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地産地消・進む現地調達/住友化学−トマト栽培に最新技法導入

 9月22日に創業100年を迎える住友化学。その発祥は愛媛県新居浜市に設置した肥料製造所にある。国内総合化学大手に成長した現在も肥料や農薬の製造販売は主力事業で、農業資材や農作物の販売、栽培指導を行うグループ会社を持つ。こうした自社の農業関連事業を日本の農業活性化につなげようと、地方の耕作放棄地を活用した農業法人「住化ファーム」の運営という新たなビジネスモデルの構築に乗り出した。(水嶋真人)

 JR大分駅から2両編成の豊肥本線で約50分。無人駅の菅尾駅(大分県豊後大野市)からタクシーで山あいの森を抜けると、雑草が生い茂る耕作放棄地の一角に最新式のビニールハウスが見えてきた。2010年にトマトの栽培を始めた「住化ファームおおいた」(同)だ。大西孝治取締役は「周辺の農業を活性化する展示場にしたい」と設立の意義を話す。

 広さ1万平方メートルの土地に4棟のビニールハウスがあり、住友化学グループが開発した隔離土耕栽培など最新式の栽培法を導入した。土壌病害のリスクを抑えられ、トマト栽培に最適な専用容器内の土で栽培する仕組み。トマトの中玉品種「カンパリ」を主に生産しており収量は1000平方メートル当たり約20トンと、一般的な大玉品種の収量に比べて約5割高い。

 点滴灌(かん)水や雨水の再利用システムなども採用。栽培管理を記録することで、より効率の高い栽培法の確立を進めており、大規模栽培を行う農業法人向けの展示場として活用されている。

 今後は個人農家が参考にしやすいよう安い資材を用いた栽培も始める。年間100件超の見学依頼があり一緒にやりたいという近隣農家とのネットワークを構築し、トマトビジネスの拡大につなげるのが目標だ。

 住友化学グループには収穫物の販売網構築を支援する事業もある。住化ファームおおいた産のトマトは「純果(すみか)育ち」というブランドで都心部の高級スーパーなどで販売中だ。協力農家に対しても栽培支援だけでなく、販売支援まで行える強みがある。 大西取締役は「地域雇用や新規就農者の育成にも役立ちたい」と話す。住化ファームおおいたではパート15人、豊後大野市内の農業大学校を卒業した2人の若者を採用した。集荷場では地元の女性たちがトマトを箱詰めし、20代の若者が資材を運んでいる。若者たちはトマト栽培技術を学んだ後、実家のトマト栽培を継ぐ予定だ。

 住友化学は住化ファームおおいたと同様の農業法人を国内計6カ所に持つ。長野市でイチゴ、山形県中山町と愛知県豊田市でトマト、愛媛県西条市でレタス、三重県志摩市でミツバを生産しており、将来は47都道府県すべてに農業法人を設立するのが目標だ。

 日本政府が環太平洋連携協定(TPP)への正式参加を決めた中、国内農業の改革が必須になった。住友化学が進める農業法人が地方農業の再生につながるか、今後も注視する必要がありそうだ。


【2013年8月6日 日刊工業新聞社】