝阿彌氏。きめ細かい対応のため、医療関係者などそれぞれのプロとの協働体制を構築中だ。

 「まずは視察用の基本プログラムを用意する」と、体験の機会を広げる考え。里山の文化を守ることが使命だが「進化は続けなければ。それが難しくて面白い所。現地で待つのではなく、企業の前線の人たちとも意見交換して作っていきたい」。里山文化を残しながら、都会の人もより良く働ける。全国の農村活性化へのヒントとなるプログラムを確立するべく、貝阿彌氏は邁進している。

【コメント】美咲ファイネスト株式会社・貝阿彌敏美社長
日本の農村の課題を解決する、観光のモデル事業を目指して

 当社が行なった都会の人の農村に対する意識調査では、農村の食の安全、安心といったものにも強い関心が寄せられていました。目に見えるものを産地で食べる、ということの他にも、品質に対する信頼関係のようなものが、農村には期待されているのだろうと思いました。都会の人たちが求めるこうした農村のイメージを最大限に引き出すには、インストラクターではなくてセラピストと共に農村での時間を共有してもらうスタンスがよいと考え、「収穫、味覚、創作、癒し」の4つの体験カテゴリをそろえました。この事業は「農村で何をするのか」という、いわば日本のテーマと同じ。難しいですが確立させて、今後の農村観光のモデルになれたらと考えています。

会社概要

会社名:美咲ファイネスト株式会社
住所:岡山県久米郡美咲町錦織1224-1
業種:美咲町農村体験プログラム事業
電話:0868-66-0187
URL:http://www.misaki-nouson.com/