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地域資源活用チャンネル

認定事業計画の事例

国の認定を受けた「地域産業資源活用事業計画」申請事業者の活気ある声をお届けします。

静岡県

産地活性化にデニムの着物を開発

企業名 榎本 三類型 鉱工業品 地域資源名 遠州織物

海外製品に押される

デニム地のゆかた

デニム地のゆかた

 静岡県西部の遠州地方は、江戸時代から綿織物の産地として成長し、その中心地である浜松は全国有数の繊維街として発展した。浜松市に本社を置く榎本は1934年の創業で、ゆかたを中心にインテリア用品などの企画から販売までを業務としている。
 近年、繊維産業は中国などアジア各国の攻勢に見舞われ、規模縮小を余儀なくされてきた。浜松市の産業も楽器やオートバイ、自動車に移り、繊維のイメージは失われつつある。国内市場全体を見渡しても、低価格帯商品が海外製に奪われた。その結果、産地では利益性が高く競争相手の少ない高級着物が生産の主流となっている。
 しかし、これら高級品ばかりでは消費者の着物離れがさらに進み、業界の縮小傾向は加速する。そこで同社は日常生活で手軽に着られる着物をと、ジーンズなどに使われるデニム生地を活用した製品開発に乗り出した。もちろんそこには、遠州織物の製造ノウハウや充実した分業体制、販売ルートを生かすことで「織物の街、浜松の活性化につなげたい」(天野統啓常務)との思いも含まれている。

部門統合から生まれた発想

生地の幅も広げた

生地の幅も広げた

 ゆかたを大都市圏の問屋へ納入していた同社だが、2007年に小売店との直接取引に業態変更した。すでに97年に、生活用品は雑貨店や家具店に直接販売していたことから、これを機に各部門をファッション事業部として統合。この機構改革は「部門間の垣根を越える環境になり、製品開発にも好影響を与えた」(同)と語る。
 着物の幅は古くから、36センチメートルが一般的だ。大きくなった日本人の体形に合わせ一部の生産者はこの幅を広げてきたが、それでも40センチメートルが精いっぱい。この幅で生地が作られ続けている理由は、着物の持つ伝統や歴史の影響もあるが、市場規模が縮小する中で、広い幅の生地を生産できる織機の設備導入が進まないことも原因となっている。
 一方、テキスタイル部門で使用する生地の幅は、112センチメートルだった。同社はファッション事業部に統合することで部門間の壁を崩した結果、“素材の常識”も打ち破ることに成功した。つまり、歴史ある遠州織物の製造ノウハウを活かし、綿という天然素材を使用した112センチメートルと幅の広い着物用織物や着物、さらに和装小物などに活用するという発想が生まれたわけだ。

 新製品の素材に決めたデニム生地は硬くて重い。この特徴が生かされジーンズが生まれている。しかし、全身を覆う着物類には不向きだ。そこで軽く柔らかくするために、ナイロンとポリウレタン素材を加え、伸縮加工を施した。開発にはフジボウテキスタイル(東京都中央区)のファッションテキスタイルセンター(浜松市南区)が協力。「もちろん糸染めや織りなど、地元の中小企業にもご協力頂いた」(天野常務)とうれしそうだ。
 さらに見た目にもジーンズらしくしようと、色はもちろん、生地の縫い合わせ部分はステッチ加工を施すなどの工夫がなされ、試作品は完成する。またプリント柄や刺しゅう加工、さらに薄くて軽い生地の開発などラインアップの充実化も計られている。

販路拡大が課題

 今後は、ゆかたで培った販路を活用し、振り袖や冠婚葬祭向け、ゆかたといった既存商品に加え、気軽に着られる日常用の着物として全国の着物専門店や百貨店にPRしていく。同社の市場調査では着物などの和装製品の需要は多いという。高級着物と違い、低価格で扱いに慣れた素材なら、普及する可能性は高いと見ている。現在の主力製品のゆかたは夏に限定されたもの。開発品はオールシーズンの商品として、第2の柱に育てる考えだ。

【コメント】榎本・天野統啓常務取締役
地域の業界活性化に

榎本・榎本浩明社長

榎本・榎本浩明社長

 着物は伝統ある日本の民族衣装。しかし、着物は高級品で、気軽に手は出しづらく、その扱いも不慣れな人が多い。一方、当社の調査では着物を着たいという消費者の願望は大きい。そこで、着る機会を消費者に与えられ、今までにないカジュアルなもの、さらに老若男女に親しまれるものとしてデニム生地を使用した製品を開発している。
 色はもちろん素材などにも工夫を施した。誰もが簡単に日常生活で、また靴やセーターなどと一緒に着られものとして広め、当社はもちろん、綿織物の産地、浜松の業界活性化につなげたい。

会社概要

会社名:榎本株式会社
住所:静岡県浜松市中区砂山町329-4
業種:婦人、紳士服地・ゆかた・リビング用品の企画・販売
電話:053-458-3710
URL:http://www.enomoto-hamamatu.co.jp/