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川口で映像産業振興−国際映画祭10回目、撮影に工場貸し出しも

 首都圏屈指の製造業集積地である埼玉県川口市で、映像産業の花が開きつつある。市が埼玉県などと主催している映画祭「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」は2013年に10回目を数え、若手監督の登竜門として定着している。映画の撮影場所の誘致、撮影支援の「フィルム・コミッション」も成果を上げている。撮影現場として工場を貸し出す製造業も少なくない。(さいたま・森崎まき)

 埼玉県川口市は県南東部に位置し、荒川を隔てて東京都に隣接している。荒川越しに見える都心の高層ビル群と住宅地との対比が独特の雰囲気を醸し出す。鋳物、機械、植木などの地場産業が集積しており、多様な画が撮れる街だ。

 市と映像産業の縁は深い。吉永小百合さんが主演した62年の映画「キューポラのある街」は川口市が舞台。NHK川口ラジオ放送局の跡地は現在、映像制作拠点「SKIPシティ」となり、映画監督を目指す若手作家向けインキュベートオフィスを擁している。また04年にスタートした映画祭は若手の作品発表の場になった。審査員には大手映画会社のプロデューサーらが名を連ねている。13年は例年に比べて約2000人多い約1万人を集客した。

 独自の映像産業振興も成果を上げつつある。その一つがフィルム・コミッションだ。市役所内に事務局を置いており、映像制作会社からの問い合わせに応じて撮影場所の誘致や撮影支援を手がけている。市内の風景を各メディアへ露出し、ブランド価値を高めてイメージアップにつなげる。使用料収入も見込める。12年度は60本以上の誘致実績を積み上げた。SKIPシティなどの広大な撮影場所を確保できることもあり、堀伸浩広報課長は「年によって変動があるが、問い合わせは増加傾向にある」と笑顔をみせる。

 工場を撮影場所として提供する会社もある。標準歯車メーカーの小原歯車工業(埼玉県川口市)の本社工場は度々、撮影場所になっている。小原敏治社長は「レイアウト変更などに柔軟に対応している」と協力的だ。

 受注競争の激化を背景に、製造業から業種転換した会社もある。軸受箱(プランマブロック)製造を手がけていた大泉工場(同)は08年に製造業から完全撤退し、レンタルスペース事業を始めた。本社工場跡を撮影場所として貸し出している。

 住民の理解も欠かせない。このため、新作映画の撮影の様子を見学できる機会を設けてメディア・リテラシーを高めている。市内の小中学校では映像教育が必修授業になっている。地域のブランド価値の向上は、地方自治体にとって共通のテーマ。川口市は映像産業に、この解を見いだしている。


【2013年8月21日 日刊工業新聞社】