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地域資源活用チャンネル

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地域産業の息吹/新地場産業編(下)

 【静岡・磐田/EV核に新産業を創出】
 静岡県磐田市では電気自動車(EV)を軸にした新産業の集積が進行中だ。同市は2011年10月にEV関連などの新産業創出を目指す「磐田新産業創出協議会」を設立。当初約20社だった同会の会員企業は現在、50社以上に増えている。

 同市に研究開発拠点を持つ会員企業のタジマモーターコーポレーション(東京都中野区)は、将来、国内で普及が見込まれている2人乗りの超小型EVを自社で開発し、製造販売にも乗り出す方針だ。田嶋伸博タジマモーターコーポレーション会長は「EVの主要部品は静岡県を中心に日本製を使いたい。自治体とも連携して事業化する」と意気込む。同協議会の会員企業には中小の輸送機器部品メーカーが多く、タジマモーターはこうした企業の部品も品質・コスト・納期で競争力が高ければ、EVに採用する予定だ。

 もともと磐田市はヤマハ発動機が本社を構え、NTNも研究開発・生産拠点を置く製造業の盛んな地域。輸送機器向けで磨かれた優れた技術や技能を持つ中小企業が多い。ただ取引先に恵まれている半面、新産業への取り組みが遅れていた。EVを核とした新産業の集積は、大手輸送機器メーカーの海外現地生産が進む中、部品メーカーにとって新たな仕事として期待される。

 磐田新産業創出協議会では定期的に勉強会などを開催し、会員企業の新産業への意識向上と交流促進を図っている。

【神戸/デザインで経済効果狙う】
 神戸市中央区に立つ、旧神戸生糸検査所。1927年と32年に施工された二つの建物で構成される歴史的建造物だが、現在は「デザイン」を核とするビジネス拠点として活用されている。2008年にユネスコからデザイン都市として認定された神戸市。「デザイン都市・神戸」の取り組みを進めるコア拠点として12年8月に始動したのが、デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO、神戸市中央区)だ。クリエーティブな企業や個人が入居する。オフィススペースは34室あり、4月中旬時点で30室が埋まっている。

 デザイン事務所、建築設計事務所、編集プロダクション、フラワーアレンジメントなど、その“顔ぶれ”は多士済々。入居企業からは「自由な雰囲気で働きやすい」といった声が聞かれ、入居者同士が交流する機会も設けている。

 デザインによる経済効果をもたらすことを目指し様々な活動を展開。芹沢高志センター長は「KIITOとして、まず幅広いテーマでイベントを開いて街全体をクリエーティブにし、デザイン性を大切にする風土を作りたい」と話す。将来はKIITO入居企業と地元モノづくり企業との連携を視野に入れる。歴史的な建築物から最先端のデザインビジネスを発信し始めている。

【佐賀・唐津/コスメ産業の集積化推進】
 佐賀県唐津市は化粧品の本場フランスにならったコスメ産業の集積化を進めている。豊富な農地を使った薬草などの原料栽培や未利用資源の活用、機能性食品の開発などを含めた6次産業化に取り組む。地元の唐津港を活用し、見据えるのは新興国市場だ。安心安全の日本製ブランドを武器に、アジアの化粧品生産拠点を目指す。

 まずは唐津市を中心に産学官組織「ジャパン・コスメティックセンター(JCC)」の2013年内設立に向けて動いている。既存の企業連携体に加えて、ネットワークを拡大する狙いだ。九州大学や佐賀大学、佐賀県など市内外の機関と連携体制を整備。フランスや米国の企業の参加も見込んでいる。

 集積化の手本はフランス中部の化粧品産業集積地域「コスメティックバレー」。唐津市は今年4月に連携協定を締結した。地域間交流の活発化から始めて、より実際的な協力関係へ進めていく構えだ。同地域は半径150キロメートル圏内に原料栽培や加工、製品化など関連産業が集積している。唐津市も市内に留まらず、県外など隣接地域も含めた広域モデルを念頭に置く。

 もともと産業集積化の構想は、化粧品の成分分析・輸入業を手掛けるブルーム(佐賀県唐津市)が民間レベルで進めていた。同社敷地内に松浦通運(同)と化粧品製造業のトレミー(東京都府中市)が立地。一貫した製造・輸出入体制を確立している。ここに地域からの産業振興の期待が加わり、構想が拡大したかたちだ。今後は各機関がそれぞれの強みを最大化しながら、企業の成長性を失わずに地域を振興できるかに期待がかかる。


【2013年4月30日 日刊工業新聞社】