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地域資源活用チャンネル

認定事業計画の事例

国の認定を受けた「地域産業資源活用事業計画」申請事業者の活気ある声をお届けします。

沖縄県

高級・健康食材としてヤギチーズを全国へ

企業名 はごろも牧場 三類型 農産水産物 地域資源名 山羊
はごろも牧場・新城将秀顧問

はごろも牧場・新城将秀顧問

 沖縄本島の東海岸沿いを那覇から車で1時間足らず、サトウキビ畑の向こうに海が広がるのどかな光景が現れる。中城村だ。その一角でメエーと、これまたのどかな鳴き声で150頭の山羊が迎えてくれた。

沖縄の食文化が背景

 はごろも牧場創業者(現顧問)の新城将秀さんは元々建設会社の経営者。公共事業削減で建設業が不振を極めていた1998年当時、沖縄で全国ヤギサミットが開かれた。サミットに参加し、牛乳にないヤギ乳のよさを知った新城さんはひらめいた。「沖縄にはヤギを食べる食文化がある。乳もいける」と。

 ところが、実際やってみるとこれが難しい。「素人の悲しさで情報もないし、飼育は何とかなったが加工は試行錯誤の繰り返しだった」。特に困難を極めたのがチーズ。ヤギ乳のチーズはフランスではシェーブルチーズといって高値で取引される。世界的に見るとヤギ乳の大半はチーズ向けだ。

 当然、新城さんもチーズづくりに挑戦したが、高温多湿の気候も災いし、悪戦苦闘。冷凍技術や湿度管理などに工夫を凝らし、ようやく商品に仕上げるまで5年近くかかったという。昨年、息子の慎一郎さんに社長を譲ったが、いまでもチーズ製造責任者は新城さんが務める。

同平田哲兵取締役研究開発アドバイザー

同平田哲兵取締役研究開発アドバイザー

琉球大と機能性の研究を

 2006年には琉球大学農学部との連携をスタート。博士課程の平田哲兵さんが同社の取締役研究開発アドバイザーに就任し、ヤギ乳の機能性解明や商品開発に拍車がかかった。ヤギ乳の脂肪分には共役リノール酸(CLA)や中鎖脂肪酸などの機能性脂質が豊富に含まれている。CLAは脂肪の燃焼を早めるためダイエットやがん予防効果がある。

 平田さんらは餌を工夫し、ヤギ乳のCLA含有量を2倍以上にする飼育技術に成功した。同社と琉球大で特許を出願する計画だ。「沖縄でよく食べるピーナツ豆腐の粕を餌に加えた。これも地域資源の有効活用です」と平田さん。そのほかにもヤギ乳は牛乳に比べ脂肪球が小さく消化吸収が良い、牛乳で下痢をする原因の乳糖含有量が半分程度、牛乳アレルギーの原因物質の一部が含まれていないため一部の患者で代替乳として利用の可能性があるといった特徴がある。

 両者の共同研究はヤギ乳の機能性の科学的裏づけを得ると同時に機能性向上技術の開発、機能性を活かした商品開発へと展開している。すでにヤギ乳から脂肪分を抜いてCLA高含有のダイエット効果サプリメントを試作。さらに脱脂乳の乳糖を分解する技術も開発した。

ヤギはザーネン種とアルパイン種が主体。乳脂肪分改善のためニュージーランドからヌビアン種とトッケンブルグ種を導入。琉球大学と提携し新たな品種作りを始めている

ヤギはザーネン種とアルパイン種が主体。乳脂肪分改善のためニュージーランドからヌビアン種とトッケンブルグ種を導入。琉球大学と提携し新たな品種作りを始めている

ブランドを"白ヤギさん"に統一

 犬や猫は乳糖消化酵素がないので乳糖フリーが求められている。「ペットフードメーカーが採用を検討中」(平田さん)だそうだ。サプリメントはコスト高で商品化に至っていないが、「ペットフードを含めた一連のサイクルが回れば、ビッグビジネスとして成立する」(同)と意気込んでいる。

 ヤギ乳の弱みは生産量。1頭当たりの乳量は牛の20分の1くらいで、当然、価格も高くなる。同社は希少性を逆手にとり高級食材として、また機能性を強調し健康食材として販売を目指す。販売チャンネルの開拓や商品パッケージ、ネーミングなども高級食材、健康食材にふさわしいものにしていく方針。

 現在は、県内のリゾートホテルや空港売店などが販路の中心だ。今後、チーズは県外の高級レストランやチーズ専門店などの販路開拓も進める。ブランドはチーズで使っている「ピンザブラン」に全商品を統一する。ピンザは新城さんの出身地である宮古島の方言でヤギのこと、ブランはフランス語で白、つまり「白ヤギさん」である。

沖縄にヤギの島構想

 もともと沖縄では食肉用に全国の半数以上という多くのヤギが飼育されている。これに乳用を加えて将来は沖縄全島を"ヤギの島"にする構想をもっている。メスは乳用、オスは食肉用と無駄がないうえ、かわいいヤギは観光資源にもなる。飼育農家からヤギ乳を集荷して同社が加工し販売するという壮大な夢を描いている。すでにいくつかの自治体や農家とヤギ乳引き取りの検討も始まっており、"正夢"になる日も遠くはなさそうだ。

【コメント】はごろも牧場・新城将秀顧問
イメージだけではない、科学的な裏づけが必要

ヤギチーズのほか、ヤギミルク石けん、飲むヨーグルト、ヤギミルクも商品化

ヤギチーズのほか、ヤギミルク石けん、飲むヨーグルト、ヤギミルクも商品化

 素人が異業種に挑戦するのはたいへんなことだというのがよく分かった。でも琉球大も一生懸命に協力してくれるし、課題は多いが楽しみも多い。ヤギ乳は未解明の部分が多いので、大学と一緒になって研究開発しながら進めていく。

 牛乳に比べて生産量やコストの問題があるが、牛乳にはない機能性を訴え、健康のためにはお金を惜しまない人々に浸透させることができればよいと思っている。それには機能性に対するエビデンス、つまり科学的裏づけが不可欠だ。また日本全国や海外に販売するには、保存性の高い商品の開発も考えないと。

 やるべきことはまだまだたくさんあるが、産業の少ないわが沖縄県だから、地域資源を活用した新しい産業が少しでも前進していけばいいなという思いで、一生懸命に取り組んでいる。

会社概要

会社名:株式会社はごろも牧場
住所:沖縄県中城村北上原985-1
業種:ヤギ飼育、ヤギ乳加工品製造
電話:098-895-5119
URL:http://www.hagoromo-bokujo.co.jp/