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地域資源活用チャンネル

認定事業計画の事例

国の認定を受けた「地域産業資源活用事業計画」申請事業者の活気ある声をお届けします。

北海道

耐熱性の小樽切子ガラスを開発

企業名 深川硝子工芸 三類型 鉱工業品・技術 地域資源名 小樽ガラス
深川硝子工芸・出口新一郎社長

深川硝子工芸・出口新一郎社長

小樽ブランドとしての価値を守る

 古くからの街並みや運河で人気のある北海道小樽市。明治34年(1901年)に浅原久吉氏が創業した浅原硝子(現在の北一硝子)はニシン漁に使う浮き玉や石油ランプの製造を始め、繁栄を築いた歴史をもつ。今も小樽の土産としてガラス工芸品は有名だが、従来は浮き玉やアクセサリーに使うトンボ玉のイメージが強かった。

 「小樽のガラス製品は50〜60代の人に人気が高く、リピーターも多い。ガラス食器の雑貨や高級品を開発し30〜40代の女性をターゲットに取り込めば、息の長い需要が見込める」と、北一硝子に小樽切子ガラスを卸している深川硝子工芸の出口新一郎社長は語る。

 明治39年(1906年)創業の同社は長く東京で食卓用グラスなどを製造していたが、03年に北一硝子の誘いを受けて移転した。現在、社員の半分は小樽出身。出口社長は「雇用先の多い東京より小樽の方が人材を集めやすい」と移転効果の一端を述べる。平均年齢は20代と若く、定着率も良いという。

 同社は、切子加工を施した耐熱性硬質ガラス食器の開発に取り組んでいる。一般的にガラスは温度の変化に弱い。しかし冬季の平均気温が氷点下となる北海道では、暖房の効いた建物内と外との急激な温度差にも対応できる強度が求められる。また熱い飲み物を飲む際に使える耐熱ガラスへの需要も高いと考えた。

 カットを施すにあたり、通常の切子加工に用いる機械では硬質ガラスを扱えないため、小樽の企業に機械製造を依頼した。「小樽の精密機械はレベルが高い」(出口社長)。小樽切子は江戸切子や薩摩切子と異なり、色ガラスの上に色ガラスをかぶせてカットを刻むため多彩な色の組み合わせを楽しめるのが特徴だ。同社では、液体を入れると底に刻まれた模様がいくつも浮かび上がる万華鏡グラスなどのユニークな小樽切子を生み出している。

 同社は製造に特化し、製品は北一硝子の店舗のみで販売。距離が近いため問屋や運送会社を介する必要がなく、値段を抑えることができる。目の届く範囲で販売することで信頼性も保てる。ほかからの引き合いもあるというが、「小樽でしか手に入らないというブランドイメージが大事。飽きられてしまってはいけない」と、あくまで北一硝子のみで販売する姿勢を貫く。北一硝子とは人事交流も行い、協力して社員を育成している。

耐熱性硬質ガラス食器。中の水が沸騰するまで電子レンジで加熱しても割れない

耐熱性硬質ガラス食器。中の水が沸騰するまで電子レンジで加熱しても割れない

環境に配慮し、オール道産の製品作りへ

 ガラスの溶融には、北海道産の天然ガスを燃料として使用。天然ガスは燃焼時の二酸化炭素排出量が石油や石炭に比べて少ない。また、結果的に昨今の石油高の影響をほとんど受けないという効果もあった。

 溶融の作業は高熱を伴うため、気温の低い小樽は環境として適しているという。1300〜1500℃にもなる釜の廃熱を無駄にせず活用するシステムも整えている。排気が出る煙道(煙突につながる道)に水道水を循環させて温水を作り、暖房や給湯、ロードヒーティングなどに利用。雨水・融雪水は工場内で循環利用した後、沈殿ろ過後に汚水処理用水として排水している。こうしたリサイクルは環境への負荷軽減は、同時に燃料・水道代の削減につながった。

 現在、注目しているのが北海道上ノ国町で産出され、岩盤浴などで使われている天然鉱石「ブラックシリカ」。蓄温効果を利用し、耐熱ガラスの材料として試作開発中だ。北海道立工業試験場にテストを委託し、耐久温度や安全性、効能などのデータを集めている。「ブラックシリカをガラスの材料に活用できれば、研究開発・燃料・原料・製造・販売を道内でまかなった商品を作ることができる」と、出口社長は意気込む。

温度を管理するシステムを導入し、廃熱を無駄にしない

温度を管理するシステムを導入し、廃熱を無駄にしない

【コメント】深川硝子工芸・出口新一郎社長
ほかがやらないことをやる

 ポリシーは「ほかがやらないことをやる」。現在の20〜30人体制を拡大するのではなく、今の規模で新しいジャンルを作り出し、小樽に切子職人を増やしたい。観光客向けだけではなく、地域の業務などで耐熱ガラスを使ってもらいたいと考えている。北一硝子をバカラやスワロフスキーのような存在のガラス専門店にしたい。

 環境に与える影響など、今後ますます外野の声が厳しくなることが予想される。その際にきちんと対応できる後継者を育てたい。

会社概要

会社名:株式会社深川硝子工芸
住所:北海道小樽市有幌町2-3
業種:ガラス製品
電話:0134-31-3002
URL:http://www.fukagawaglass.co.jp/