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東北リポート/産業育成センター来月再開−釜石・大槌で中小支援

 東日本大震災で被災した岩手県釜石市の中小企業支援施設「釜石・大槌地域産業育成センター」が、4月の再開を目指し復旧工事を進めている。新施設には地域の大学の研究機関も入居。コバルト合金の加工や海産物の六次産業化をテーマに中小企業をバックアップする計画だ。新たに専務理事を釜石市から派遣するなど、人材面も強化しており、地元からは「地域経済活性化の起爆剤となってほしい」と期待が寄せられている。(鳥羽田継之)

 育成センターは釜石市内の湾岸部に立地しており、東日本大震災による津波で1階部分が被災。移転も検討されたが、内陸部に大規模な用地が無かったこともあり、現地で復旧を進めている。新施設には岩手大学、岩手県立大学、北里大学の研究機関が入居するほか、地域企業の交流スペースも設ける予定だ。

 人工関節などに使われるコバルト合金については、これまでに素材メーカーのエイワ(岩手県釜石市)を支援し、インゴッドでの商品化に成功している。今後は難削材であるコバルト合金の加工技術を、石村工業(同)や双葉精密(同)など地域のモノづくり企業と共同開発する方針だ。

 試験加工設備として5軸のマシニングセンタやワイヤ放電加工機、3次元測定装置などを導入。岩手大学や東北大学金属材料研究所がバックアップするほか、受発注支援では太田工業連合会や大阪ケイオス、北上ネットワークフォーラムなど県内外の企業団体が協力する。

 海産物の六次産業化については「海商工連携」というキーワードを掲げ事業化を目指す。三陸海岸の海産物を使い高付加価値な商品を開発。大手百貨店や通販会社の販路を活用し全国で販売する計画だ。地域漁業の活性化により、後継者不足の解消も狙う。すでに関連セミナーを先行開催。釜石市に大手販社を招き、現地メーカーとの意見交換を行っている。

 グループ補助金など各種支援施策により、釜石市の企業は震災の直接的な被害から脱しつつある。だが長く続いた円高による不況の余波もあり、地域経済は「工場設備は復興したが、仕事が無い」状態が続いている。

もともと釜石市は新日本製鉄の城下町として発展した経緯もあり、自社商品や独自技術を持つメーカーは少数派。水産加工メーカーも放射能の風評被害などがあり、ビジネス領域の拡大が必要となっている。

 釜石市は震災と津波で約1000人の尊い命を失った。地域経済の発展には住民の増加が不可欠だが、震災以降、市外移転者も増え続けている。住民増加には、住宅などのインフラだけでなく地域の雇用拡大が不可欠。いかにして中小企業を成長させ、雇用を生みだし地域経済を発展に導くか。育成センターに課せられた使命は重い。


【2013年3月5日 日刊工業新聞社】