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地域資源活用チャンネル

認定事業計画の事例

国の認定を受けた「地域産業資源活用事業計画」申請事業者の活気ある声をお届けします。

島根県

「地域の満足」から発想する、手作り桑茶ブランド

企業名 桜江町桑茶生産組合 三類型 農林水産物 地域資源名
桜江町桑茶生産組合・古野俊彦代表取締役

桜江町桑茶生産組合・古野俊彦代表取締役

余生を過ごすつもりが、町おこしの牽引役に

 島根県江津市桜江町は、松江市からも広島市内からも100km 以上離れた、中国山脈の険しい山道を越えてたどり着く山間地帯。有限会社 桜江町桑茶生産組合の社長、古野俊彦氏がこの町に移ったのは51歳の時。福岡で旅行代理店を営んでいた古野氏は、特産のエビネランの栽培施設見学で訪れ、すぐに惚れ込んだ。雄大な川(江ノ川)ときれいな日本海( 車で約20 分)、広葉樹林が8〜 9 割。「手つかずの自然が残るこんな地域はありそうでない」元気なうちに友達を作りたいと早めにリタイアし、しばらく気楽に農業三昧。若い頃から外国を飛び回っていた古野氏は「桑畑を見たのも初めてでした」。しかし桜江町の桑畑はほとんどが遊休地だった。かつては県内一の養蚕地。「30ha(ヘクタール)も遊んでいる。何とかしたら?と町の産業課に提案したら“ ではあなたが”と。それがスタート」町を知れば知るほど、古野氏には気になる事実が増えていた。急速な人口流出。稲作は続いていたが桑の生産はゼロ。県全域で公共事業の土木工事も激減。そこで古野氏が発想したのが「人手のかかる」桑を使った産業創出だった。

農業もスピードが勝負。年1回なんて待たない

 桑をそのまま活用した“里山の再生”が最初のテーマ。「桑の栽培は皆さんベテランですが、経験は養蚕だけ。他の用途をぜひ考えるべきということで」浮上したのが桑茶。当時、糖尿や血糖値抑制への効果が学会で発表され、市場も拡大中。そこで自宅のガスコンロで桑茶を作り、少々自信ができた所で県の試飲会に出品。そのおいしさが評判に。

 桑茶を思い立ってからこの間、わずか3 ヶ月。「農業は失敗してやり直そうとすれば来年。だからこそスピードがないと駄目」この感覚は、旅行業で身につけたと吉野氏は語る。「座席や宿は、生鮮食品以上に厳しい。○月○日に100人予約したら、それまでに100人さばかなければ全部無駄になってしまう。かといって50人の枠に500人来た場合も、450人が無駄に なる」逆算してどう動くべきか。経験が培ったスピード感覚は、古野氏の目標にも表れている。「5 年で遊休地30haを解消しようと。桑葉の収穫量にして約100t。売り先も確保しなければ」生産と流通という“ 両輪”のバランスを取るため、事業はさらに加速していく。

養蚕用でほぼ有機農法だったため、「有機JAS」の認定を取得できたことが差別化に。有機のため雑草の手入れが大変

養蚕用でほぼ有機農法だったため、「有機JAS」の認定を取得できたことが差別化に。有機のため雑草の手入れが大変

使命は量産、だからコンセプトも「大衆向け」

 2〜3kgを作って試飲会に出品した所、いきなり量販店が3tを発注。「“持ち帰って考えます”って、断らなかった自分もすごい。すぐに役場に相談です」ペットボトル入りのお茶として売り出されたが “ 棚の定番”までには成長せず、後に残 った桑茶は「桑抹茶、桑あんこ、桑マシュマロ、桑焼塩。薬屋向けから人工飼料まで、可能性のあるものにどんどん突っ込んだ」ことでラインアップが充実した。毎年2〜3haの開墾で、生産量は2〜3t ずつ増量。そこで差別化となるのが“有機JAS”認定だ。認定はかなり遡った時期から有機であることが条件だが、元来養蚕用に有機農法を行なっていたことが財産だった。

 同社の桑茶は、発売当初から煎茶や麦茶の感覚でブランディングしてきた。「年間20tのお茶といったらすさまじい量。薬の感覚で販売したら何十年かかるか。リーズナブルで全世代的に飲めるようなお茶でなければ、とても5年で桑畑のある里山風景なんて再生できない」古野氏の発想は、産地や生産量ありきで商品価値を構築するという“地域の満足”から出発するマーケティング。もちろん結果は、消費者も健康的なお茶をリーズナブルに飲めるのだから嬉しいことだ。

利益ではなく雇用増こそ、地域の財産

 もちろん品質も追求。「嗜好品であると同時に予防医学的にも貢献しよう」との考えから、大学との連携で研究が進行中。世界の学会で桑茶の効能が広まることが古野氏の狙いだ。

 認定申請をサポートした中小機構 中国地域支援事務局のプロジェクトマネージャー(PM)たちは「薬事法の厳しさもあって、特定保健用食品などの認定は時間もかかる。産学連携ならデータも揃い、品質も確かになる」と、同社について後手になりがちな品質向上をスピーディーにクリアしている好例と見ている。

 現在はインターネットなどを通じた直販が売上の15% 程度。直販を増やしたい大きな理由は雇用だ。「原料なら1人で済んでしまうが、直販なら約5倍の雇用が可能」生産地での雇用という“地域の財産”を生み出すのが「地域産業の役目」と言い切る。今後は雇用を県内や近隣に広げると共に、大麦や柿の葉などのお茶原料の生産に取り組みたいという古野氏。「決めたら、あとはまっすぐ。途中でぶれると届かなくなる」生産と流通の“ 両輪”とは、信念と柔軟性の“ 両輪” でもあるのだろう。

販売中の青汁のほか、有機栽培の大麦・ケール・柿の葉を組み合わせた商品を開発予定。いずれも無添加

販売中の青汁のほか、有機栽培の大麦・ケール・柿の葉を組み合わせた商品を開発予定。いずれも無添加

【コメント】桜江町桑茶生産組合・古野俊彦代表取締役
人に合わせて仕事をつくる。それが地方企業の使命

 今後の事業では、有機栽培の農産物と合わせた少量多品目の商品を開発していきます。桑の野外作業が終わったら、次は大麦(10月ぐらいから4〜5月)、というように、他の農産物があれば桑との作業バランスがとれます。団塊世代の島根出身の約7 割は、島根に帰りたいと言うそうですが、しかし収入もないのに帰ってどうする、となるらしい。農業が年間200万〜300万円の収入源になれば、ゆっくり余生を過ごせます。

 多くの雇用の受け皿をミスマッチなく作ることが、地方企業の役割だと思っています。そのためには、仕事に合わせて雇うのではない。いる人に合わせて仕事を考えなければいけないんです。

会社概要

会社名:農業生産法人 有限会社桜江町桑茶生産組合
住所:島根県江津市桜江町市山507-1
業種:健康食品生産・販売
電話:0855-92-0547
URL:http://www.kuwakuwa.tv/