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期待から確信へ・JR東の震災復興支援事業(上)観光キャンペーン

 JR東日本が東日本大震災で被災した地域の観光に力を入れている。4月にスタートしたJRグループの観光キャンペーン「デスティネーションキャンペーン」は、宮城県をクローズアップ。当初は被災地を観光地とすることに迷いもあったものの、「観光で復興」をテーマにしたこれまでのキャンペーンが成功。集客が復興につながるとの期待は確信に変わった。今後も観光資源の発掘と情報発信に努め、震災から2年が経過し経済的に苦境に立つ被災地を側面支援する。

 【沿岸部PR】

 デスティネーションキャンペーンは、JRグループが地元の地方自治体や観光事業者と連携して展開する。JR東日本は2011年4―7月に青森県、12年4―6月に岩手県の両被災県で実施。観光客を増やし復興を支援するとともに、運輸収入を中心に収益を上げることができた。

 4月からは「笑顔咲く旅、伊達な旅」をテーマに宮城県で同キャンペーンを開始。南三陸や女川、石巻など津波で大きな被害を受けた三陸沿岸部の被災地についても、観光地として魅力を再度アピールし、観光客の誘致を図る。

 もともと三陸沿岸部の地域は、高台から海を望む景勝地として名高かった。しかし、同じ宮城県でも松島などに比べると全国的な知名度は低くかった。南三陸町のホテル「南三陸ホテル観洋」では「震災前は宿泊客の7割が東北地方の人だった」という。震災によってメディアに取り上げられたことで知名度が高まり、九州など遠方から宿泊に訪れる人が増えてきた。同キャンペーンではこうした機会を通じ、被災地も観光資源の一つとしてPRしている。

 【6月は満席】

 JR東日本は仙台駅からバスで被災地をめぐる「復興応援ツアー」を企画した。ツアーでは被災者の「語り部ガイド」が震災時の状況を説明。気仙沼市魚市場や女川港周辺など津波の被害が大きかった地区を見学する。6月のツアー実施日はすでに満席。さらに実施日を増やそうと試みたが、語り部ガイドの手配が付かず断念した程だ。

 復興応援ツアーでは復興商店街に必ず訪れる。南三陸町の「南三陸さんさん商店街」では、鮮魚店や飲食店など約30のプレハブ店舗が軒を連ねている。津波で流された電器店など住民の生活を支える商店が入居するほか、水産加工品や地酒を売る土産物店も同居。南三陸を訪れる観光客に応対している。

 商店街にはバスを駐車できるスペースもあり、団体客なども受け入れられる。また、津波によって不通となった気仙沼線、大船渡線に代替輸送手段として導入したバス高速輸送システム「BRT」の志津川駅も隣接しており、集客に向けたアクセスも整えた。

 【復興を早める】

 JR東日本が地元の自治体とともに目指すのが観光客を呼び込み経済的に活性化させ、復興を早めることだ。青森や岩手で実施したキャンペーンによって「被災地を中心とする観光による復興が(期待から)確信に変わってきた」(冨田哲郎社長)と手応えを示す。

 被災地を観光地化することに「迷いもあった」(仙台支社の今田幸宏営業部長)という。しかし「多くの人に来てもらうことが、被災地の復興を早める」(ホテル観洋の阿部憲子女将)という地元の声に後押しされ、観光キャンペーンを推進することにした。宮城県のデスティネーションキャンペーンは6月末まで行われる。JR東日本では今後も被災県でのキャンペーンを展開していく方針だ。


【2013年5月27日 日刊工業新聞社】