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九州リポート/佐賀の窯元、新市場に狙い−有田焼に機能性プラス

 約400年の歴史を誇る有田焼に、機能性という新たな価値基準が加わろうとしている。中心産地の佐賀県有田では、産地売上高が1990年代のピークから5分の1に落ち込んでいる。これまで窯元や商社は食器の不振を食器以外の製品開発で取り戻す動きが盛んだった。だが安心安全志向や福祉分野のニーズ拡大で、最近は食器自体にさまざまな機能性を付加した戦略的製品による成長市場の開拓が目立ち始めた。(西部・三苫能徳)

 「ロングセラーからヒットセラーへ転換する」と意気込むのは、しん窯(佐賀県有田町)の梶原茂弘社長。だれでも使いやすい「ユニバーサルデザイン(UD)」製品で福祉市場を狙う。メーンは片手で使える「すくい易い食器」。UDの概念が一般的でない約40年前に、身障者が使いやすい製品として開発。年間数千個を販売しているが、高齢化で潜在市場が膨らんだ。そのため老人施設での採用に向けて、福祉関連商社へ営業を積極化している。

 大手窯元も福祉分野に参入した。高級磁器メーカーの深川製磁(同)は12年秋に、光触媒による抗菌効果で安全性を付加した食器を発売。うわぐすりに酸化チタンを混合したため、焼成後の塗布加工より効果の耐久度を向上した。ターゲットは高級老人ホーム。プラスチックより割れやすく価格は高いが、品質にこだわる施設に向けて自社のブランド力を生かす。「磁器としての当社品質を維持した」と菅俊裕専務は胸を張る。当初の年間販売目標は1億円だ。

 変わるライフスタイルに応じて製品開発したのは陶磁器製造販売卸の大慶(同)。「ほぼ全家庭にある電子レンジに狙いを定めた」と、森義久社長は話す。12年に電子レンジ対応の調理器兼食器「うつわび」を発売。単身者や少人数世帯など若い世代に向けた製品だ。煮る、焼くなどほとんどの調理が可能でご飯も炊ける。同時に図柄と形にこだわり、食卓を飾るという食器の機能を犠牲にしなかった。調理の簡便性と洗い物が減る経済性をアピール。13年度以降は海外市場も視野に入れる。

 有田焼の落ち込みは業務用食器の不振、安い海外製の流入などが大きな要因と分析されている。産地の維持には価格の維持が不可欠で、ブランド力が重要だ。だが価格の根拠に対する消費者の目は厳しくなり、既存のブランドだけでは根拠が弱くなった。

 その点で高い機能性を持てば価格がついてくる。ブランド価値の向上と同時に、有田焼を知らない層の購買動機にもなる。

 今後、あとに続く製品がどのくらい生まれてくるのか。ブランドと機能性の相乗効果が表れれば、ピーク超えもあるかもしれない。


【2013年2月5日 日刊工業新聞社】