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地域産業の息吹/新地場産業編(上)

 国内産業界の停滞が指摘されて久しい。業績の低迷に苦しむ大企業も多いが、それを支えてきた中小企業も苦境に立たされてきた。こうした中で、かつて日本各地にあった「地場産業」も疲弊し、産業の集積がなくなってしまった地域もある。一方で、発想を変え、智恵を出し、工夫を重ねることで成長性を維持してきた地域もある。外部の力を取り入れ、魅力を増した地場産業もある。さらに、新たな産業集積も芽生えている。苦境にも負けじと踏ん張る産業の息吹を、4回連載で追う。第1回は新たな産業集積や、復活を目指す産業の動向を探った「新地場産業」編。

【宮城・気仙沼/新たな漁船造船業で復活】
 宮城県気仙沼市は漁船造船業の集積地だった。ところが、東日本大震災で甚大なダメージを受け、気仙沼で船をつくる音は聞こえなくなっていた。そうした中、4月12日に、17社が集まり、「気仙沼造船団地協同組合」を設立した。震災前は海岸線に沿って、広範囲に立地していた造船所や鉄工所、電装業など関連企業が、用地を確保し、1カ所で受注、建造、メンテナンスを行う計画だ。震災からの復興を目指して、新しい漁船造船業を模索し続けてき努力が一つのかたちになった。

 サンマ漁に欠かせないサンマ棒受漁船。建造では特殊な艤装(ぎそう)が必要で、これを得意とする吉田造船鉄工所(宮城県気仙沼市)と、木戸浦造船(同)も新協同組合のメンバーだ。

 サンマのシーズン外はサケ・マス漁を行う兼業船と呼ばれる漁船の建造が難しく、切り替え時のメンテナンスも重要で、それだけに長年の経験がものを言う。このため造船所が操業すれば受注も見込めるという。新協同組合の木戸浦健歓代表理事(木戸浦造船専務)は「がれきの中から育ててきた夢だからこそ、これまでと全く違う造船業を生み出せるはずだ」と意気込む。

【福島・南相馬/ロボで危機打破】
 「大変な思いばかり言っていても仕方がない。地域の力を結集して、前向きに取り組んで行かないとダメだ」。南相馬ロボット産業協議会(福島県南相馬市)の佐藤則夫会長(協栄精機会長)は、設立趣旨をこう話す。

 東京電力福島第一原子力発電所の事故で、南相馬市は甚大な被害を受けた。地域の産業復興を目指す機械金属加工業など30社が中心となり、2011年12月21日に同協議会を設立した。ターゲットは災害対応と医療機器関連ロボットだ。

 震災後、操業休止に追い込まれたり、市外に生産拠点を移さざるを得ない企業が多くあった。いかにして地域の強みを軸に新しい産業を生み出すか。人口流出が止まらない中、街の将来のためにも産業復興は待ったなしの状況だった。

 行政や大学も新産業の立ち上げに一丸となった。桜井勝延市長も「新しい地場産業として応援したい。大切なのは熱意だ」と話す。東京大学大学院の佐藤知正教授も「世界から必要とされる技術開発につながるよう一緒にやっていきたい」と話す。ロボット産業はすそ野が広く、多くの企業を巻き込んだ“新地場産業”を興せる。

 課題は各社の保有する要素技術をいかにロボット産業に結びつけるかだ。事務局は「航空機や自動車などの部品を手がける会社も多く、技術水準は高い。災害対応、介護福祉・医療機器など新しい分野にしっかりとすり合わせたい」と前を向く。


【2013年4月30日 日刊工業新聞社】